あなたも「ちゃんとやらなきゃ」に縛られていませんか?

「洗濯物は必ずピシッと畳まないと気が済まない」 「食器の並べ方が少しでもズレると、全部やり直したくなる」 「掃除を始めたら、隅の隅まで終わらせないと落ち着かない」

もし、こんな気持ちに心当たりがあるなら、あなたは過去の私と同じかもしれません。

はじめまして、りゅうぞうです。38歳、妻と子供が一人ずついる普通の(いや、ちょっと変わった)家庭の大黒柱です。

私は自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)という2つの障がいを持っています。27歳で診断されるまで、「なんで自分はこんなに生きづらいんだろう」と、ずっと暗闘の中を手探りで歩いてきました。

結論から言います。

家事は「60点で合格」です。いや、もっと言えば「30点でも生きていける」んです。

完璧主義な家事で何度も心が折れた私が、どうやって「ほどよく手を抜く」技術を身につけたのか。今日はその全てをお話しします。


私の「完璧主義家事」黒歴史:こうして何度も挫折した

洗濯物を「完璧に」畳もうとした結果

ASDの特性の一つに「こだわりの強さ」があります。私の場合、これが家事に向くと大変なことになりました。

ある日、洗濯物を畳んでいた時のこと。

タオルの端と端がピッタリ合わないと、何度でもやり直す。Tシャツの畳み方がショップの陳列みたいにならないと納得できない。靴下のペアを探すのに、色味が微妙に違うだけで「これは本当にペアなのか?」と30分悩む。

結果、洗濯物を畳むのに2時間かかりました。

妻に「まだやってるの?」と言われた時の、あの何とも言えない敗北感。今でも覚えています。

掃除が「終わらない」地獄

掃除機をかけ始めると、ソファの下の隙間が気になる。気になったら動かさないと気が済まない。ソファを動かしたら、壁際のホコリが見えてしまう。そこを掃除したら、今度は窓のサッシが…。

気づいたら、リビングの掃除だけで休日が終わっていました。

「掃除したのに、なんでこんなに疲れてるんだろう」

そう思いながら、ぐったりとソファに倒れ込む。本末転倒とはまさにこのことです。

料理は「レシピ通り」じゃないと不安

SLDで計算が苦手な私ですが、料理のレシピは「数字」の世界。大さじ2と書いてあれば、本当にきっちり大さじ2を計る。「適量」という言葉が出てきた瞬間、頭がフリーズする。

「適量って何グラム?何cc?」

レシピ本に向かって、真剣に問いかけたこともあります(もちろん返事はありません)。


転機は「できない自分」を受け入れた瞬間だった

27歳で診断を受けて、やっと「理由」がわかった

私が自分の障がいに気づいたのは27歳の時でした。

それまでの人生は、本当に「暗闘の中で手探りをしている」ような感覚。周りの人と同じように努力しているはずなのに、なぜかうまくいかない。「自分はダメな人間なんだろうか」と、自分を責め続ける日々でした。

診断名がついた時、ショックよりも「やっと理由がわかった」という安堵感の方が大きかったんです。

それは、私が「私として生きていく」ための再スタートの瞬間でした。

私の「できない」と「できる」を知る

障がいがあるからといって、全てができないわけではありません。でも、苦手なことは確実にある。これを認めることが、第一歩でした。

苦手なこと(できないこと):

  • 暗黙の了解を読み取ること
  • 急な予定変更への対応
  • 暗算など算数全般(電卓がないと本当に無理)
  • 「適当に」「いい感じに」という曖昧な指示

得意なこと(できること):

  • 興味のある分野への深い集中力
  • 独自の視点で物事を捉えること
  • ルール化・システム化すること
  • 同じ悩みを持つ人の痛みに寄り添うこと

この「できる・できない」のリストを作ったことで、自分の取扱説明書ができたような感覚になりました。


「60点で合格」を実現する具体的なコツとツール

コツ①:「完了」の定義を先に決める

私がまず取り入れたのは、家事を始める前に「ここまでやったら終わり」を決めることです。

例えば掃除なら:

  • 床に落ちているものを拾う → 完了
  • 掃除機を全体にかける → 完了
  • それ以上は「ボーナスステージ」

「ボーナスステージ」という言葉がポイントです。

ゲームでボーナスステージをクリアできなくても、ゲームオーバーにはなりませんよね?家事も同じ。基本ステージをクリアしたら、それで十分なんです。

コツ②:タイマーで強制終了する

こだわりが強い人間にとって、「もうちょっとだけ」は危険な言葉です。

私はスマートフォンのタイマー機能を使って、家事に制限時間を設けています。

  • 洗濯物を畳む:15分
  • 食器洗い:10分
  • 掃除機がけ:20分

タイマーが鳴ったら、途中でも手を止める。最初は本当に気持ち悪かったです。でも、慣れてくると「時間内に終わらせるゲーム」として楽しめるようになりました。

コツ③:「見えない場所」は諦める

これは革命的な発想の転換でした。

来客が見ない場所は、多少散らかっていてもOK。

クローゼットの中、引き出しの奥、ベッドの下。誰も見ないんです。見えない場所のために、見える場所の掃除時間を削るのは本末転倒。

「見えない場所は存在しない」くらいの気持ちで、堂々とスルーしています。

【便利ツール紹介】家事を「60点」にするお助けアイテム

完璧主義を手放すために、私が実際に使っているアイテムを紹介します。

①ロボット掃除機(約30,000円〜)

床掃除を機械に任せることで、「隅々まで掃除しなきゃ」という呪縛から解放されました。機械がやったことに「まあいいか」と思えるのが不思議。自分がやると納得いかないのに、ロボットがやると許せる。この心理、ASDあるあるかもしれません。

②食洗機(約50,000円〜)

食器の配置にこだわって30分かかっていた食器洗いが、「とりあえず突っ込む」で完了。水道代も減るし、手荒れもしない。初期費用は高いですが、私の中では「人生を変えた家電No.1」です。

③ドラム式洗濯乾燥機(約150,000円〜)

洗濯→乾燥まで全自動。畳む作業は残りますが、「乾いた洗濯物がある」という状態を保つだけで、かなり心が楽になります。

④スマートスピーカー(約5,000円〜)

「アレクサ、15分タイマー」と言うだけでタイマーセット完了。スマホを触る手間すら省けるのが地味に大きいです。


ASDと完璧主義の脳科学的な関係

ここで少しマニアックな話を。

ASDの人に完璧主義が多い理由には、脳の特性が関係していると言われています。

ASDの脳は「予測誤差」に敏感です。予測誤差とは、「こうなるはずだ」という予測と、実際の結果のズレのこと。このズレに対して、ASDの脳は定型発達の人よりも強く反応します。

洗濯物の端がズレている、掃除機のかけ残しがある。これらは脳にとって「予測誤差」であり、不快感の原因になります。だから何度も直そうとする。これは「怠け」でも「性格」でもなく、脳の仕組みなんです。

つまり、完璧主義を「手放す」のではなく、「脳をだます」という発想が有効。タイマーで強制終了したり、ロボットに任せたりするのは、脳に「これでOK」という新しい予測を学習させるプロセスでもあるんです。


周囲との「ほどよい」距離感:障がいをどう伝えるか

「助けて」と言えるようになるまで

完璧主義だった私は、「助けて」と言うのが本当に苦手でした。

「自分でできるはずなのに、できないのは努力不足だ」 「人に頼るのは甘えだ」

そう思い込んでいたんです。

でも、診断を受けて自分の特性を理解してから、少しずつ変わりました。

「これは努力不足じゃなくて、脳の特性なんだ」

そう思えるようになってから、妻に「ここまでやったけど、あとはお願いしていい?」と言えるようになりました。

障がいを周囲にどう伝えるか

障がいのことを伝えるかどうかは、相手との関係性によって変えています。

家族(妻・子供): 全て伝えています。「お父さんは計算が苦手だから、お会計は一緒に確認してね」と子供にも話しています。

職場: 必要最低限。「計算を伴う業務は確認をお願いしたい」という形で、障がい名は出さずに配慮をお願いしています。

友人: 親しい友人には伝えています。「急な予定変更が苦手だから、早めに教えてくれると助かる」と伝えることで、関係がむしろスムーズになりました。

「できない自分」を受け入れたら、人生が変わった

完璧主義を手放してから、家事だけでなく人間関係も楽になりました。

「全部自分でやらなきゃ」から「得意な人に任せる」へ。 「完璧にこなす」から「まあまあできればOK」へ。

この発想の転換だけで、日常のストレスが半分以下になった感覚があります。


まとめ:60点で合格、30点でも生きていける

最後にお伝えしたいこと。

家事は「生活を回すための手段」であって、「人生の目的」ではありません。

完璧な家事をしても、疲れ果てて家族と笑えなかったら意味がない。多少散らかっていても、みんなで楽しくご飯を食べられる方がずっと大事。

私が学んだことをまとめます。

「60点で合格」を実現するポイント:

  • 家事を始める前に「完了」の定義を決める
  • タイマーで強制終了する
  • 見えない場所は堂々とスルーする
  • 機械に任せられることは任せる
  • 「助けて」と言える相手を作る

完璧主義で苦しんでいるあなたへ。

「ちゃんとやらなきゃ」という呪いから、自分を解放してあげてください。

60点で十分。30点でも生きていける。そして、その「ほどよさ」を許せるようになった時、人生はもっと軽やかになります。


あなたは一人じゃありません。

不器用な私ですが、どうぞゆっくりしていってください。