家事代行サービスを使ってみた:ASD当事者が「他人が家に入る恐怖」を乗り越えるまで

「家に他人を入れる」という最大のハードル
結論から言います。家事代行サービスを使い始めて、私の生活の質は劇的に上がりました。
でも、ここに至るまでには相当な葛藤がありました。
はじめまして、りゅうぞうです。38歳、妻と子供の3人家族。自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)を持って生活しています。
「家事代行?便利そうだけど、うちには無理だな」
そう思っている方、めちゃくちゃ気持ちわかります。
特にASD当事者の方なら、こんな不安が頭をよぎりませんか?
- 知らない人が自分のテリトリーに入ってくる恐怖
- 物の配置を変えられたらパニックになりそう
- 何をどう頼めばいいのかわからない
- 「自分でやれ」と思われそうで怖い
全部、私も感じていました。正直、最初の予約ボタンを押すまでに3ヶ月かかりました。
でも今は、月2回の家事代行が我が家の「生活インフラ」になっています。
この記事では、ASD当事者の視点から、家事代行サービスを使うまでの心の葛藤、実際に使ってみて感じたこと、そして「口頭が苦手な私がどうやって指示を出したか」を包み隠さずお話しします。
1:なぜ「家事代行」に3ヶ月も悩んだのか?ASD的な3つの壁
壁①:「他人が家に入る」という感覚過敏の問題
ASDの特性として、自分のテリトリーへの侵入に対する過敏さがあります。
私の場合、家は「完全に気を抜ける唯一の場所」でした。そこに知らない人が入ってくるということは、安全地帯が侵されるような感覚。
具体的には、こんな不安がありました。
- 他人の匂いが家に残るのが嫌だ
- 自分の物を触られるのが耐えられない
- 「見られている」という感覚でリラックスできない
- 作業中、どこにいればいいのかわからない
これは「わがまま」ではなく、神経系の反応なんです。でも、当時の私はそれを「自分の器が小さいせい」だと責めていました。
壁②:「自分のルール」を他人に伝える難しさ
ASD当事者の多くは、自分なりの「ルール」を持っています。
私の場合は:
- 食器は左から大きい順に並べたい
- タオルは三つ折り、絶対に四つ折りにしないでほしい
- 掃除機は部屋の右上の角からスタートしてほしい
…書いていて自分でも「細かいな」と思います(笑)
でもこれ、変えられると本当にストレスなんですよね。かといって、これを初対面の人に伝える勇気もない。
「こんな細かいこと言ったら嫌われる」
この恐怖が、3ヶ月間ずっと私を縛っていました。
壁③:「苦手をお金で解決する」罪悪感
これが一番大きかった壁かもしれません。
「家事くらい自分でやれ」 「お金で解決なんて甘えだ」 「妻に申し訳ない」
こんな声が、頭の中でずっと響いていました。
でもね、冷静に考えてみたんです。
私は計算が極端に苦手(SLDの影響で暗算がほぼできない)なのに、株式投資で3,400万円の資産を築けています。それはなぜか?
「苦手な計算は、ツールや専門家に任せた」からです。
家計簿アプリ、証券会社の自動計算機能、税理士さんへの相談。全部「外注」してきました。
なのに、なぜ家事だけは「自分でやらなきゃ」と思い込んでいたのか?
この気づきが、私の背中を押してくれました。
2:実際に使ったサービスと、ASD的「指示出しメソッド」
私が選んだ家事代行サービス
いくつかのサービスを比較検討した結果、私は「タスカジ」と「CaSy(カジー)」を試しました。
【タスカジ】
- 料金:1時間あたり約1,500円〜(2025年現在)
- 特徴:個人のハウスキーパーさんを直接マッチング
- 良かった点:同じ人に継続して頼める、相性を選べる
【CaSy(カジー)】
- 料金:1時間あたり約2,900円〜
- 特徴:会社がスタッフを派遣、品質管理がしっかり
- 良かった点:初心者でも使いやすい、アプリが直感的
最終的に、私はタスカジを継続利用しています。理由は「同じ人に頼み続けられる」こと。ASD的には、毎回違う人が来るストレスは想像以上に大きいんです。
口頭が苦手な私の「写真+メモ」作戦
ここからが本記事の核心です。
私は口頭での指示が極端に苦手です。
理由は主に3つ。
- 言葉がとっさに出てこない
- 相手の反応を見ながら話すと頭が真っ白になる
- 「伝わっているか不安」で何度も同じことを言ってしまう
そこで編み出したのが、「写真+メモ」作戦です。
【具体的なやり方】
ステップ1:事前に「お願いしたいこと」を紙に書き出す
【今日お願いしたいこと】
□ キッチンのシンク周り掃除
□ 洗面台の水垢取り
□ 掃除機がけ(リビング・寝室)
□ トイレ掃除ステップ2:「やり方のこだわり」がある部分は写真を撮っておく
例えば、私は食器の並べ方にこだわりがあるので、「理想の状態」を写真に撮っておきました。
「この通りにしていただけると嬉しいです」と写真を見せるだけ。口で説明するより100倍楽でした。
ステップ3:最初の数回は「確認ポイント」を設ける
「途中で一度見せていただいてもいいですか?」とお願いしておくと、完成後に「違う!」となるストレスを防げます。
ステップ4:終了後に「フィードバック」をメモで渡す
口頭で「ここがちょっと…」と言うのは難しいので、私は毎回メモを渡しています。
【今日のありがとう&お願い】
・シンク、ピカピカでした!ありがとうございます
・タオルは三つ折りでお願いできると嬉しいです
・次回もよろしくお願いしますポイントは「ありがとう」を先に書くこと。これで相手も受け取りやすくなります。
【中級者向けコラム】ASD×家事代行、上級テクニック
ここからは、家事代行を使い慣れてきた方向けの「マニアックなコツ」です。
① 「来客モード」を作っておく
私は家事代行の日を「来客モード」と名付けて、事前に自分のメンタルを切り替えています。
具体的には:
- 前日から「明日は人が来る日」と意識する
- 当日朝は少し早起きして、自分の心の準備をする
- 作業中は別室でイヤホンをして、自分の世界に入る
② 「立ち会いなし」という選択肢
信頼関係ができてきたら、「立ち会いなし」も検討できます。鍵の受け渡し方法を決めて、自分は外出する。これができるようになると、精神的負担は劇的に減ります。
③ 家族への「根回し」も重要
妻には事前に「自分の特性上、これが必要なんだ」と説明しました。最初は「贅沢じゃない?」と言われましたが、私のストレスが減って家庭が穏やかになったことで、今では妻も大賛成です。
3:家事代行のメリット・デメリット(正直レビュー)
メリット:予想以上だった5つの変化
1. 「やらなきゃ」から解放された
ASD当事者にとって、「やらなきゃいけないのにできない」タスクが溜まっている状態は、想像以上のストレスです。家事代行を入れることで、「最低限、月2回はリセットされる」という安心感が生まれました。
2. 夫婦喧嘩が減った
「なんで掃除してないの?」「あなたもやってよ」。こういう会話が激減しました。第三者に任せることで、家事の分担バトルから解放されたんです。
3. 「できない自分」を責めなくなった
「お金を払ってプロに頼んでいる」という事実が、自分を責める気持ちを和らげてくれました。これは予想外の効果でした。
4. 時間が生まれた
月2回×3時間=6時間。この時間を、子供と遊んだり、ブログを書いたり、自分の好きなことに使えています。
5. 「プロの技」に感動
正直、自分でやるより圧倒的に綺麗。水回りの掃除なんて、自分でやったことないレベルの輝きになります(笑)
デメリット:正直に言います
1. 費用はかかる
月2回で約1万円〜1万5,000円。年間で約12万〜18万円。決して安くはありません。
ただ、私は「自分の精神的健康への投資」と考えています。心療内科に通うより安いかもしれません。
2. 相性の問題がある
最初に来てくれた方とは、正直合いませんでした。物の配置をかなり変えられて、その夜はパニック気味に。
でも、タスカジでは「次回から別の方を指名」できるので、3人目でようやく「この人だ!」という方に出会えました。
3. 毎回の「人を迎える準備」が必要
「掃除してもらうために掃除する」という本末転倒な状況になることも(笑)。私は「見られたくないものを一つの箱にまとめる」というルールを作って対処しています。
まとめ:「苦手をお金で解決する」のは、甘えじゃない
最後に、かつての私と同じように悩んでいる方へ。
「できないことを、できる人に頼む」
これは甘えでも逃げでもありません。生きるための戦略です。
私は計算が苦手だけど、資産3,400万円を築けました。 それは「苦手な計算」を無理にやらず、ツールや人に頼ったから。
家事も同じです。
「他人が家に入るのが怖い」という気持ち、よくわかります。 「こんな細かいこと言えない」という不安、痛いほどわかります。
でも、一歩踏み出してみたら、そこには「自分らしく生きるための余白」が待っていました。
無理に乗り越えなくていい。 写真とメモで伝えればいい。 合わなければ変えればいい。
あなたには、楽になる権利があります。
不器用な私ですが、このブログが少しでもあなたの「攻略本」になれたら嬉しいです。
どうぞ、ゆっくりしていってください。







