導入:計量スプーンを見るたびに、心が折れていた

「大さじ1と2分の1って、どうやって量るの?」

これ、私が20代の頃、本気で悩んでいた疑問です。

レシピ本を開くたびに並ぶ「大さじ」「小さじ」「200ml」「150g」という数字の羅列。それを見た瞬間、私の脳はフリーズします。限局性学習症(SLD)を持つ私にとって、計量という行為そのものが、巨大な壁でした。

「料理なんて、数字が読めれば誰でもできる」

そう思っている人には想像もつかないかもしれません。でも私にとって、計量スプーンは「自分にはできない」を突きつけてくる道具でしかなかったのです。


でも、結論から言います。

今の私は、計量スプーンを一切使わずに料理をしています。そして、妻にも子供にも「おいしい」と言ってもらえる食卓を作れるようになりました。

この記事では、計算が苦手な私が見つけた「数字を使わないキッチン革命」の全貌をお伝えします。同じように料理で苦しんでいる方、そしてそんな当事者を支えたいと思っているリハビリ職の方へ。「できない」は「やり方を変える」で乗り越えられる——その証明になれたら嬉しいです。


私の「計量地獄」体験談——失敗の連続が教えてくれたこと

暗算ができない、目盛りが読めない

私のSLDの特性として、暗算がほぼ不可能という点があります。

「3分の2カップ」と書かれていても、それが何mlなのかわからない。目盛りを見ても、どの線を読めばいいのか混乱する。さらに言えば、「大さじ1杯」と「小さじ3杯」が同じ量だという基本的な換算も、いまだに覚えられません。

27歳で診断を受けるまで、私はこの苦しみを「努力不足」だと思い込んでいました。

料理の失敗エピソード:塩辛すぎて食べられなかった豚汁

ある日、妻にサプライズで豚汁を作ろうとしました。レシピには「味噌 大さじ3」と書いてあったのですが、私は計量スプーンの「大さじ」と「小さじ」を間違えて使っていました。

結果、信じられないくらい塩辛い豚汁が完成。

「これ、味噌汁っていうより海水じゃない?」という妻の一言に、私は笑うしかありませんでした。でも内心では、「やっぱり俺には料理なんてできないんだ」と深く傷ついていたのです。

「できない自分」を責め続けた日々

料理だけではありません。買い物での割引計算、時間の見積もり、子供の算数の宿題——数字が絡むすべての場面で、私は自分を責めてきました

でも、診断を受けて気づいたのです。これは「できない」のではなく、「やり方が合っていなかった」だけなのだと。


計量スプーンを捨てた日——私のマイルールとおすすめアイテム

マイルール①:「目分量+味見」で全部解決

私が最初に試したのは、計量を完全にやめるというシンプルな方法でした。

具体的には:

  • 調味料は「ひと回し」「ふた回し」で覚える
  • 味見を最低3回はする(薄ければ足す、濃ければ水を足す)
  • レシピは「だいたいの流れ」だけ参考にする

最初は失敗もありましたが、自分の舌を信じることで、徐々に「ちょうどいい味」がわかるようになりました。

マイルール②:「同じ料理を繰り返す」

毎回違うメニューに挑戦すると、そのたびに新しい計量問題に直面します。だから私は、得意料理を5つだけ決めて、ひたすら繰り返すことにしました。

  • カレー(ルーを使えば失敗しない)
  • 野菜炒め(味付けは焼肉のひとタレ)
  • 豚汁(味噌は「見た目で判断」)
  • パスタ(麺は茹で時間をタイマーで管理)
  • 卵焼き(砂糖は「ひとつまみ」)

この5つをローテーションするだけで、家族からの「おいしい」をもらえる確率が格段に上がりました


おすすめアイテム①:プッシュ式調味料ボトル

ここからは、私が実際に使っている「計量不要」のアイテムを紹介します。

【プッシュ式オイルボトル】

  • 1プッシュで約5ml(小さじ1杯相当)が出る設計
  • 油や醤油、酢などを入れ替えて使用可能
  • 価格帯:約500円〜1,500円

私が使っているのは、Amazonで購入した「OXO(オクソー)」のオイルディスペンサーです。押すだけで一定量が出るので、計量スプーンを使う必要がありません

【使い方のコツ】

  • 最初に「何プッシュでどんな味になるか」を味見で確認
  • 慣れてきたら「2プッシュ=自分好みの味」のように体で覚える

【デメリット】

  • 粘度の高い調味料(ケチャップ、マヨネーズなど)は詰まりやすい
  • 定期的な洗浄が必要

おすすめアイテム②:計量いらずの「ワンプッシュ調味料」

最近のトレンドとして、最初から「ワンプッシュで1回分」になっている調味料が増えています。

具体例:

商品名特徴価格(税込)
キッコーマン「いつでも新鮮 しぼりたて生しょうゆ」プッシュで少量ずつ出る、酸化しにくい約300円
味の素「CookDo」シリーズ合わせ調味料で計量不要約150円〜250円
S&B「まぜるだけのスパゲッティソース」麺と混ぜるだけで完成約150円

これらを活用すれば、そもそも計量という工程自体が消滅します。


おすすめアイテム③:スマートスピーカーで「音声タイマー」

計量だけでなく、時間の管理も私には難題でした。「3分茹でる」と言われても、3分がどれくらいか感覚でわからないのです。

そこで導入したのが、Amazon Echo(アレクサ)やGoogle Homeなどのスマートスピーカー

「アレクサ、3分タイマー」と言うだけで、手を使わずにタイマーがセットできます。これが地味に革命的でした。


【中級者向けコラム】リハビリ職の方へ:SLDを持つ方への料理支援のヒント

ここからは、リハビリ職や支援者の方に向けた、少し専門的な内容をお伝えします。

SLDにおける「計量困難」の背景

限局性学習症(SLD)のうち、算数障害(ディスカリキュリア)を持つ方は、以下のような困難を抱えることがあります。

  • 数量の直感的把握が難しい(「大さじ1」がどれくらいの量かイメージできない)
  • 単位換算ができない(mlとccが同じだとわからない)
  • 目盛りの読み取りが困難(視覚的な情報処理の問題)

これらは「やる気がない」「覚えようとしない」のではなく、脳の情報処理の仕方が異なるために起こる困難です。

支援のポイント

  1. 計量を「回避」する環境調整を提案する
    • 計量が必要なレシピではなく、「目分量OK」のレシピを一緒に探す
    • プッシュ式ボトルや計量済み調味料の導入を勧める
  2. 「体で覚える」練習を取り入れる
    • 「大さじ1杯の醤油を手に出してみる」など、感覚で量を覚える訓練
  3. 成功体験を積み重ねる
    • 最初は「失敗しようがない」簡単なメニューから始める
    • 「おいしくできた」という体験が自己効力感につながる

まとめ:あなたは一人じゃない

この記事でお伝えしたかったことをまとめます。

今日からできること

  • 計量スプーンを使うのをやめてみる(目分量+味見で調整)
  • プッシュ式調味料ボトルを導入する(計量作業を自動化)
  • 計量済みの調味料や合わせ調味料を活用する(そもそも計量しない)
  • 得意料理を5つ決めて、繰り返す(成功体験を積む)
  • スマートスピーカーで音声タイマーを使う(時間管理もラクに)

「できない」は終わりじゃない

私が計量スプーンを「捨てた」のは、料理を諦めるためではありませんでした。料理を続けるためです。

「普通のやり方」が合わないなら、自分に合うやり方を見つければいい。それは逃げでも甘えでもなく、自分を大切にするための選択です。


同じように「数字」に苦しんでいるあなたへ。

あなたは一人じゃありません。

計算ができなくても、おいしい料理は作れます。計量スプーンが読めなくても、家族を笑顔にする食卓は作れます。

このブログが、あなたにとっての小さな「攻略本」になれたら、これ以上嬉しいことはありません。


今日も、あなたの一日が少しでも楽になりますように。

りゅうぞう