妻はなぜ、計算できない夫に財布を預けたのか?「障害者夫婦」の家計分担ルール

はじめまして、管理人のりゅうぞうです。 このブログに辿り着いてくださり、本当にありがとうございます。
今日は、少し不思議に思われるかもしれない、我が家の「お金」の話をさせてください。
2025年現在、私は38歳。妻と子供一人の3人家族で暮らしています。 我が家の総資産は約3,400万円。そのうち9割を株式で運用しており、私の口座(PF1)だけでなく、妻の口座(PF2)の運用・管理も、夫である私が担当しています。
こう書くと、「なんだ、数字に強い几帳面な旦那さんなんだな」と思われるかもしれません。
でも実は、私は「計算」が致命的に苦手なんです。
私には、自閉スペクトラム症(ASD)と、限局性学習症(SLD)という2つの障がいがあります。特にSLDの影響で、簡単な暗算や筆算がうまくできません。買い物でお釣りを受け取る瞬間にパニックになったり、数字の列を見ただけで頭が真っ白になったりすることもあります。
そんな私が、なぜ家計の司令塔として、妻から全幅の信頼を得て「財布(資産)」を預かっているのか? 通常ならあり得ないこの役割分担が成立している理由。それは、私たちの間に「できないことを隠さない信頼」と「テクノロジーという武器」があるからです。
今日は、計算ができない私がどうやって資産を管理しているのか、そしてなぜ妻がそれを許容したのか。その「カラクリ」を、同じような悩みを持つあなたへ包み隠さずお話しします。
1. 「努力不足」ではなかった。27歳で知った自分の正体
まず、私の「できない」について少しだけ説明させてください。
私が自分の障がいに気づいたのは27歳の時でした。それまでの20数年間は、まさに暗闇の中で手探りをしているような感覚。「周りの人と同じようにやろうとしているのに、なぜかできない」。
特に数字に関しては、学生時代から苦労の連続でした。 「みんなができている計算が、なぜ自分だけできないんだろう?」 「努力が足りないからだ。もっと集中すればできるはずだ」
そう自分を責め続け、劣等感の塊のようになっていました。 しかし、診断がついた時、私はショックを受けるどころか、心の底から安堵しました。「私がダメな人間だったわけじゃない。脳の使い方が違っただけなんだ」と、やっと腑に落ちたのです。
私の「できないこと」と「できること」
私の特性を整理すると、こんな凸凹(デコボコ)があります。
- 苦手なこと(SLD): 暗算、素早い計算、手書きで文字や数字を書くこと。
- 苦手なこと(ASD): 暗黙の了解を読み取ること、急な予定変更への対応。
これだけ見ると、家計管理には不向きに見えますよね。でも、私にはこんな「得意」もありました。
- 得意なこと(ASD): 興味のある分野への異常なほどの集中力、膨大なデータを分析すること、感情に流されずルール通りに行動すること。
妻はこの「凸凹」を、驚くほど冷静に見ていました。
2. 妻の視点:「計算」と「運用」は別物だった
ある日、私は妻にこう尋ねたことがあります。 「俺、計算できないのに、なんで家計を任せてくれるの? 不安じゃない?」
妻の答えは、私の目から鱗を落とすものでした。 「だって、計算はお金持ちになるためのスキルじゃないでしょ?」
妻いわく、彼女にとって重要なのは「日々のレジでお釣りを間違えないこと」ではなく、「老後や子供の将来のために、資産をどう増やしていくか」という長期的な視点でした。
妻の不得意と、私の得意が噛み合った
実は、妻にも苦手なことがあります。それは「複雑な銘柄分析」や「長期的な資産シミュレーション」です。 「どの株を買えばいいか調べたり、世界情勢を見てポートフォリオを組み替えたりするのは、私には無理。面倒くさいし、興味が持てない」と彼女は言います。
一方で、ASDの特性を持つ私は、興味を持った「投資」の世界には、寝食を忘れて没頭できました。 企業の業績データを比較したり、過去のチャートを検証してルールを作ったりすることは、私にとって「苦行」ではなく「娯楽」に近い感覚なのです。
- 妻: 細かい計算や日常の管理はできるが、投資の勉強は苦痛。
- 私: 細かい計算はできないが、投資戦略を練るのは大好き。
ここで、私たち夫婦の間にひとつの契約が成立しました。 「計算(Arithmetic)は機械に任せよう。あなたは経営(Management)をして」
妻が私に求めたのは、電卓を叩く能力ではなく、資産を増やすための「航海図」を描く能力だったのです。
3. 計算できない夫の「秘密兵器」たち
とはいえ、日々の管理で数字を扱わないわけにはいきません。 そこで私は、自分の「脳の弱点」を補うために、徹底的にテクノロジーに頼ることにしました。
私が実践している、計算しなくて済むための3つの工夫をご紹介します。
① 「家計簿」はつけない。自動化する
私は手書きの家計簿をつけたことがありません。SLDの私にとって、レシートの数字を書き写す作業は拷問に近いからです。 その代わり、家計管理アプリ(マネーフォワードなど)とクレジットカードをフル活用しています。
- 支払いは原則キャッシュレス。
- 銀行口座や証券口座をアプリに全連携。
こうすれば、勝手に数字が集まり、勝手にグラフ化されます。「今月いくら使ったか」は、私が計算するのではなく、スマホが教えてくれます。私はその結果を見て「来月は少し引き締めようか」と判断するだけ。これなら計算能力はゼロで済みます。
② スプレッドシート関数が私の「脳」になる
私の3,400万円の資産管理の心臓部は、自作のGoogleスプレッドシートです。 ここには、私と妻のポートフォリオ(PF)がすべて可視化されていますが、私はここに数字を入力する際、計算を一切しません。
あらかじめ複雑な数式(関数)を組んであるため、私は「現在の株価」や「入金額」をポンと入れるだけ。あとは勝手に、 「現在の配当利回りは◯%」 「目標資産配分とのズレは◯%」 「今月、A銘柄を◯株買い増すべき」 という答えが弾き出されます。
私にとってExcelやスプレッドシートは、単なるソフトではなく「義足」のような存在です。これさえあれば、私は健常者の方と同じように、いや、それ以上に正確に数字を操ることができるのです。
③ 生成AIを壁打ち相手にする
最近では、ChatGPTやGeminiといったAIも強力な相棒です。 投資レポートを読んでも理解が難しい時や、新しい家計ルールを作りたい時は、AIに相談します。 「私の特性(計算が苦手)を考慮して、一番ストレスのない積立ルールを考えて」と投げかければ、私の代わりに論理的な提案をしてくれます。
4. 信頼の正体:透明性と「報告」のルール
ツールがあっても、やはり「他人の金(妻の資産)」を預かる責任は重大です。 もし私が独断でハイリスクな投資をして大損させたら、夫婦関係は崩壊します。
そこで我が家では、鉄の掟を設けています。 それが「ガラス張りの運用」です。
月に一度の「資産報告会」
私は毎月一度、妻に資産状況を報告します。 ここで重要なのは、難しい専門用語を使わないこと。
「今、アメリカの金利がこうだから…」なんて話はしません。 「今月は、君の資産が◯◯円増えたよ。理由は、持っていた株の配当金が入ったから。予定通り順調だよ」 と、結果と安心材料だけを伝えます。
また、私のスプレッドシートは妻もいつでも見られる共有設定になっています(妻はほとんど見ませんが…)。 「いつでも見られる」という状態を作ること自体が、不信感を消す一番の薬になります。
この「隠さない姿勢」と、毎月コツコツと資産が増えていく「実績」。この積み重ねが、「計算できない夫」への信頼に変わっていきました。
5. あなたにもできる。「弱み」を「仕組み」で超える
ここまで読んでくださった方の中には、ご自身やパートナーの「苦手」に悩み、将来のお金に不安を感じている方もいるかもしれません。
「計算ができないから、家計管理なんて無理」 「発達障害があるから、しっかりした生活は送れない」
もしそう思っているなら、私の存在を思い出してください。 38歳、ASDとSLD持ち。暗算もお釣り計算もできません。 それでも、仕組みとツール、そしてパートナーとの対話があれば、3,000万円を超える資産を築き、守ることができます。
大切なのは、「自分一人で完璧にやろうとしないこと」です。
苦手なことは、無理に克服しなくていい。 計算はアプリに任せましょう。 記憶はスマホに任せましょう。 そして、判断や対話といった「人間にしかできないこと」に、あなたのエネルギーを使ってください。
最後に
私がこのブログを書く理由はただ一つ。 「あなたは一人じゃない」と伝えたいからです。
かつての私のように、「自分はダメだ」と暗闇の中でうずくまっている方がいたら、どうか顔を上げてください。 不器用な私たちが、胸を張って生きていける方法は必ずあります。
私の失敗談や、生活の中で見つけたささやかな「工夫」。 そして、凸凹なままで幸せに暮らす日常を、これからもこの場所で綴っていきます。
不器用な管理人ですが、どうぞこれからも、ゆっくりしていってくださいね。
[りゅうぞう]








