「障害」と「資産」は誰にどこまで話す?—友人や親戚との付き合いにおける情報の開示基準

その質問、私も100回以上悩みました
「ねえ、なんで普通に働けないの?」 「そういえば、投資とかやってるの?儲かってる?」
親戚の集まりや友人との飲み会で、こんな質問を受けたことはありませんか?
私は38歳、ASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持つ当事者です。そして同時に、コツコツと積み上げてきた資産が3,400万円ほどあります。そのうち約90%が株式投資です。
「障害のこと、どこまで話せばいいんだろう」 「資産のこと、黙っておくべきかな」
この2つの悩み、実は根っこは同じなんです。
結論から言います。「全員に全部話す必要はない」
今日は、私が10年以上かけて見つけた「情報開示の基準」をお伝えします。失敗談も成功談も、全部さらけ出しますね。
なぜ「話すか話さないか」で悩むのか?—私の経験から
27歳で診断を受けた日のこと
私が自分の障害を知ったのは27歳のとき。それまでの人生は、まさに暗闘の連続でした。
- 空気が読めなくて、場を凍らせる
- 暗算ができなくて、レジで固まる
- 急な予定変更でパニックになる
「なんで俺だけこんなにダメなんだろう」
そう思い続けた20数年間。診断名がついた瞬間、ショックよりも**「ああ、やっと理由がわかった」という安堵感**が押し寄せてきました。
「話したい」と「話したくない」の間で揺れる日々
診断を受けてから、新しい悩みが生まれました。
「この障害のこと、誰に話せばいいんだろう?」
- 親には心配かけたくない
- 友人には変な目で見られたくない
- 職場では不利になるかもしれない
結局、最初の2年間はほぼ誰にも言えませんでした。これが後々、自分の首を絞めることになります。
情報開示で大失敗した話—3つの実体験
失敗① 親戚の集まりで「全部話し」てしまった
お正月の親戚の集まり。お酒の勢いもあって、私はつい障害のことを全員の前で話してしまいました。
「実は俺、発達障害があってさ…」
場が凍りました。
その後どうなったか?
- おばさんA:「あら、でも普通に見えるわよ?」(悪気なし)
- おじさんB:「気の持ちようじゃないの?」(悪気あり)
- いとこC:「…」(困惑)
理解されないどころか、余計な詮索と偏見を招いただけでした。
帰りの車の中で、妻に言われた言葉が今も忘れられません。
「りゅうぞう、あの場で言う必要あった?」
失敗② 友人に資産額を正直に話した結果
仲が良いと思っていた友人に、投資の話をしたことがあります。
「最近、株で結構増えてきてさ。3,000万超えたんだよね」
その瞬間、友人の目の色が変わりました。
その後の変化:
- お金の相談が増えた(貸してほしいという匂わせ)
- なぜか距離を置かれるようになった
- 「あいつ、意外と計算高い」と陰で言われていた
計算が苦手な私が「計算高い」と言われる皮肉。
お金の話は、たとえ親しい間柄でも「額」まで言う必要はなかったんです。
失敗③ 職場で「配慮をお願いします」と言いすぎた
障害者雇用ではなく、一般雇用で働いていた時期があります。
診断書を持って上司に相談しました。
「計算業務は苦手なので、配慮いただけますか」 「急な予定変更は事前に教えてもらえると助かります」
最初は理解してもらえました。
でも、次第に「あいつは特別扱いされている」という空気が職場に漂い始めました。同僚からの視線が痛い。結局、その会社は1年で辞めました。
問題は「伝え方」と「伝える相手の選び方」だったんです。
情報開示の「4段階フレームワーク」—これで失敗が激減した
失敗を重ねた私が、10年かけてたどり着いた情報開示の基準を紹介します。
【レベル1】誰にでも話せる情報(オープン)
これは、初対面でも話せるレベルの情報です。
- 「ちょっと数字が苦手なんですよ」
- 「急な変更は苦手で…」
障害名は出さず、「特性」として伝えるのがポイント。
誰でも苦手なことはありますよね。「私は○○が苦手」という言い方なら、相手も受け入れやすいんです。
【レベル2】ある程度信頼できる人に話す情報(セミオープン)
数回会って、信頼関係ができてきた相手向けです。
- 「実は発達障害の診断を受けていて」
- 「だから○○の場面では困ることがあるんです」
具体的な困りごとと、自分なりの対処法をセットで伝えると、相手も「じゃあこうすればいいのか」と理解しやすくなります。
【レベル3】深い信頼関係がある人に話す情報(クローズド寄り)
家族、親友、長年の付き合いがある人向けです。
- 障害の詳細な症状
- 過去のつらい経験
- 資産額や収入の具体的な数字
ここまで話せる相手は、人生で数人いれば十分です。私の場合、妻と、娘1人だけです。
【レベル4】誰にも話さない情報(シークレット)
- 詳細な資産配分(どの銘柄をいくら持っているか等)
- 過去のトラウマの具体的内容
これは「話さない」のではなく「話す必要がない」情報です。
「計算が苦手」なのに3,400万円貯められた理由
ここで少しマニアックな話をさせてください。
私はSLDの影響で、暗算がほぼできません。スーパーで1,000円札を出すか5,000円札を出すかすら、一瞬迷います。
でも、資産形成では困っていません。
なぜか?
「計算しなくていい仕組み」を作ったからです。
私の資産形成3つのルール
- 給料が入ったら自動で投資口座に移動(手動計算ゼロ)
- インデックス投資のみ(個別株の分析不要)
- アプリで資産を「見る」だけ(計算はアプリがやってくれる)
使っているのは、楽天証券とマネーフォワードです。
計算が苦手なら、計算しなくていい環境を作ればいい。
これ、障害との付き合い方にも言えることなんです。苦手なことを克服するより、苦手なことを「しなくていい仕組み」を作る方がずっと楽です。
具体的なシーン別・開示のコツ
ケース1:親戚の集まり
基本方針:レベル1で十分
「最近どうなの?仕事は?」と聞かれたら——
❌「発達障害があって、普通の仕事は難しくて…」 ⭕「自分のペースで働ける仕事を見つけて、楽しくやってますよ」
**聞かれていないことは答えない。**これ、ASDの私には難しいんですが、意識して練習しました。
ケース2:友人との食事
基本方針:相手の反応を見ながらレベル2まで
投資の話題が出たら——
❌「3,000万以上あるよ」 ⭕「インデックス投資を少しずつ続けてるよ。おすすめだよ」
具体的な金額は言わない。「やってる」「続けてる」程度でOKです。
ケース3:職場の同僚
基本方針:レベル1、必要に応じてレベル2
- 「メモを取らせてもらっていいですか?聞き逃しやすいので」
- 「予定変更があれば、早めに教えていただけると助かります」
「障害」という言葉を使わなくても、配慮をお願いすることはできます。
ケース4:恋人・配偶者
基本方針:レベル3まで段階的に
私が妻に全てを話したのは、付き合って1年経った頃でした。
最初はレベル1から始めて、少しずつ深い話をしていきました。
一気に全部話すと、相手の処理能力を超えてしまいます。段階的に、相手の受け止め方を見ながら進めるのがコツです。
「話さない」という選択も、自分を守る立派な戦略
「嘘をつく」と「話さない」は違う
よく誤解されるんですが、情報を開示しないことは、嘘をつくこととは違います。
- 嘘:「障害なんてないよ」(事実と異なることを言う)
- 非開示:「うーん、まあいろいろあるよね」(事実を言わない)
非開示は、自分を守るための正当な選択肢です。
私が「話さない」と決めている相手
- 初対面の人
- 噂話が好きな人
- 過去に私の情報を他者に漏らした人
- マウントを取ってくる人
信頼できない相手に、大切な情報を渡す必要はありません。
【海外事例】アメリカの「ディスクロージャー戦略」
少しだけ海外の事例も紹介します。
アメリカでは、障害者の就労支援において「ディスクロージャー(情報開示)戦略」という考え方が広く使われています。
JAN(Job Accommodation Network)という機関では、「いつ・誰に・どこまで話すか」を当事者自身が決めるためのワークシートを提供しています。
ポイントは——
- 開示のメリット・デメリットを書き出す
- 相手ごとに伝える内容を変える
- 開示後のフォローアップ計画を立てる
日本でも、この考え方はもっと広まってほしいと思っています。
まとめ:あなたの情報は、あなたのもの
長くなりましたが、最後に伝えたいことがあります。
あなたの障害のこと、あなたの資産のこと——それは100%あなたの情報です。
誰に、いつ、どこまで話すかは、あなたが決めていいんです。
「話さなきゃいけない」という義務感も、「話しちゃダメ」という禁止も、どちらも必要ありません。
私が10年かけて学んだのは、こういうことでした。
- 信頼は段階的に築くもの
- 情報開示も段階的でいい
- 「話さない」も立派な選択
同じように悩んでいるあなたへ。
無理に話さなくていい。でも、信頼できる人には、少しずつ話してみてもいい。
あなたのペースで、あなたの言葉で。
それでいいんです。
今日の「暮らしの攻略」ポイント
- 情報開示は4段階に分けて考える
- 相手との信頼度に応じてレベルを変える
- 具体的な金額・詳細な症状は、限られた人にだけ
- 「話さない」は嘘ではなく、自己防衛
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
不器用な私ですが、これからもゆっくり、このブログで日常を綴っていきます。
また遊びに来てくださいね。
りゅうぞう








