その日、我が家のトイレは要塞になった

「ねえ、なんでトイレットペーパーが玄関に収まりきらないの?」

妻の声が、今でも脳裏に響きます。

私が注文したのは「12ロール」のはずでした。いつも買っている、ごく普通の量です。でも届いたのは、なぜか「120ロール」。ダンボール4箱分のトイレットペーパーが、玄関を完全に占拠していました。

これが、SLD(限局性学習症)を持つ私の「あるある」です。

結論から言うと、この失敗は笑い話になりました。 そして今では、こうした「桁間違い」を防ぐためのツールや工夫を見つけ、同じような特性を持つ方々にシェアしています。

この記事では、SLDによる計算困難の「リアル」と、それを笑いに変えながら乗り越える方法をお伝えします。あなたが当事者でも、支援者でも、ご家族でも、きっと何かのヒントになるはずです。


1:SLDの「計算困難」って、具体的にどんな感じ?

暗算が「霧の中」になる感覚

まず、私の特性についてお話しさせてください。

SLD(限局性学習症)とは、知的能力には問題がないのに、読み・書き・計算など特定の学習領域に著しい困難がある状態を指します。私の場合、特に「計算」と「書字」に困難があります。

具体的にどんな感じかというと:

私の「計算困難」の実態:

  • 暗算をしようとすると、数字が頭の中でバラバラになる
  • 「12」と「120」、「1,000」と「10,000」の区別が一瞬でできない
  • 電卓を使っても、入力する数字自体を間違える
  • レジで「1,080円です」と言われて、財布を見つめたまま固まる

これ、怠けているわけでも、努力が足りないわけでもないんです。脳の情報処理の仕方が、多くの人とは違うだけ。

でも、27歳で診断されるまでの私は、「自分は頭が悪いんだ」「なんでこんな簡単なこともできないんだ」 と、ずっと自分を責めていました。

トイレットペーパー事件の真相

あの日、私はスマホでネットショッピングをしていました。

「12ロール入り」をカートに入れたつもりが、実際にカートに入っていたのは「12ロール×10パック=120ロール」でした。

なぜ間違えたか? 画面の「数量:10」という表示を、完全にスルーしていたんです。私の脳は、「12ロール」という数字に集中するあまり、他の数字を認識できていなかった。

さらに、合計金額が表示されていたはずなのに、その数字も「いつもと同じくらいかな」と、なんとなくで判断してしまいました。

これがSLDの「あるある」です。

数字を見ているのに、見ていない。確認しているのに、確認できていない。本人は「ちゃんとやった」つもりなのに、結果が全然違う。


2:笑いに変える力——「失敗」を「ネタ」に昇華する方法

最初は泣いた。でも今は笑える

正直に言うと、トイレットペーパー事件の直後は、自分が情けなくて泣きそうでした。

「また間違えた」「なんで自分はこうなんだ」「妻に迷惑をかけた」

でも、その時の妻の反応が、私を救ってくれました。

「まあ、トイレットペーパーなら腐らないし、3年は買わなくていいね」

そう言って、笑ってくれたんです。

この瞬間、私の中で何かが変わりました。「失敗」は「ネタ」になる。 深刻に捉えすぎなくていい。

失敗を笑いに変える3つのステップ

私が実践している、失敗との向き合い方を共有します。

ステップ1:まず、自分を責めない時間を作る

失敗した直後は、感情が荒れます。まずは深呼吸。「あ、またやっちゃった」と、客観的に認識するだけでOK。

ステップ2:「物語」として捉え直す

「トイレットペーパー120ロール届いた話」は、飲み会で鉄板ネタになります。失敗を「自分を責める材料」ではなく、「誰かを笑顔にする物語」として再定義するんです。

ステップ3:次の対策を考える

笑った後は、冷静に対策を考える。ここが大切です。笑って終わりじゃなく、「じゃあ次はどうする?」 という思考に切り替える。


3:桁間違いを防ぐテクノロジーと具体的な対策

私が実際に使っているツール

失敗から学び、今では様々なツールを活用しています。

【おすすめツール1】音声読み上げ機能

スマホやPCには、画面の内容を音声で読み上げてくれる機能があります。

  • iPhoneの場合: 設定 → アクセシビリティ → 読み上げコンテンツ
  • Androidの場合: 設定 → ユーザー補助 → テキスト読み上げ

注文前に、金額や数量を音声で聞くことで、視覚だけでは見落としがちな数字を確認できます。

【おすすめツール2】電卓アプリ「計算機プラス」(無料)

入力した計算式がそのまま表示されるタイプの電卓アプリです。「何を計算したか」が視覚的にわかるので、入力ミスに気づきやすい。

【おすすめツール3】Excelやスプレッドシート

買い物リストを作る時、私はスプレッドシートを使います。

商品名単価個数小計
トイレットペーパー500円1=B2*C2

こうすることで、数式が自動計算してくれるので、暗算の必要がなくなります。

妻との「ダブルチェック制度」

ツールだけでなく、人の力も借りています。

我が家では、3,000円以上のネット注文は、必ず妻にも画面を見せてから購入ボタンを押すというルールがあります。

最初は「いちいち確認してもらうのが恥ずかしい」と思っていました。でも今は、これが当たり前の「我が家の仕組み」になっています。

恥ずかしさよりも、大量のトイレットペーパーに埋もれる方がよっぽど困る。

【デメリットも正直に】ツールの限界

ここで正直にお伝えしますが、ツールは万能ではありません。

  • 音声読み上げは、騒がしい場所では使いにくい
  • 電卓アプリも、そもそも入力を間違えたら意味がない
  • スプレッドシートは、作成自体が面倒な時がある

結局、「100%間違えない」状態を目指すのは非現実的です。大切なのは、「間違えても大きなダメージにならない仕組み」を作ること。



まとめ:完璧じゃなくていい。笑って、工夫して、生きていこう

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

最後に、お伝えしたいことがあります。

私は今も、間違えます。

数字を見間違える。入力をミスする。「またやっちゃった」と思う日もある。

でも、それでいいんです。

失敗したら、まず笑う。 次に、対策を考える。 そして、自分を責めすぎない。

この3つを繰り返しながら、私は38歳になりました。妻がいて、子どもがいて、トイレットペーパーに困らない家に住んでいます(笑)。

もしあなたが、かつての私のように「なんで自分はこうなんだ」と苦しんでいるなら、伝えたい。

あなたは、一人じゃない。

同じように桁を間違えて、同じように失敗して、それでも笑いながら生きている仲間が、ここにいます。

完璧じゃなくても、大丈夫。工夫すれば、道は開ける。

これからも、このブログで「失敗談」と「工夫」をシェアしていきます。どうぞ、ゆっくりしていってください。