さて、今回のテーマは「書字障害(SLD)とAI」です。

「ブログなんて書けるわけがない」 「役所への問い合わせメール一本送るのに、3時間かかってヘトヘトになる」

そんなふうに諦めていた私が、どうやって今、こうして文章を皆さんにお届けできているのか。 私の頼れる専属秘書、「ChatGPT」との付き合い方をお話しします。

「文字が書けない」という孤独と焦り

私たちSLD(限局性学習症)の当事者にとって、「文字を書く」という行為は、健常者の方が想像する何倍ものエネルギーを消費する作業です。

私の場合、頭の中には言いたいことがたくさんあるんです。感情も、アイデアも、伝えたい言葉も溢れている。 でも、それを「文字」という形に変換しようとした瞬間、脳の回路がショートしてしまいます。

  • 漢字が思い出せない(簡単な字ですら、ゲシュタルト崩壊する)
  • 「てにをは」がうまく繋がらない
  • キーボードを打っている間に、最初に何を言いたかったか忘れてしまう
  • 手書きなんて、ミミズが這ったようで自分でも読めない

学校の連絡帳、役所への申請書類、友人へのLINEの返信……。 社会生活のあらゆる場面で「文字」は必須です。そのたびに冷や汗をかき、何度も書き直し、結局「もういいや」と送信ボタンを押せずに諦めてしまう。

言葉を奪われるということは、社会との繋がりを絶たれることと同じくらい、辛く、孤独なことでした。

でも、時代は変わりました。 私たちが無理をして「書く努力」をしなくても、「話せば書いてくれる」時代が来たのです。

私の専属秘書「ChatGPT」と「音声入力」の最強コンビ

私が現在、ブログ執筆やメール作成で使っているのは、「スマホの音声入力」「ChatGPT」の組み合わせです。

これこそが、私の生活を一変させた「魔法の杖」です。

仕組みはとてもシンプル。

  1. スマホに向かって、独り言のように喋る(音声入力)
  2. そのぐちゃぐちゃな文章を、ChatGPTに「整えて」とお願いする
  3. 完成!

たったこれだけです。 キーボードを叩く必要も、漢字を思い出す必要も、正しい文法を気にする必要もありません。

では、実際に私がどのようにやっているのか、具体的な手順をお見せしますね。

【実践編】あえて「ぐちゃぐちゃ」に喋るのがコツ

多くの人が「音声入力」で挫折するのは、「最初から綺麗な文章を喋ろうとするから」です。 でも、私たちはそれが苦手なんですよね。だから、あえて汚く、思いつくままに喋ります。

例えば、役所に「障害福祉サービスの受給者証がまだ届かないんですけど、どうなってますか?」と問い合わせたいメールを送るとしましょう。

手順① スマホの音声入力で喋る

iPhoneならマイクボタンを押して、AndroidならGoogle音声入力を使って、思いつくままに吹き込みます。 「えーと」「あのー」が入ってもOK。言い淀んでも、噛んでも気にしません。

【私の実際の音声入力データ(原文ママ)】

「あーもしもし、えーと、あのりゅうぞうですけど、えっと、先月申請したあの受給者証?障害のやつ、あのー、まだ届かなくて、えっと、もう2週間くらい経つんですけど、どうなってるかなと思ってメールしました。えーと、いつ頃届くか知りたいです。よろしく」

これでは、さすがに役所には送れませんよね(笑)。 ここからが、AI秘書の出番です。

手順② ChatGPTに「清書」を依頼する

このぐちゃぐちゃなテキストをコピーして、ChatGPTのアプリに貼り付けます。 そして、以下のような「指示(プロンプト)」を加えます。

【ChatGPTへの指示】

以下の文章は、役所への問い合わせメールのドラフトです。 音声入力で適当に喋ったものなので、失礼のない丁寧なビジネスメールの形式に書き直してください。


(ここにさっきの音声入力テキストを貼り付け)

手順③ 魔法のような「完成形」を受け取る

すると、ChatGPTはほんの数秒で、以下のような文章を返してくれます。

【ChatGPTが作成したメール】

件名:障害福祉サービス受給者証の送付状況についてのお問い合わせ

〇〇市役所 障害福祉課 ご担当者様

お世話になっております。 先月、障害福祉サービスの申請を行いました、[りゅうぞう]と申します。

申請から2週間ほど経過いたしましたが、受給者証がまだ手元に届いておりません。 つきましては、現在の処理状況と、おおよその発送予定時期について教えていただけますでしょうか。

お忙しいところ恐縮ですが、ご確認のほどよろしくお願いいたします。


氏名:[りゅうぞう] 住所:[あなたの住所] 電話番号:[あなたの電話番号]

どうでしょうか? 私がやったのは、「スマホに向かって悩み事をブツブツ呟いただけ」です。 それなのに、こんなに立派な「大人のメール」が出来上がりました。

これを見た時、私は感動で少し泣きそうになりました。 「あぁ、これでやっと、自分の言葉を社会に届けられる」と。

ブログだって、この方法で書ける

実は、この記事も基本的にはこの方法で書いています。

  1. 書きたいテーマを決める(今回は「SLDとAI活用」)。
  2. 「導入部分は、自分の辛かった経験を話したい。文字が書けなくて孤独だったこととか」とスマホに話しかける。
  3. ChatGPTに「これをブログの導入文として、共感を得られるようにリライトして」と頼む。
  4. 出てきた文章を読んで、自分の言葉と違うところを少し直す。

以前なら、3,000文字の記事を書くのに1週間はかかっていたでしょう。途中で嫌になってやめていたかもしれません。 でも今では、「喋る」ことがそのまま「執筆」になるので、驚くほどスムーズに記事が出来上がります。

私たちが苦手なのは「書くこと」であって、「考えること」や「感じること」ではありません。 AIは、その「出力のパイプ」の詰まりを取り除いてくれる存在なんです。

心理的ハードルを下げるためのコツ

「AIなんて難しそう」「プロンプト(指示文)なんて書けない」 そう思う方もいるかもしれません。

でも、難しく考える必要はありません。ChatGPTを「超優秀だけど、ちょっと察しの悪い新人秘書」だと思ってみてください。

  • 丁寧に話さなくていいです。 箇条書きでも、単語の羅列でも伝わります。
  • 何度でもやり直せます。 「ちょっと堅苦しすぎる! もっと親しみを込めて」と言えば、すぐに書き直してくれます。
  • 誤字脱字があっても理解してくれます。 私たちの苦手な誤字も、文脈から推測して正しく補正してくれます。

私がよく使う「魔法の指示文」をいくつか置いておきますね。コピペして使ってみてください。

【場面別:魔法の指示文リスト】

  • 学校や先生へ: 「以下の内容を、先生への連絡帳に書くような、丁寧で柔らかい表現に直してください。」
  • 怒っている時(クレーム): 「以下の内容は感情的になっています。事実はそのままに、感情的な言葉を取り除いて、冷静で論理的な文章にしてください。」
  • ブログやSNS: 「以下の文章を、読みやすく、親しみやすいブログ記事の口調にリライトしてください。」

「書けない」を「書かない」という選択へ

私たちは長い間、「みんなと同じように手で書くこと」「正しくタイピングすること」を求められ、それができない自分を責めてきました。

でも、もうその土俵で戦わなくていいんです。 「書けない」なら、「書かせればいい」。

眼鏡をかけて視力を補うように、車椅子で移動を補うように、AIを使って「書字」を補う。それはズルでも手抜きでもなく、立派な「合理的配慮」のセルフプロデュースです。

私がこの方法で一番救われたのは、時間短縮になったことではありません。 「自分にも発信できる」「自分の意思を正しく伝えられる」という自信を取り戻せたことです。

もし、この記事を読んでいるあなたが、あるいはあなたのお子さんが、「書くこと」の壁の前で立ち尽くしているなら。 ぜひ一度、スマホのマイクに向かって、今の気持ちを吐き出してみてください。そして、それをAIに投げてみてください。

画面に現れる「整った文章」を見た時、きっと肩の荷が少し降りるはずです。

「なんだ、これでいいんだ」って。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。 あなたの「言葉」が、誰かに届くきっかけになれば幸いです。

管理人:りゅうぞう