さらば、ゴムのズボン!「ボタンとファスナー」という朝の魔物を倒す、魔法のアイテムとリメイク術【アダプティブファッション最前線】

こんにちは、管理人の[りゅうぞう]です。
私は現在、自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)という2つの特性と生きています。文字を書くのも、計算するのも、そして正直に言うと「小さなボタンを留める」のも、昔から苦手でした。27歳で診断を受けるまで、「なぜみんなが当たり前にできることが、自分にはこんなに難しいんだろう」と自分を責め続けていました。
でも、今は違います。 私がこのブログで叫び続けたいこと。それは、「テクノロジーや道具は、現代における『魔法の杖』であり、私たちの『車椅子』である」ということです。
足が不自由な方が電動車椅子を使って街へ出るように、指先の細かい動きが苦手な私たちは、便利な「ガジェット」や「アイデア」という武器を使うことで、諦めていたおしゃれを取り戻すことができます。
今日のテーマは、多くの当事者が毎朝直面している「ボタンとファスナー、朝の最大の試練」問題です。
おしゃれなシャツを着たいのに、小さなボタンに阻まれる。 背中のファスナーが上がらなくて、結局ゴムのズボンを選んでしまう。 そして、鏡に映る「いつもと同じ楽な服」を着た自分を見て、少しだけ心がしぼむ……。
そんな経験、ありませんか? 今日は、その悩みを「道具」と「知恵」でハックする方法をお伝えします。
障害者総合支援法と「おしゃれをする権利」
いきなり法律の話? と思うかもしれませんが、少しだけ聞いてください。 私たち障害者の生活を支える「障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)」という法律があります。
初心者向けに解説すると、これは「障害がある人が、個人の尊厳を保持しつつ、能力や適性に応じた生活を営めるように支援する」ための法律です。この中には「日常生活用具給付等事業」という制度があり、特殊な寝台や入浴補助用具などは公費で補助されることがあります。
しかし、私がここで強調したいのは、この法律の根底にある「社会参加」というキーワードです。
服を自分で選んで着ることは、単なる作業ではありません。それは「自分らしさを表現する」という、立派な社会参加の第一歩です。行政の支給対象にはなりにくい「ボタンエイド」のような小物ですが、これらを活用して自立した生活を送ることは、法律が目指す「共生社会」の理念そのものなのです。
【マニアックコラム】アダプティブ・ファッションの夜明け
近年、「アダプティブ・ファッション(Adaptive Fashion)」という言葉が世界的なトレンドになっています。これは、「適応する」という意味で、障害のある人や高齢者が着脱しやすいように設計された服のことです。
かつては「介護服」と呼ばれ、機能性一点張りでデザインは二の次でした。しかし現在は、トミー・ヒルフィガーのようなハイブランドから、ユニクロのような身近なブランドまでが参入しています。 「障害があるから着られる服を着る」のではなく、「着たい服が、たまたま着やすい機能を持っていた」という時代へ。これが最新のトレンドです。
2. 【体験談】不器用な私の「指先」戦争
私(りゅうぞう)の話を少しさせてください。 ASDの特性を持つ人の中には、私のように「発達性協調運動症(DCD)」の傾向を併せ持つ人が少なくありません。簡単に言うと、極度の不器用です。
子供の頃、体育の授業と同じくらい嫌いだったのが「着替え」でした。 特に冬場の制服のワイシャツ。かじかんだ指で、あの小さなプラスチックの円盤(ボタン)を穴に通す作業は、もはや拷問。焦れば焦るほど指は滑り、友人はとっくに着替え終わっている。 大人になってからも、試着室でボタンが留められず、店員さんに「サイズが合いませんでした」と嘘をついて服を戻したことが何度もあります。
「自分はだらしない」と思っていました。 でも、違ったんです。「道具」を使っていなかっただけなんです。
3. 具体的な解決策:朝のストレスをゼロにする「3種の神器」
では、具体的にどうすればいいのか。私が実際に試したり、国内外の事例から見つけた「これは使える!」というアイテムを紹介します。
① ボタンエイド(Button Hook)
これは「ボタン通し」と呼ばれる道具です。
- 仕組み: グリップの先に針金のようなループがついています。これをボタン穴に通し、ボタンを引っ掛けて引き抜くだけ。
- メリット: 片手しか使えない方、指に力が入らない方でも、驚くほど簡単にボタンが留められます。
- 価格: Amazonなどで1,000円〜2,000円程度で購入可能。
- 使用例: ワイシャツの第一ボタンや、袖口のボタンなど、一番イライラする箇所に最適です。100円ショップの自作コーナーにある針金と太めのグリップでDIYする強者もいます。
② ファスナーフック・ジッパープル
ファスナーの持ち手(引き手)が小さすぎて掴めない問題。これを解決します。
- リング型: キーホルダーのリングや、専用の大きなリングを引き手につけるだけで、指を引っ掛けて上げ下げできるようになります。
- スティック型: 「ドレッシングエイド」とも呼ばれ、棒の先にフックがついています。背中のファスナーなど、手が届かない場所に使います。
- 裏技: アウトドア用品店で売っている「ジッパータブ」は、デザインもおしゃれで掴みやすく、数百円で買えるのでおすすめです。
③ 【最強】マグネット式へのリメイクと最新ウェア
これが今回の目玉情報です。「ボタンを留める」のではなく「くっつける」発想への転換です。
【海外の事例:マグナレディ(MagnaReady)の衝撃】 アメリカで生まれた「MagnaReady」という技術をご存知でしょうか? 創業者のモーラ・ホートンさんの夫は、若くしてパーキンソン病を患い、ある日ロッカールームでシャツのボタンが留められず、帰宅して悔し涙を流しました。それを見た彼女は、ボタンの裏に強力な磁石を埋め込んだシャツを開発しました。 見た目は普通のボタンシャツ。でも、近づけるだけで「カチッ」と留まる。 現在、この技術は多くのアパレルブランドにライセンス提供されています。価格はシャツ1枚あたり60ドル〜80ドル(現在のレートで約9,000円〜12,000円)程度ですが、その価値は計り知れません。
【日本の事例:ユニクロとCo-Creation】 公式サイトもチェックしましたが、日本のユニクロも動いています。「Studio Co-Creation」というプロジェクトで、前開きインナーなど、当事者の声を取り入れた商品を開発・販売しています。最近では、オンライン限定で「前あき」の商品ラインナップが増えており、マジックテープ(面ファスナー)式の商品も手に入りやすくなっています。
4. 今日からできる「リメイク術」
「高い専用の服は買えない…」という方へ。今ある服を改造する方法があります。
- 「マジックボタン」への付け替え: 手芸用品店で売っている「縫い付け式マグネット」や「スナップボタン」を使います。
- 飾りボタン化: 元のボタンは糸で縫い付けて飾りにしてしまい、その裏にマジックテープやマグネットを仕込みます。これで見た目は普通のシャツ、機能はユニバーサルデザインになります。
- お直し屋さんに頼む: 最近は「お直し」専門店でも、介護や障害への理解が進んでいます。「ボタンをマグネットに変えたい」と相談すると、プロの技で対応してくれるお店が増えています。
5. まとめ:服が変われば、心が変わる
今回のポイントをリストにまとめました。
- 自分を責めない: ボタンが留められないのは、あなたのせいではなく「服のインターフェース」が古いだけ。
- 道具を使う: ボタンエイドやジッパープルは、恥ずかしいものではなく賢い選択。
- マグネットを活用: 最新のアダプティブファッションやリメイクで、ボタン自体を過去のものにする。
- 情報のアップデート: ユニクロなどの身近なブランドも、バリアフリー対応を進めている。
最後に。 私がマグネット式のシャツを初めて着た時、感動したのは「楽だ」ということ以上に、「誰の手も借りずに、着たい服を着て外に出られた」という自尊心でした。
障害者総合支援法が目指す「自立」とは、何でも一人でやることではありません。適切な支援や道具を使って、自分の人生をコントロールすることです。
もし、あなたが今、ゴムのズボンを見てため息をついているなら、ぜひ今回紹介した「魔法の杖」を試してみてください。 ファスナーを上げるその手は、あなたの人生の可能性を引き上げる手でもあります。
管理人のりゅうぞうでした。








