あなたは「音」に殺されそうになったことがありますか?

結論から言います。聴覚過敏への投資は、私にとって「生存戦略」でした。

はじめまして、りゅうぞうです。38歳、妻と子供が1人ずついる、ごく普通の家庭の父親です。ただし、私には自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)という2つの障がいがあります。

「音がうるさい」

この言葉を聞いて、あなたはどう思いますか?

「まあ、誰だってうるさい音は嫌だよね」

そう思った方、ちょっと待ってください。私が言う「うるさい」は、あなたの想像とはたぶん違います。

蛍光灯の「ジーッ」という音。冷蔵庫の「ブーン」という低音。隣の部屋から聞こえる誰かの咳払い。電車のアナウンス。スーパーのBGM。子供の泣き声。

これら全部が、同時に、同じボリュームで、頭の中に流れ込んでくる感覚。

普通の人なら無意識にフィルタリングできる音が、私には全部「主役」として聞こえてしまうんです。まるで10個のテレビを同時に最大音量で流しているような感覚。これが毎日、起きている間ずっと続きます。

27歳で診断を受けるまで、私はこの感覚が「普通じゃない」ことすら知りませんでした。

「なんで自分だけこんなに疲れるんだろう」 「なんで人混みに行くと具合が悪くなるんだろう」 「自分は根性がないだけなんだろうか」

ずっとそう思っていました。


聴覚過敏とは何か?— 初心者向け解説

聴覚過敏(ちょうかくかびん)の正体

聴覚過敏とは、特定の音や一般的な生活音に対して、通常よりも強い不快感や苦痛を感じる症状のことです。

医学的には「聴覚過敏症」や「音過敏」とも呼ばれ、ASD(自閉スペクトラム症)の方に多く見られる感覚特性の一つです。

ポイントは「耳が良すぎる」わけではないこと。

聴力検査をしても、数値は正常なことがほとんどです。問題は「脳での音の処理の仕方」にあります。

普通の人の脳は、無意識のうちに「今、注目すべき音」と「無視していい音」を選別しています。カフェで友達と話しているとき、周りのガヤガヤは自然と背景に退いて、友達の声がクリアに聞こえますよね。

ところが、聴覚過敏がある人の脳は、この「選別機能」がうまく働きません。

結果、すべての音が同じ重要度で押し寄せてきて、脳が処理しきれなくなる。これが「疲労」や「パニック」につながるわけです。

聴覚過敏の人が苦手な音の例

カテゴリ具体例
高周波音蛍光灯のジー音、電子レンジのピーピー、赤ちゃんの泣き声
低周波音冷蔵庫のブーン、エアコンの室外機、車のエンジン音
突発音ドアのバタン、くしゃみ、食器がぶつかる音
反響音体育館、駅のホーム、トンネル内の音
複合音スーパーのBGM+レジの音+人の話し声

私の場合、特に苦手なのは**「蛍光灯のジー音」と「複数の人の話し声が重なる状況」**です。

居酒屋なんて、正直言って「拷問部屋」に近い。楽しそうに飲んでいる人たちの中で、私だけが「早くここから出たい」と思っている。その孤独感といったら、筆舌に尽くしがたいものがありました。


「静寂」を買うために投資した7つのもの

ここからが本題です。

私は現在、総資産約3,400万円を保有しています。その90%は株式です。

「えっ、計算苦手なのに資産運用してるの?」

はい、しています。SLD(限局性学習症)で暗算は壊滅的にできませんが、電卓とスプレッドシートという「外部脳」を使えば問題ありません。この話はまた別の記事で詳しく書きますね。

今回お伝えしたいのは、「お金をかけるべき場所」を見極めることの大切さです。

聴覚過敏という特性を持つ私にとって、「静寂」は贅沢品ではなく生活必需品。ここにお金をかけることは、「浪費」ではなく「投資」なんです。

では、具体的に何にお金をかけてきたか、7つ紹介します。


【投資1】ノイズキャンセリングイヤホン — Apple AirPods Pro 2

投資額:約39,800円

これは聴覚過敏当事者にとっての「お守り」と言っても過言ではありません。

AirPods Pro 2のノイズキャンセリング機能は、私の人生を変えました。大げさじゃなく、本当に。

良かった点:

  • 電車の中でも「自分だけの静寂」を作れる
  • 突発音(咳払い、くしゃみ)が軽減される
  • 外部音取り込みモードで、必要な音だけ聞ける

正直なデメリット:

  • 完全な無音にはならない(期待しすぎ注意)
  • 長時間つけていると耳が痛くなることがある
  • 充電を忘れると地獄(これ重要)

私の使い方のコツは、「ノイキャン+ホワイトノイズ」の組み合わせです。完全無音よりも、一定の「サーッ」という音を流した方が、脳が楽になることがあります。

Spotifyで「Brown Noise」と検索してみてください。私のお気に入りです。


【投資2】住居選び — 防音性能を最優先に

投資額:家賃月額+2万円(防音性能のため)

これ、声を大にして言いたい。

聴覚過敏がある人は、住居の防音性能に絶対にお金をかけてください。

私は以前、家賃の安さだけで木造アパートを選んで大失敗しました。隣の部屋のテレビの音、上の階の足音、外の車の音……。家にいるのに休まらない。「帰りたくない家」に毎月お金を払っている虚しさ。

現在は、以下の条件で物件を選んでいます:

物件選びのチェックリスト:

  • □ 鉄筋コンクリート造(RC造)であること
  • □ 角部屋であること(隣接する部屋を減らす)
  • □ 幹線道路から離れていること
  • □ 小学校・保育園から離れていること
  • □ 二重サッシであること

「そんな条件、家賃高くなるじゃん」

その通りです。でも、毎日の「休息の質」が上がることを考えれば、安い投資だと私は思っています。

睡眠不足は判断力を鈍らせ、仕事のパフォーマンスを下げ、結果的に収入に影響します。「静かな家」への投資は、間接的に「稼ぐ力」への投資でもあるんです。


【投資3】照明のLED化 — 蛍光灯を全廃

投資額:約15,000円(LED電球・間接照明)

「音」の話をしていたのに、なぜ照明?

実は、蛍光灯って音を出しているんです。「ジーッ」「チカチカ」という、あの独特のノイズ。普通の人には聞こえないレベルの音が、聴覚過敏の人には「騒音」として認識されることがあります。

私は自宅の蛍光灯を全てLEDに交換しました。

おすすめの照明:

  • Philips Hue(約8,000円〜):スマホで調光・調色可能
  • IKEA TRÅDFRI(約3,000円〜):コスパ最強
  • 間接照明:天井直付けより壁を照らす方がリラックスできる

蛍光灯をLEDに変えた日の夜、私は泣きました。

「こんなに静かだったのか、うちの部屋……」

自分がどれだけ蛍光灯の音にストレスを感じていたか、なくなって初めて気づいたんです。


【投資4】無香料・無臭の生活用品

投資額:月額+1,000円程度

「あれ、今度は匂いの話?」

はい。聴覚過敏と嗅覚過敏は、併発することが多いんです。感覚過敏は「一点集中型」ではなく、複数の感覚にまたがることが珍しくありません。

私も音だけでなく、強い匂いが苦手です。特に人工的な香料。

無香料に切り替えたもの:

  • 洗濯洗剤 → 無添加せっけん(シャボン玉石けんなど)
  • 柔軟剤 → 使わない
  • ボディソープ → キュレル 泡ボディウォッシュ
  • 部屋の消臭 → 重曹を置くだけ

「香り付き柔軟剤」のCMを見るたびに、私は少し悲しくなります。あれ、本当に気持ち悪くなるんですよ。電車で隣に座った人の服から香る柔軟剤の匂いで、吐き気がすることもあります。

でも、これって言いづらいんですよね。「あなたの服、臭いです」なんて言えないじゃないですか。

だから、せめて自分の生活空間だけは「無臭」にする。これが私の対処法です。


【投資5】耳栓のストック — 種類別に使い分け

投資額:年間約5,000円

ノイズキャンセリングイヤホンは素晴らしいですが、充電切れのリスクがあります。また、就寝時にイヤホンをつけたまま寝るのは、耳の健康的にも気になりますよね。

そこで、アナログな耳栓も常備しています。

シーン別おすすめ耳栓:

シーンおすすめ商品価格帯
就寝用MOLDEX メテオ約500円/10ペア
外出用Loop Experience約3,500円
緊急用100均の耳栓約100円

特にLoop Experienceは、音楽用に開発された耳栓で、音量を下げながらも音質は保つという優れもの。会話は聞こえるけど、うるさくない。飲み会に行くときの必需品です(あまり行きませんが)。

私の失敗談: 以前、耳栓を忘れて結婚式の披露宴に参加したことがあります。あの拍手と歓声と音楽のコンボ……途中で気分が悪くなり、トイレに逃げ込みました。それ以来、かばんに常に耳栓を3種類入れています

【投資6】リモートワーク環境への投資

投資額:約100,000円(デスク・椅子・モニターなど)

コロナ禍で広まったリモートワーク。これは聴覚過敏の当事者にとって、革命的な環境変化でした。

オフィスの雑音から解放される。自分でコントロールできる環境で働ける。これがどれだけありがたいことか。

私は、リモートワークを続けるために、転職も辞さない覚悟でいました。幸い、現在の職場はリモートワークを継続してくれていますが、今後も**「静かに働ける環境」を最優先**に仕事を選んでいくつもりです。

在宅ワーク環境で投資したもの:

電動昇降デスク(FlexiSpot):約50,000円
オフィスチェア(エルゴヒューマン):約140,000円(中古で約80,000円で購入)
外部モニター(27インチ):約30,000円
防音パーティション:約15,000円
デスクライト(LED・調光機能付き):約5,000円
正直なデメリット:

初期投資が高い
家族がいると、完全な静寂は難しい
運動不足になりがち
特に子供がいる家庭でのリモートワークは、なかなか大変です。我が家では、妻と「仕事中は書斎に入らないルール」を決めています。子供がまだ小さいので、完璧にはいきませんが、ルールがあるだけで心理的な安心感が違います。

【投資7】「逃げ場所」への投資 — コワーキングスペース会員

投資額:月額約15,000円

「家でもダメ、オフィスでもダメ」

そんな日が、どうしてもあります。

家族の生活音がきつい日。近所で工事が始まった日。自分のコンディションが悪い日。

そういうときのために、第三の居場所を確保しています。

私が契約しているのは、個室型のコワーキングスペース。月額約15,000円は安くありませんが、「いざというときの逃げ場所がある」という安心感は、お金では買えない価値があります。

コワーキングスペースを選ぶポイント:

  • 個室ブースがあること
  • BGMが静か(または無音)であること
  • 24時間利用可能だと、なお良し
  • 自宅から30分以内のアクセス

「月15,000円もったいない」と思う人もいるでしょう。でも、私にとってこれはメンタルヘルスへの投資です。精神的に追い詰められてから心療内科に通うよりも、よっぽど安上がりです。


「できない自分」を受け入れたら、お金の使い方が変わった

ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。

「そんなにお金かけられないよ」 「贅沢な悩みだな」

わかります。私も昔はそう思っていました。

27歳で診断を受けるまで、私は「普通になろう」と必死でした。

みんなが平気な音に耐えられない自分は、弱い。 みんなができる計算ができない自分は、劣っている。 だから、もっと頑張らなきゃ。我慢しなきゃ。

そうやって、自分を責め続けてきました

でも、違ったんです。

私は「弱い」んじゃない。「違う」だけ

走るのが得意な人と、泳ぐのが得意な人がいるように、感覚の処理の仕方も人それぞれ。私はたまたま、音の処理が苦手なタイプの脳を持って生まれた。それだけのことでした。


「我慢」をやめたら、貯金が増えた話

面白いことに、自分の特性を受け入れてからの方が、お金が貯まるようになりました

なぜか?

無駄な「普通になるための出費」がなくなったからです。

以前の私は、こんなお金の使い方をしていました:

  • 飲み会に無理して参加 → 疲労で翌日ダウン → 回復のためにマッサージや栄養ドリンク
  • 賑やかなカフェで勉強しようとする → 集中できない → 自己嫌悪 → ストレス発散で衝動買い
  • 「みんなが良いと言うもの」を買う → 自分には合わない → また買い直し

「普通」に合わせようとして、かえってお金を浪費していたんです。

今は違います。

  • 飲み会は断る → 浮いたお金と時間を投資に回す
  • 静かな環境に投資する → 集中できる → 仕事の成果が上がる → 収入アップ
  • 「自分に合うもの」を最初から選ぶ → 買い直しがなくなる

「できない自分」を受け入れることは、「自分に最適化された人生」を設計することの第一歩だったんです。


聴覚過敏とHSP、何が違う?

少しマニアックな話をさせてください。

最近、「HSP(Highly Sensitive Person:とても敏感な人)」という言葉をよく聞くようになりました。「繊細さん」なんて呼ばれ方もしますね。

聴覚過敏とHSP、似ているようで実は異なる概念です。

聴覚過敏(医学的概念):

  • 特定の音に対する神経学的な過敏反応
  • 診断基準がある(ただし、聴覚過敏単独での診断名はなく、ASDなどの特性として扱われることが多い)
  • 治療やサポートの対象になりうる

HSP(心理学的概念):

  • 環境からの刺激に敏感に反応する気質
  • エレイン・アーロン博士が提唱した概念
  • 診断名ではなく、気質の傾向を表す言葉
  • 人口の約15〜20%が該当するとされる

重要なポイント: HSPは「病気」でも「障がい」でもなく、生まれ持った気質です。一方、ASDに伴う聴覚過敏は、脳の情報処理の違いに起因するもので、日常生活に支障をきたすレベルであれば、支援や配慮の対象になります。

「私、HSPかも」と思っている方の中に、実は未診断のASD当事者がいる可能性もあります。もし生活に支障が出ているなら、一度専門家に相談してみることをおすすめします。

私は27歳まで「自分は繊細なタイプなんだな」と思っていましたが、診断を受けて初めて「配慮を求めていい」「支援を受けていい」という選択肢があることを知りました。

「知る」ことで、人生は変わります。


【海外事例】アメリカの「センサリー・フレンドリー」という考え方

ここでしか読めない情報を一つ。

アメリカやイギリスでは、「Sensory Friendly(センサリー・フレンドリー)」という概念が広まりつつあります。

これは、感覚過敏を持つ人にも優しい環境設計のこと。

具体的な取り組み例:

場所取り組み内容
映画館「センサリー・フレンドリー上映」として、音量を下げ、照明をやや明るくした上映回を設ける
小売店特定の時間帯にBGMを消し、照明を落とす「クワイエットアワー」を実施
空港感覚過敏の旅行者向けの静かな待合室を設置
遊園地行列を避けられるパスや、静かな休憩スペースを提供

イギリスの大手スーパー「モリソンズ」は、毎週土曜日の朝に「Quieter Hour(静かな時間)」を実施しています。この時間帯は、店内放送なし、BGMなし、照明も控えめ。レジの「ピッ」という音も最小限にするそうです。

日本でもこうした取り組みが広まることを、切に願っています。

もし、この記事を読んでいる小売業やサービス業の方がいらっしゃったら、ぜひ検討してみてください。感覚過敏の人だけでなく、高齢者や体調不良の人にも喜ばれるはずです。


まとめ:「静寂」は贅沢品じゃない。生きるための必需品だ

長くなりましたが、最後にまとめます。

この記事で伝えたかったこと:

  1. 聴覚過敏は「我慢」で解決する問題じゃない
    • 根性論ではどうにもならない。脳の特性だから。
  2. 「静寂」への投資は、生活の質を根本から変える
    • ノイズキャンセリングイヤホン、防音性の高い住居、LED照明など、お金をかける価値がある。
  3. 「できない自分」を受け入れることで、お金の使い方が最適化される
    • 「普通になろう」とする無駄な出費が減り、本当に必要なことにお金を使えるようになる。
  4. 「助けを求めていい」「配慮を求めていい」
    • 診断を受けることで、選択肢が広がる。

最後に、同じように苦しんでいる方へ。

あなたが「音がうるさい」「匂いがきつい」「光が眩しい」と感じるのは、あなたが弱いからじゃありません

あなたの脳が、そういう風にできているだけです。

そして、それは悪いことじゃない

違う感覚を持っているからこそ、見える世界がある。気づけることがある。

私は38歳になった今、ようやくそう思えるようになりました。

「普通」になれなくても、大丈夫。

「あなた」として生きていけば、それでいい。

このブログが、あなたの「暮らしの攻略本」になれたら、こんなに嬉しいことはありません。


最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

不器用な私ですが、これからも少しずつ、このブログを更新していきます。

どうぞ、ゆっくりしていってくださいね。

りゅうぞう


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