あなたの「疲れ」、もしかして「音」のせいかもしれません

スーパーのBGMと、レジの「ピッ」という音と、隣のおばちゃんの会話と、子どもの泣き声が、全部同じボリュームで頭に流れ込んでくる。

そんな経験、ありませんか?

私はあります。というか、27歳でASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けるまで、それが「普通」だと思っていました

「なんで私だけこんなに疲れるんだろう」 「みんな平気な顔してるのに」 「自分が弱いだけなのかな」

ずっとそう思って生きてきました。

でも、違ったんです。

私の耳は、世界の音を「選べない」耳だったんです。

この記事では、聴覚過敏に5年以上向き合ってきた私が、実際に試した耳栓・イヤホン・ノイズキャンセリング機器を本音で徹底比較します。

結論から言います。

ノイズキャンセリングイヤホンは、聴覚過敏の人間にとって「贅沢品」ではなく「生活必需品」です。

ただし、「高ければいい」わけでも、「どれでも同じ」わけでもありません。

この記事を読めば、あなたに合った「音の盾」が見つかるはずです。


100円の耳栓から始まった、私の「静寂探し」

最初の武器は「ダイソーの耳栓」だった

私が最初に手にした「音対策グッズ」は、ダイソーの**スポンジ耳栓(110円)**でした。

正直に言います。

効果はありました。でも、限界もすぐに感じました。

ダイソー耳栓の良かった点

  • とにかく安い(110円で2ペア)
  • 高音域(金属音・子どもの叫び声)はかなり軽減される
  • 持ち運びが簡単

ダイソー耳栓の限界

  • 人の話し声(中〜低音域)は意外と通る
  • 長時間つけると耳が痛くなる
  • 「完全に無音」にはならない
  • 見た目で「何かつけてる」とバレやすい

特に困ったのが、職場での使用でした。

「耳栓してるの?」と聞かれるたびに説明するのが苦痛で、結局つけられなくなりました。

次に試した「Loopイヤープラグ」(約3,000円)

SNSで話題になっていたLoop Quietを試しました。

これは「イヤホンに見える耳栓」というコンセプトの製品です。

見た目がスタイリッシュなので、「音楽聴いてるのかな?」と思われる程度で済みます。

Loop Quietの特徴

  • 最大27dBの騒音低減
  • シリコン製で耳が痛くなりにくい
  • 洗って繰り返し使える
  • カラーバリエーションが豊富

私の正直な感想:

「耳栓としては最高峰。でも、やっぱり『消す』のではなく『小さくする』だけ」

カフェでの作業には良いんです。でも、駅のホームや人混みでは、まだ「うるさい」と感じました。


ノイズキャンセリングイヤホンとの出会い

初めて「世界が静かになった」日のこと

28歳の誕生日に、自分へのプレゼントとしてApple AirPods Proを買いました。

約39,800円(2024年現在の第2世代の価格)。

正直、めちゃくちゃ悩みました。

「イヤホンに4万円?贅沢すぎない?」

でも、初めてノイズキャンセリングをONにした瞬間、涙が出ました

大げさじゃないです。本当に泣きました。

電車の「ゴーッ」という音が、すっと消えたんです。

「え、世界ってこんなに静かだったの?」

「みんな、こんな世界で生きてたの?」

32年間(当時)、ずっとうるさい世界で生きてきたことに、初めて気づいた瞬間でした。

「消える音」と「消えない音」がある

ただし、ノイズキャンセリングには得意・不得意があります。

音の種類消えやすさ具体例
低音・持続音◎とても消える電車の走行音、エアコンの音、飛行機のエンジン音
中音・話し声△機種による職場の雑談、カフェの会話、アナウンス
高音・突発音×消えにくい食器のぶつかる音、子どもの叫び声、ドアの開閉音

聴覚過敏の人が一番辛いのは「人の話し声」という方も多いと思います。

実は、これが一番消しにくい音なんです。


5年間で試したノイズキャンセリング機器・徹底比較

ここからは、私が実際に購入・使用した機器を本音でレビューします。

【エントリーモデル】Anker Soundcore Space A40(約12,990円)

「まず試してみたい」人への最初の一歩

基本スペック

  • ノイズキャンセリング:ウルトラノイズキャンセリング2.0搭載
  • 最大再生時間:イヤホン単体10時間、ケース込み50時間
  • 防水:IPX4
  • マルチポイント接続:2台同時接続可能

私の使用感

正直、この価格でこの性能は驚異的です。

電車の中で使う分には、AirPods Proと大差ないレベルでノイズが消えます。

ただし、「人の話し声」を消す力は弱めです。

静かなオフィスでの雑談は、ほぼそのまま聞こえます。

こんな人におすすめ

  • ノイキャンを初めて試す人
  • 通勤・通学での使用がメイン
  • 予算を抑えたい人

デメリット

  • 音楽なしでのノイキャン使用だと、若干「サー」というホワイトノイズが気になる
  • アプリの設定項目が多くて最初は迷う

【中価格帯の実力派】SONY WF-1000XM5(約41,800円)

「話し声を消したい」人への最有力候補

基本スペック

  • ノイズキャンセリング:統合プロセッサーV2搭載
  • 最大再生時間:イヤホン単体8時間、ケース込み24時間
  • 防水:IPX4
  • 「スピーク・トゥ・チャット」機能搭載

私の使用感

現時点で「人の話し声」を最も消してくれるイヤホンだと感じています。

特に、専用アプリ「Sony | Headphones Connect」での細かい調整が神です。

【中級者向けコラム】SONY WF-1000XM5の「人の声を消す」設定

ここからは少しマニアックな話をします。

SONYのノイキャンイヤホンには、**「イコライザー」と「ノイズキャンセリング調整」**という2つの武器があります。

設定手順:

  1. アプリ「Sony | Headphones Connect」をダウンロード
  2. 「サウンド」→「イコライザー」を開く
  3. 「カスタム」を選択し、400Hz〜1kHz帯域を下げる
    • これが人の話し声の周波数帯です
  4. 「ノイズキャンセリング」→「アダプティブサウンドコントロール」をOFF
    • 自動調整よりも、常時MAXの方が安定します
  5. 「外音取り込み」レベルを0に設定

この設定で、カフェの隣席の会話がかなり軽減されます。

完全に消えるわけではありませんが、「内容がわからない程度のモゴモゴ」になります。

デメリット

  • 価格が高い
  • バッテリー持ちはAnkerより短い
  • 「スピーク・トゥ・チャット」が誤作動することがある

【最高峰】Bose QuietComfort Ultra Earbuds(約39,600円)

「とにかく強力なノイキャン」を求める人へ

基本スペック

  • ノイズキャンセリング:CustomTuneテクノロジー搭載
  • 最大再生時間:イヤホン単体6時間、ケース込み24時間
  • 防水:IPX4
  • 空間オーディオ対応

私の使用感

ノイズキャンセリングの「圧」が違います。

SONYが「音を消す」なら、Boseは「音を遮断する」という感覚。

初めてつけたとき、「耳が詰まった?」と思ったほどです。

特に飛行機や新幹線での使用は、Boseが最強だと感じます。

ただし、注意点があります

Boseのノイキャンは強すぎて「不自然」と感じる人もいるかもしれません。

私は最初、軽い「閉塞感」を感じました

慣れるまで1週間ほどかかりました。

また、バッテリー持ちが6時間と短めなので、長時間の外出には充電ケースが必須です。


番外編【骨伝導という選択肢】Shokz OpenRun Pro(約23,880円)

「イヤホンを耳に入れるのが苦手」という方へ。

骨伝導イヤホンは、耳の穴をふさがずに音を聴けます。

ただし、ノイズキャンセリング機能はありません。

聴覚過敏対策としては、「外音と音楽を混ぜて聴く」という使い方になります。

私は、家事をしながら使うことが多いです。

インターホンや家族の呼びかけに気づきたいとき、便利です。


比較表まとめ

製品名価格(税込)ノイキャン強度話し声の消しやすさバッテリーおすすめ度
Anker Space A40約12,990円★★★☆☆★★☆☆☆★★★★★初めての人に◎
SONY WF-1000XM5約41,800円★★★★☆★★★★☆★★★☆☆総合バランス◎
Bose QC Ultra約39,600円★★★★★★★★☆☆★★☆☆☆最強ノイキャン
AirPods Pro 2約39,800円★★★★☆★★★☆☆★★★★☆Apple製品ユーザーに◎

私の「使い分け」実践例

外出時の使い分け

シーン使用機器理由
電車通勤SONY WF-1000XM5話し声対策+音楽
スーパーでの買い物Loop Quiet短時間+会話が必要
カフェ作業SONY WF-1000XM5長時間+話し声対策
飛行機・新幹線Bose QC Ultra最強のノイキャンが必要

家の中での使い方

「家でもノイキャン?」と思うかもしれません。

でも、家の中こそ「音の休憩」が必要なんです。

私の家での使用シーン

  1. 朝の準備時間
    • 家族のテレビの音、食器の音が辛いとき
    • イヤホンをして、小さな音でピアノBGMを流す
  2. 在宅ワーク中
  • マンションの生活音、外の工事音
  • SONY WF-1000XM5でノイキャンMAX+環境音楽
  1. 夕方の「充電タイム」
    • 一日の疲れがピークになる時間
    • 何も聴かずに、ノイキャンだけONにして15分間目を閉じる
    • これを私は「耳の昼寝」と呼んでいます
  2. 家族との食事後
  • 食器を洗う音、換気扇の音が重なると辛い
  • 骨伝導イヤホン(Shokz)で音楽を流しながら家事

「無音」ではなく「選んだ音」で満たす

ここで一つ、大事なことをお伝えします。

ノイズキャンセリングをONにして「完全な無音」にすると、逆に辛くなることがあります。

私も最初、「とにかく静かにしたい!」と思って無音状態を作りました。

でも、静かすぎると耳鳴りが気になったり、心臓の音が聞こえたりして落ち着かないんです。

だから今は、「嫌な音を消して、好きな音で満たす」という使い方をしています。

私のお気に入り「満たす音」リスト

  • 雨の音(YouTubeの10時間動画)
  • 焚き火の音(Spotifyのプレイリスト)
  • ジブリのピアノカバー(ゆっくりめのテンポ)
  • 川のせせらぎ+鳥の声(自然音アプリ)

音量は「聞こえるか聞こえないか」ギリギリに設定するのがコツです。

大きすぎると、それがまた刺激になってしまうので。


よくある質問と、私なりの回答

Q1. ノイキャンイヤホンは「発達障害の人向け」なの?

A. いいえ、誰でも使えます。

ただ、聴覚過敏を持つ人にとっては「あると生活が変わる」レベルのアイテムだということです。

眼鏡が「目が悪い人の贅沢品」ではないように、ノイキャンイヤホンも「耳が敏感な人の必需品」になり得ます。

Q2. 職場でイヤホンしてたら怒られない?

A. 環境によります。でも、伝え方次第で理解を得られることも多いです。

私の場合、上司に「聴覚過敏があり、集中するために音楽なしでノイキャンを使いたい」と伝えました。

ポイントは「音楽を聴くため」ではなく「集中するため」と説明すること。

また、片耳だけ外しておくという方法もあります。

最近は「合理的配慮」として認められるケースも増えています。

Q3. 高いイヤホンじゃないとダメ?

A. まずは安いものから試してOKです。

Ankerの約13,000円のモデルでも、「ノイキャンってこういうことか」は十分わかります。

そこで「もっと強力なのが欲しい」と感じたら、SONYやBoseにステップアップすればいい。

最初から4万円を出す必要はありません。

Q4. 耳栓とノイキャン、どっちがいいの?

A. 場面によって使い分けるのがベストです。

場面おすすめ
睡眠時耳栓(充電不要、つけっぱなしOK)
通勤・移動ノイキャンイヤホン
会話が必要な場面Loopなどの「聞こえる耳栓」
長時間作業ノイキャンイヤホン+環境音楽

「どっちか」ではなく「両方持っておく」のが最強です。

私のカバンには常に、SONYのイヤホン+Loop Quiet+予備のスポンジ耳栓が入っています。


海外の聴覚過敏対策事情

アメリカでは「センサリーフレンドリー」が広がっている

アメリカでは、「Sensory Friendly(感覚に優しい)」という考え方が広まっています。

たとえば、大手スーパーのTargetは、一部店舗で「センサリーフレンドリータイム」を設けています。

  • 照明を暗くする
  • BGMを消す
  • アナウンスを減らす

聴覚過敏の人、自閉症の人、認知症の高齢者など、感覚刺激に敏感な人が買い物しやすい時間帯です。

日本でも、イオンの一部店舗で試験的に導入されています。

イギリスの「Sunflower Lanyard」システム

イギリスでは、ひまわり柄のストラップをつけることで「目に見えない障害がある」と周囲に伝えるシステムがあります。

空港、駅、スーパーなどで、スタッフが配慮してくれる仕組みです。

「イヤホンをしているのは無視しているからじゃない」と伝える手段として、日本でも広まってほしいなと思います。


まとめ:あなたの「静寂」は、あなたが選んでいい

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

最後に、私が一番伝えたいことを書きます。


「音がつらい」と感じることは、弱さじゃない。

「みんな我慢してる」と言われても、あなたの感じ方は否定されるものじゃない。

道具に頼っていい。逃げていい。耳をふさいでいい。


私は27歳で診断を受けるまで、ずっと自分を責めていました。

「なんでみんなと同じようにできないんだろう」 「こんなことで疲れるなんて、根性がないのかな」

でも、ASDの診断を受けて、聴覚過敏という言葉を知って、ノイキャンイヤホンと出会って、世界が変わりました。

音を遮断することは、自分を守ることです。

そして、自分を守ることは、自分を大切にすることです。

もし今、「音が辛いけど、どうしていいかわからない」と感じているなら。

まずは、100円の耳栓からでいい。

Amazonで安いノイキャンイヤホンのレビューを見るだけでもいい。

「音から逃げていいんだ」と自分に許可を出すところからでいい。

あなたには、静かな世界で休む権利があります。

誰に許可をもらわなくても、あなたが自分のために選んでいいのです。