はじめに:暗闇の中で手探りをしていた20代の私へ

こんにちは、管理人のりゅうぞうです。

今日は、少しだけ私の話をさせてください。 私は現在、自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)という2つの障がいを持って生活しています。

私が自分の障がいに気づいたのは、27歳の時のことでした。 それまでの20数年間は、まさに「暗闇の中で手探りをしている」ような感覚でした。周りの人と同じように努力しているはずなのに、なぜかうまくいかない。「自分はダメな人間なんだろうか」「努力が足りないだけなのか」と、自分を責め続ける日々を送っていました。

特に私を苦しめたのが、「計算」や「文字を書くこと」、そして「複雑な手順を覚えること」への苦手意識です。 仕事でPCを使う時も、ショートカットキーが覚えられなかったり、マルチタスクでパニックになったり……。「みんなが当たり前にできることが、なぜ自分にはできないんだろう」という劣等感は、私の心を深く傷つけていました。

27歳で診断名がついた時、正直なところショックよりも、「やっと理由がわかった」という安堵感の方が大きかったことを覚えています。それは、私が「私として生きていく」ための再スタートの瞬間でもありました。

障がいがあるからといって、全てができないわけではありません。でも、苦手なことは確実にあります。 だからこそ、私は「道具(ガジェット)」の力を借りることにしました。

今日は、そんな不器用な私のPCライフを劇的に変えてくれた、魔法のようなデバイス『Stream Deck(ストリームデック)』をご紹介します。もしあなたが、PC操作に苦手意識を持っていたり、日々の作業で消耗しているなら、この記事が少しでも「心を軽くするヒント」になれば嬉しいです。


なぜ、発達障がい・学習障がいの私に「左手デバイス」が必要だったのか

「PC操作なんて、慣れれば誰でもできる」 そう言われることもあります。でも、私たちのような特性を持つ人間にとって、その「慣れ」のハードルは想像以上に高いものです。

私のSLD(限局性学習症)の特性の一つに、記号や手順の暗記が苦手という点があります。 例えば、コピー&ペーストの「Ctrl + C / Ctrl + V」。 頭ではわかっていても、焦っていると指が止まってしまったり、キーの位置関係がゲシュタルト崩壊を起こしてしまったりすることがあります。

また、ASD(自閉スペクトラム症)の特性として、一度集中すると深い集中力を発揮できる反面、「タスクの切り替え」が非常に苦手です。 ブログを書こうとしてブラウザを開いたのに、うっかりニュースサイトを見てしまい、そのまま数時間……なんてことも日常茶飯事でした。

  • ショートカットキーが覚えられない(ワーキングメモリの負担)
  • やりたい作業にたどり着くまでの手順が多くて挫折する(実行機能の弱さ)
  • 視覚的にわかりやすくないと混乱する

これらを解決してくれるのが、キーボードの横に置く「左手デバイス」、その中でも最強のツールと呼ばれる『Stream Deck』でした。


Stream Deckとは?:あなたのデスクに「コックピット」を作る

一言で言うと、Stream Deckは「好きな機能を割り当てられる、液晶ボタン付きの箱」です。

通常、PC作業はキーボードとマウスで行いますが、Stream Deckには物理的なボタンが並んでおり、それぞれのボタンに「アプリの起動」「特定のキー入力」「定型文の貼り付け」などを登録できます。

ここまでは普通の左手デバイスと同じですが、Stream Deckの最大の特徴は、「ボタン自体が液晶画面になっている」こと。 つまり、ボタンの絵柄(アイコン)を自由に変えられるのです。

これが、視覚優位の特性を持つ私には革命的でした。 「Ctrl+Shift+S」という呪文のようなキー操作を覚える必要はありません。ボタンに表示された「保存マーク」を押すだけ。 たったこれだけのことですが、脳にかかる負担(コグニティブ・ロード)が劇的に減るのです。


私の実践例1:複雑な「投資モード」をワンボタンで起動

私は現在、妻と共に将来のために資産運用を行っています。 資産の9割を株式資産で運用しているため、毎日のチャートチェックは欠かせません。

しかし、以前の私はこうでした。

  1. ブラウザを立ち上げる
  2. お気に入から証券会社のサイトを開く
  3. ログインIDとパスワードを入力する(パスワード管理ソフトを探す手間…)
  4. 別タブでTradingView(チャートツール)を開く
  5. エクセルで管理表を開く

この工程のどこかで、必ずと言っていいほど「別のこと」に気が散ってしまったり、パスワードを間違えてイライラしたりしていました。

Stream Deckを導入してからは、これが「ボタン一発」になりました。

私が「投資モード」と名付けたボタンをポチッと押すと:

  • TradingViewが起動し、監視中のチャートが表示される
  • 証券会社のログイン画面が開き、自動でログイン
  • 資産管理用のExcelファイルが横に開く

これらがすべて自動で行われます。 まるでロボットアニメのパイロットが発進ボタンを押すような感覚。 「さあ、やるぞ」と気合を入れる必要すらなく、物理ボタンを押すという行為がスイッチになり、脳が自然と「投資モード」に切り替わるのです。


私の実践例2:ブログ執筆のハードルを下げる工夫

このブログを書く時も、Stream Deckは欠かせません。

文章を書くのが苦手な私にとって、WordPressの管理画面にログインし、新規投稿画面を開くまでの数クリックですら、大きな心理的ハードルになります。「面倒だな」という気持ちが湧く前に、作業を始めなければなりません。

そこで、Stream Deckに「WordPress」のロゴアイコンを表示させました。 それを押せば、一瞬で執筆画面が開きます。

さらに、ブログでよく使うHTMLタグや、定型文の挨拶(「こんにちは、りゅうぞうです」など)もボタンに登録しています。 文字入力やタイピングにコンプレックスがある私にとって、「ボタンを押せば、間違えずに正しい文字列が出る」という安心感は、何物にも代えがたいものです。


視覚的な楽しさが、「できない」自分を励ましてくれる

機能面での便利さはもちろんですが、私が強調したいのは「視覚的な楽しさ」がもたらすメンタルへの効果です。

Stream Deckのアイコンは、自分の好きな画像に設定できます。 私は、推しのキャラクターの画像や、サイバーパンク風のかっこいいアイコンを設定しています。

デスクに座った時、キーボードの横で自分だけの「コックピット」が光っている。 それを見るだけで、少しだけテンションが上がります。 「自分はPC操作が苦手だ」「不器用だ」というネガティブな感情が、「このかっこいいデバイスを操っている自分」というポジティブな感覚に上書きされていくのです。

大げさに聞こえるかもしれませんが、私たちのように自己肯定感が下がりやすい特性を持つ人間にとって、「道具を愛でる」「環境を楽しむ」ことは、立派な心の処方箋になると私は信じています。


おすすめのStream Deckモデル

Stream Deckにはいくつか種類がありますが、これから導入する方、特に私と同じような特性を持つ方におすすめなのは以下の2つです。

1. 初心者に最適のスタンダード『Stream Deck MK.2』

ボタンが15個ついている、最も標準的なモデルです。 15個もあれば、投資用、ブログ用、YouTube鑑賞用と、ページを切り替えて十分に使えます。 また、フェイスプレートを着せ替えできるので、自分の好みのデザインに変えられるのも「愛着」を持つ上で重要なポイントです。

2. ダイヤル操作が直感的な『Stream Deck +(プラス)』

もし、予算に余裕があるならこちらが最強です。 ボタンに加えて「回せるダイヤル」がついています。 音量調整や、動画の早送り・巻き戻し、画像の拡大縮小などを「つまんで回す」という直感的な動作で行えます。 マウスの細かい操作で手が震えてしまう方や、微調整が苦手な方には、このダイヤルの物理的なフィードバックが非常に心地よく感じられるはずです。


おわりに:「助けて」と言えるガジェットを持とう

私がこのブログを始めた理由はただ一つ。「あなたは一人じゃない」と伝えたいからです。

かつての私のように、診断がつかずに苦しんでいる方、診断されて間もなく戸惑っている方、そしてそのご家族へ。 私たちは、どうしても「普通」になろうとして、「自分の力だけでなんとかしなきゃ」と頑張りすぎてしまいます。

でも、目が悪い人がメガネをかけるように、足が悪い人が杖をつくように、PC操作や段取りが苦手な私たちが、便利なガジェットに頼ることは「甘え」ではありません。それは、私たちが「私たちらしく生きるための工夫」なのです。

「できないこと」を数えて落ち込む時間は、もう終わりにしましょう。 その代わりに、あなたの「苦手」を肩代わりしてくれる魔法の道具を、相棒にしてみませんか?

Stream Deckは、単なる効率化ツールではありません。 不器用な私が、自信を持ってPCに向かうための「勇気のスイッチ」です。

もし、日々のPC作業に辛さを感じているなら、ぜひ一度試してみてください。 ワンボタンで世界が変わる感覚を、あなたにも味わってほしいのです。

不器用な私ですが、これからもこうして生活の中で見つけた「工夫」を発信していきます。 どうぞゆっくりしていってくださいね。