「残高不足」の4文字が怖かった

「ピンポーン」

改札で引っかかった瞬間、頭が真っ白になる。

後ろに並ぶ人たちの視線。「早くしろよ」という無言の圧力。焦れば焦るほど、財布からうまく小銭が出せない。

これ、ASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持つ私にとって、かつての「日常の恐怖」でした。

結論から言います。オートチャージ設定にしてから、私の外出ストレスは激減しました。

「そんな当たり前のこと?」と思われるかもしれません。でも、計算が苦手で、急な状況変化でパニックになりやすい私たちにとって、この「当たり前」がどれほど救いになるか。

今日は、38歳・妻子持ち・発達障害当事者として、移動をラクにする具体的な設定方法と、その先にある「お金との付き合い方」までお話しします。

実は私、計算が大の苦手なのに、資産3,400万円(90%が株式)を築けています。「計算できない=お金の管理ができない」は、思い込みでしかなかったんです。


なぜ切符を買わないのか?ASD×SLDの「外出あるある」

私が切符売り場で固まっていた理由

27歳で診断を受ける前、私は駅の切符売り場が大嫌いでした。

理由はシンプル。計算ができないから。

SLD(限局性学習症)の中でも、私は算数障害(ディスカリキュリア)の傾向が強いんです。暗算ができない。料金表を見ても、「現在地から目的地まで○○円」を瞬時に把握できない。

さらにASD特有の困りごとも重なります。

私が切符売り場で経験していたこと:

  • 料金表の数字の羅列を見ると、情報過多でフリーズする
  • 後ろに人が並ぶと「早くしなきゃ」と焦ってさらに混乱
  • 急いで間違えた切符を買い、改札で止まる
  • 想定外の事態(残高不足)でパニック状態に
  • 駅員さんに話しかけるのも緊張して、声が出ない

「大人なのに切符も買えないのか」

何度、自分を責めたかわかりません。

交通系ICカードという「革命」

そんな私を救ったのが、Suica/PASMOでした。

最初は普通にチャージして使っていました。でも、残高確認を忘れて改札で止まることが何度かあり、そのたびに心臓がバクバク。

転機は、ある日ネットで見つけた「オートチャージ」という機能。

「残高が一定額を下回ると、自動でチャージされる」

この仕組みを知ったとき、「これだ!」と思いました。


オートチャージ設定の具体的方法と使い方のコツ

準備するもの

オートチャージを利用するには、以下が必要です。

必要なもの一覧:

必要なもの備考
Suica/PASMO記名式である必要あり
クレジットカードビューカード(Suica)またはPASMO対応カード
本人確認書類申込時に必要な場合あり

初心者向け解説:

  • Suica:JR東日本が発行する交通系ICカード
  • PASMO:私鉄・地下鉄系の交通系ICカード
  • オートチャージ:残高が設定額(例:2,000円)を下回ると、自動的に設定額(例:3,000円)がチャージされる機能

私の設定内容(実際の数値公開)

参考までに、私の設定を公開します。

りゅうぞうのオートチャージ設定:

  • 残高が2,000円以下になったら
  • 自動で3,000円チャージ

この設定にしている理由は明確です。

設定理由:

  1. 2,000円以下で発動:都内の電車移動なら、大抵500円以内。2,000円あれば余裕を持てる
  2. 3,000円チャージ:頻繁にチャージが発動しない。月の利用額を把握しやすい
  3. 上限設定:万が一紛失しても、被害を最小限に抑えられる

申込手順(Suicaの場合)

ビューカード公式サイトを参照した、最新の申込手順です(2025年時点)。

ステップ1:ビューカードを作る

  • JRE CARDまたはビックカメラSuicaカードが人気
  • 年会費:JRE CARDは524円(税込)、ビックカメラSuicaカードは実質無料(年1回利用で無料)

ステップ2:Suicaをリンクする

  • 駅のATM「VIEW ALTTE」で設定可能
  • またはJRE POINTサイトからオンライン設定

ステップ3:オートチャージ金額を設定

  • 残高条件:1,000円~10,000円(1,000円単位)
  • チャージ額:1,000円~10,000円(1,000円単位)

モバイルSuicaの場合: スマホアプリから簡単に設定できます。Apple Pay、Google Payにも対応しており、物理カードを持つ必要すらありません。

正直に話すデメリット

便利なオートチャージですが、デメリットもあります。

デメリット一覧:

  • 改札外ではオートチャージされない:コンビニ支払いで残高不足だと、その場でチャージが必要
  • 使いすぎに気づきにくい:自動だからこそ、月額を把握する工夫が必要
  • 対応エリア限定:首都圏以外ではオートチャージが発動しない場合あり
  • 紛失リスク:すぐに利用停止手続きをしないと不正利用される可能性

私の対策:

  • 月末にクレジットカード明細を確認する習慣をつける
  • スマホにSuica残高ウィジェットを表示させる
  • 紛失時の連絡先をスマホのメモに保存

計算が苦手な私が3,400万円を築けた理由

ここからは、少し違う話をさせてください。

「計算が苦手なのに、資産運用なんてできるの?」

よく聞かれます。答えは、**「できる。むしろ、計算しないからこそうまくいった」**です。

私がやっている「計算不要」の資産運用

私の資産内訳(2025年現在):

  • 総資産:約3,400万円
  • 株式:約90%(インデックスファンド中心)
  • 現金:約10%

計算が苦手な私が実践していること:

  1. 自動積立設定:毎月決まった金額が自動で投資される。考えない、計算しない
  2. インデックス投資:個別株の分析は無理。市場全体に投資する方法を選択
  3. ほったらかし:頻繁に売買しない。見ない。これが一番のコツ
  4. 家計簿はアプリ任せ:マネーフォワードが自動で集計してくれる

「計算できない」が強みになる逆説

面白いことに、計算ができないことが、投資においてはプラスに働きました。

なぜなら:

  • 複雑な計算ができないから、シンプルな投資法しか選べない→結果的に王道の方法になる
  • 株価を毎日チェックする気力がないから、短期売買しない→長期投資が自然と実践できる
  • 「儲かった!」「損した!」の計算が面倒だから、感情的な売買をしない

中級者向けコラム|発達障害と投資の相性

実は、発達障害特性と長期投資は相性が良いという研究があります。ASDの「ルーティンを好む」「一度決めたことを変えにくい」という特性は、積立投資の継続に向いています。

一方で注意点も。

ASD×投資の注意点:

  • 特定の銘柄に「過集中」して、分散投資ができなくなるリスク
  • 「損切りすべき」という状況でも、変化を嫌って動けない可能性
  • ルールに固執しすぎて、市場環境の変化に対応できない場合

私の場合、投資信託(インデックスファンド)を選ぶことで、これらのリスクを回避しています。自分で銘柄選択しなくていい、売買タイミングを考えなくていい。「何も考えない」を仕組みで実現するのがポイントです。


「できない自分」を受け入れてから見えた景色

27歳での診断、そして「再スタート」

27歳で診断を受けたとき、私は不思議と安心しました。

「努力が足りないわけじゃなかった」 「ダメな人間だから失敗していたわけじゃなかった」

それまでの20数年間、私は「なぜできないのか」がわからないまま、自分を責め続けていました。計算ができないのは怠けているから。空気が読めないのは性格が悪いから。そう思い込んでいました。

診断は、私に「言い訳」ではなく「説明」を与えてくれました。

周囲への伝え方

障害をどう周囲に伝えるか。これは多くの当事者が悩むポイントです。

私が実践している伝え方:

職場の場合:

  • 上司には診断名を伝えた
  • 同僚には「暗算が苦手なので、計算が必要な業務はメモを取らせてください」と具体的な配慮をお願い
  • 診断名を言うより、「具体的に何が苦手か」「どうすればできるか」を伝える方が効果的

家族の場合:

  • 妻には診断前から「自分はどこかおかしい」と話していた
  • 診断後、具体的な特性を共有。「急な予定変更はパニックになるから、前日までに教えて」など
  • 子どもにも、年齢に応じて少しずつ説明中

初対面の場合:

  • 基本的には伝えない
  • 必要な場面(改札で困ったときなど)では「少しパニックになりやすくて」と伝える程度

ASDの「人の裏を読めない」をどう乗り越えたか

ASDの私は、暗黙の了解を読み取るのが本当に苦手です。

私が困った具体例:

  • 「検討します」=「断ります」だと気づかない
  • 社交辞令の「今度ご飯行きましょう」を本気にして、日程調整を始める
  • 会議で「何か意見ある?」と聞かれて本当に意見を言い、場が凍る

私が見つけた対処法:

  1. 「それは社交辞令ですか?」と聞く:最初は勇気がいったが、聞いてみると意外と教えてくれる
  2. 信頼できる「通訳者」を持つ:妻や親しい同僚に「さっきの発言、どういう意味だった?」と確認
  3. パターンを学習する:「この表現はこういう意味」とメモして、データベース化する
  4. わからないことを恥じない:わからないのは当たり前。それより「わかろうとする姿勢」が大事

まとめ|「仕組み」に頼ることは、賢い選択

最後に、今日のポイントをまとめます。

この記事の要点:

  • オートチャージで改札の恐怖から解放される:残高を気にしなくていい仕組みを作る
  • 計算が苦手でも資産形成はできる:自動積立、インデックス投資など「計算不要」の方法を選ぶ
  • 「できない」を受け入れることで、「できる方法」が見つかる:自分を責めるより、仕組みで解決
  • 周囲への伝え方は「具体的な配慮」をセットで:診断名より、「私はこれが苦手で、こうしてもらえると助かる」が伝わりやすい