あなたも「地図が読めない人」ですか?

結論から言います。方向音痴は、テクノロジーで「完全にカバーできる」障がいです。

はじめまして、りゅうぞうです。38歳、自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)を持つ父親です。

突然ですが、告白させてください。

私は、Googleマップがないと、自宅から徒歩5分のコンビニにすら迷います。

「いやいや、大げさでしょ?」と思いましたか?

残念ながら、本当です。何度も行ったことのある場所なのに、なぜか違う道に入ってしまう。「あれ?この景色、見たことないぞ」と気づいたときには、すでに見知らぬ住宅街の奥深く。スマホを取り出して現在地を確認すると、目的地と真逆の方向に歩いていた——。

こんな経験、あなたにもありませんか?

もしあなたが今、「自分だけがおかしいんじゃないか」「なんでみんな普通にできることができないんだろう」と悩んでいるなら、この記事を最後まで読んでください。

あなたは一人じゃありません。そして、解決策は確実にあります。


なぜASD/SLD併発者は「極度の方向音痴」になりやすいのか

脳の処理方法が「地図向き」じゃない

まず、なぜ私たちが方向音痴になりやすいのかを整理しましょう。これを理解することで、「自分を責める」のをやめることができます。

【ASD/SLDと方向感覚の関係】

特性移動への影響
空間認識の困難(SLD関連)頭の中で地図を回転させられない
ワーキングメモリの弱さ「次は右、その次は左」を覚えていられない
注意の切り替え困難(ASD関連)考え事をしていると曲がり角を見逃す
暗黙の了解が読めない「あの角を曲がって」という説明が理解できない

私の場合、特に厳しいのは「頭の中で地図を回転させる」ことです。

紙の地図を見ても、自分がどの方向を向いているのかわからない。「北が上」と言われても、今自分が北を向いているのか南を向いているのか、まったく実感がわかない。

これは空間認識の困難と呼ばれる特性で、SLDを持つ人に多く見られます。


私の「最悪の迷子エピソード」

27歳で診断を受ける前、私は自分の方向音痴を「努力不足」だと思っていました。

忘れられないのは、新卒で入った会社での出来事です。

上司に「取引先に書類を届けてきて。駅から徒歩10分だから」と言われました。事前にGoogleマップで調べ、道順をメモし、完璧に準備したつもりでした。

結果、1時間半かかりました。

駅を出た瞬間、どちらに進めばいいかわからなくなった。メモを見ても「北口を出て右」と書いてあるのに、そもそも北口がどこかわからない。スマホの地図を見ても、青い矢印が指している方向と、自分の体が向いている方向が一致しているのか確信が持てない。

汗だくで到着したとき、先方は呆れた顔をしていました。

「道に迷いました」と言えなかった。

「電車が遅れて」と嘘をつきました。自分が情けなくて、帰り道(もちろんまた迷った)でこっそり泣きました。


テクノロジーという「外付けの脳」を手に入れる

Googleマップの「本当の使い方」を知っていますか?

今、私はGoogleマップなしでは外出しません。これは「依存」ではなく「適応」です。

メガネをかけている人が「メガネ依存症」と言われないように、方向感覚を補うためにテクノロジーを使うことは、何も恥ずかしいことではありません。

ただし、Googleマップを「ちゃんと使いこなせている」人は意外と少ない。私が10年以上の迷子生活で編み出した「ASD/SLD当事者のためのGoogleマップ完全活用術」をお伝えします。


【基本設定:まずこれをやれ】

  1. 「進行方向を上にする」設定をONにする
    • これがないと地図が読めません
    • 設定 → ナビ設定 → 「地図を北向きに固定」をOFF
  2. ARナビ(ライブビュー)を使う
    • カメラで実際の景色を映すと、矢印が重なって表示される
    • 「どっちに進めばいいか」が一目でわかる神機能
  3. 音声案内のタイミングを「早め」に設定
    • 曲がり角の直前で言われても、すでに通り過ぎていることが多い
    • 設定 → ナビ設定 → 「詳細な音声案内」をON

【中級者向け:私だけがやっている裏技】

① 経路を「徒歩」ではなく「自転車」で検索する

なぜか?徒歩ルートは「最短距離」を重視するので、細い路地や複雑な道を案内されがち。自転車ルートは比較的大きな道を通ることが多く、迷いにくい。

② 出発前に「ストリートビュー」で予習する

目的地だけでなく、曲がり角の景色を事前に確認しておく。「このコンビニが見えたら右」という視覚的な目印を頭に入れておくと、迷う確率が激減する。

③ Apple Watch(またはスマートウォッチ)を使う

スマホを見ながら歩くのは危険だし、周囲の視線も気になる。Apple Watchなら、曲がるタイミングで手首が振動して教えてくれる。これが本当に便利。


切符を買わない移動術:SLDでも大丈夫な交通システム

ここからは、SLD(特に計算困難)を持つ人向けの話です。

私は暗算がまったくできません。「250円と180円を足すと?」と聞かれても、頭が真っ白になります。

昔の私は、電車に乗るのが恐怖でした。

  • 切符の料金表を見ても、どの金額を買えばいいかわからない
  • 小銭を出すとき、計算が追いつかずに後ろの人を待たせてしまう
  • 乗り越し精算機の前でパニックになる

でも今は、一切困っていません。

【計算不要の移動を実現するアイテム】

アイテムメリットデメリット
交通系ICカード(Suica/PASMO等)改札でタッチするだけ、料金は自動計算残高管理が必要
モバイルSuicaスマホだけで完結、残高もアプリで確認バッテリー切れに注意
クレジットカードタッチ決済Visaタッチ等で改札を通過可能に(対応路線拡大中)まだ対応していない路線も
定期券(通勤・通学)区間内なら何も考えなくていい経路外に出ると混乱

私のおすすめは「モバイルSuica+オートチャージ設定」の組み合わせ。

残高が一定額を下回ると自動でチャージされるので、「お金が足りなくて改札で止められる」恐怖から解放されます。設定は最初だけ少し面倒ですが、一度やれば二度と切符を買う必要がなくなります。


「できない自分」を受け入れたら、人生が変わった

障がいを隠し続けた20代

ここまでテクノロジーの話をしてきましたが、本当に人生を変えたのは「ツール」ではありません。

「できない自分を認めること」でした。

20代の私は、自分の苦手を必死に隠していました。

  • 方向音痴がバレないように、待ち合わせには1時間前に到着(下見のため)
  • 計算ができないことを隠すために、会計係は絶対に引き受けない
  • 「道がわからない」と言えずに、知ったかぶりをして大失敗

毎日が戦場でした。

でも27歳で診断を受けて、少しずつ変わり始めました。


「助けて」と言えるようになるまで

最初は、診断名がついても周囲には言えませんでした。「障がい者」というレッテルを貼られるのが怖かった。

転機は、妻との出会いでした。

付き合い始めて数か月後、初めてのデートで道に迷いまくった私は、ついに告白しました。

「実は、俺、方向音痴ってレベルじゃなくて……本当に道がわからないんだ。障がいの影響で」

妻の反応は、予想と違いました。

「知ってたよ。だって毎回迷ってるじゃん。別にいいよ、私が案内するから」

肩の荷が下りた瞬間でした。

「できない」と言っていいんだ。


周囲への伝え方:具体的なスクリプト

「障がいがある」と伝えるのは勇気がいります。私が実際に使っている「伝え方」をシェアします。

【職場での伝え方】

「すみません、実は私、空間認識がすごく苦手で、道案内を口頭で言われても理解できないことが多いんです。よければ地図アプリで共有してもらえると助かります」

ポイントは、「障がい」という言葉を使わなくてもいいということ。「苦手なこと」として伝え、具体的な解決策を一緒に提示すると、相手も対応しやすくなります。

【友人への伝え方】

「俺、めちゃくちゃ方向音痴だから、待ち合わせは絶対Googleマップのピン共有してね。じゃないと永遠にたどり着けないから(笑)」

軽く笑いに変えながら伝えると、相手も構えずに受け入れてくれます。


まとめ:テクノロジーは「松葉杖」ではなく「翼」

最後に、あなたに伝えたいことがあります。

方向音痴は、治す必要がありません。

カバーすればいいんです。

  • Googleマップがあれば、どこへでも行ける
  • モバイルSuicaがあれば、計算なしで電車に乗れる
  • 「できない」と言える関係があれば、誰かが助けてくれる

私は今でも、Googleマップがないと1歩も動けません。でも、Googleマップがあれば、世界中どこへでも行けます

かつての私は、「普通の人」になろうと必死でした。

地図を読めるようになりたい。道を覚えられるようになりたい。計算ができるようになりたい。

でも、それは「メガネなしで見えるようになりたい」と言っているのと同じでした。

視力が悪い人がメガネをかけるように、方向感覚がない人がGoogleマップを使う。それだけのことです。