「自分で決められなくなる日」が怖い

「あなたの財産は、あなたが管理できなくなったら誰が守るの?」

この質問を突きつけられたとき、私は言葉を失いました。

はじめまして、りゅうぞうです。38歳、妻と子どもが一人ずついる、ごく普通の父親です。ただ一つ違うのは、私には自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)という2つの障がいがあること。特に計算と書字が壊滅的に苦手で、暗算なんて絶対無理。スーパーのレジで「187円です」と言われても、財布の中の小銭を組み合わせるのに5秒以上かかります。

それなのに、私は3400万円の資産を持っています。

「えっ、計算できないのにそんなに?」と思いましたか?正直、私も不思議です。でも、できないからこそ見つけた「仕組み化」と「テクノロジー」のおかげで、ここまで来られました。

ただ、最近ずっと頭から離れない不安があります。

「もし自分の判断能力が衰えたら、この資産はどうなるんだろう?」

成年後見制度という言葉を聞いたことがありますか?判断能力が不十分な人を法的に保護する制度ですが、実は「一度始まったら基本的にやめられない」「財産を自由に使えなくなる」という、当事者にとってはかなり怖い側面もあるんです。

この記事では、計算が苦手な資産家という少し変わった立場から、成年後見制度への正直な不安と、「自分で決められるうちに」やっておくべき対策をお話しします。


成年後見制度の「知られざる現実」

成年後見制度とは何か?(初心者向け解説)

まず、成年後見制度について簡単に説明させてください。

成年後見制度とは、認知症や知的障がい、精神障がいなどにより判断能力が不十分な方を、法的に保護・支援するための制度です。家庭裁判所が選んだ「後見人」が、本人の代わりに財産管理や契約などを行います。

一見、とても心強い制度に思えますよね。実際、悪質な訪問販売から守ってもらえたり、詐欺被害を防いでくれたりする面はあります。

でも、私はこの制度に対して複雑な感情を抱いています。

私が感じる3つの不安

1. 一度始めたら原則やめられない

成年後見制度は、本人の判断能力が回復しない限り、基本的に終了しません。つまり、一生続く可能性があるんです。これが私にとっては最大の恐怖でした。

2. 自分のお金なのに自由に使えない

後見人がつくと、大きな支出には後見人の同意が必要になります。例えば「子どもの教育費に100万円使いたい」と思っても、後見人が「必要ない」と判断すれば使えない可能性があるんです。

自分で築いた資産なのに、自分で使い道を決められない。

これって、すごく悲しいことだと思いませんか?

3. 後見人への報酬がかかり続ける

専門職(弁護士や司法書士など)が後見人になった場合、月額2〜6万円程度の報酬が発生します。年間で24〜72万円。これが一生続くと考えると、決して小さな金額ではありません。


法定後見と任意後見の決定的な違い

少しマニアックな話をしますね。

成年後見制度には「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。

項目法定後見任意後見
開始時期判断能力が低下してから判断能力があるうちに契約
後見人の選び方家庭裁判所が選ぶ自分で選べる
内容の自由度法律で決まっているある程度カスタマイズ可能
私の評価△ 怖い○ まだマシ

法定後見は、すでに判断能力が低下してから家族などが申し立てるもの。後見人は裁判所が決めるため、全く知らない弁護士が選ばれることもあります。

一方、任意後見は、まだ元気なうちに「この人に後見人になってほしい」と自分で契約しておくもの。判断能力が低下したときに効力が発生します。

私が注目しているのは、この任意後見です。ただし、これにも限界があって…(後述します)


計算が苦手な私が3400万円を築けた理由

「できない」を認めたら、お金が貯まり始めた

ここで少し、私の資産形成について話させてください。

正直に言います。私は家計簿をつけられません。

SLDの影響で、数字を見るだけで頭がクラクラします。暗算なんて夢のまた夢。学生時代のテストでは、計算問題だけ白紙で出したこともあります。

でも、だからこそ「仕組み化」に頼ることを覚えました。

私がやっている「計算しない」資産管理法

1. 給料日に自動で振り分ける

給与口座から、毎月決まった金額が自動的に以下に振り分けられるように設定しています。

  • 生活費口座:月の固定費+変動費
  • 証券口座:つみたて投資用
  • 予備費口座:急な出費用

私がやることは何もありません。 銀行の自動振替サービスを使えば、計算なしで「先取り貯蓄」ができます。

2. 投資は「インデックス投資」一択

個別株の分析なんて、私には絶対無理です。企業の決算書を読むなんて、数字のお化け屋敷に入るようなもの。

だから私は、全世界株式インデックスファンドをひたすら積み立てています。

インデックス投資とは、日経平均やS&P500などの指数(インデックス)に連動する投資信託を買う方法。個別企業の分析が不要で、世界経済全体の成長に乗っかれます。

計算不要。分析不要。私みたいな人間にピッタリなんです。

3. 支出管理はアプリに丸投げ

マネーフォワードMEというアプリを使っています。銀行口座やクレジットカードを連携させると、自動で支出を分類してくれます。

私がやることは、月に1回アプリを開いて「今月は使いすぎてないかな」とザッと眺めるだけ。細かい計算は全部アプリがやってくれます。

失敗談:計算を「頑張ろう」とした時代

恥ずかしい話ですが、20代の頃は「努力すればできるようになる」と信じて、無理やり家計簿をつけようとしていました。

結果は惨敗。

3日で挫折し、「やっぱり自分はダメなんだ」と落ち込む。この繰り返しでした。

27歳で診断を受けて、ようやく気づいたんです。

「できないことを頑張るより、できる方法を探したほうがいい」と。

それからは、テクノロジーを味方につけることに全力を注ぎました。そしたら、お金が自然と貯まり始めたんです。


「自分で決められるうちに」やっている5つの対策

成年後見制度に頼らないために

さて、本題に戻ります。

3400万円という資産を持つ以上、「判断能力が衰えた後のこと」を今から考えておく必要があります。でも、できれば成年後見制度のお世話にはなりたくない。

だから今、「自分で決められるうちに」できることを全力でやっています。

対策1:家族信託の検討

家族信託とは、信頼できる家族に財産の管理・処分を任せる契約です。成年後見制度と違い、裁判所が関与しないため、柔軟な資産管理が可能になります。

例えば、「私の判断能力が衰えたら、妻が私の株式を売却して生活費に充てていい」という契約を結んでおくことができます。

メリット:

  • 元気なうちに自分で内容を決められる
  • 家庭裁判所への報告義務がない
  • 財産の凍結を防げる

デメリット:

  • 初期費用がかかる(50〜100万円程度)
  • 信頼できる家族がいないと使えない
  • 身上監護(介護契約など)はカバーできない

現在、妻と一緒に専門家への相談を進めています。

対策2:財産目録の作成と共有

計算が苦手な私にとって、「自分がいくら持っているか」を把握するのは至難の業でした。

でも、万が一のとき家族が困らないように、Excelで財産目録を作成しています。

  • 銀行口座一覧(銀行名・支店名・口座番号)
  • 証券口座の内容(保有銘柄・大まかな評価額)
  • 保険の種類と証券番号
  • ログインに必要なID・パスワードのヒント

これを妻と共有し、一部Googleドライブで常に最新版を見られるようにしています。

計算は苦手でも、「情報を整理して共有する」ことはできる。これも一種の仕組み化です。

対策3:エンディングノートの活用

エンディングノートというと、なんだか縁起が悪いイメージがあるかもしれません。でも私は、これを「生きている間の意思表明ツール」として活用しています。

書いている内容は:

  • 延命治療についての希望
  • 葬儀の形式(家族葬でいい)
  • 子どもに伝えたいこと
  • 障がいについて、家族にどう理解してほしいか

特に最後の項目は、障がい当事者ならではかもしれません。「計算ができないのは怠けじゃなくて、脳の特性なんだよ」ということを、ちゃんと言葉で残しておきたいんです。

対策4:つみたてNISAと新NISAの活用

投資の話に戻りますが、新NISAを最大限活用しています。

新NISAは2024年から始まった制度で、投資で得た利益が非課税になります。年間360万円まで投資でき、生涯で1800万円まで非課税枠があります。

なぜこれが「資産を守る対策」になるのか?

税金がかからない=資産が目減りしにくいからです。

通常、株式の利益には約20%の税金がかかります。でもNISA口座なら0%。長期で考えると、この差は何百万円にもなります。

対策5:「助けて」と言える関係づくり

最後に、最も大切な対策をお話しします。

信頼できる人間関係を築くこと。

成年後見制度が必要になる状況を避けるには、日頃から周囲に「助けて」と言える環境を作っておくことが重要です。

私は長い間、「助けて」が言えませんでした。「障がいがあるから迷惑をかけている」という罪悪感が常にあったからです。

でも今は違います。

妻には定期的に資産状況を共有しています。信頼できる友人には、自分の障がいについてオープンに話しています。

「困ったときに頼れる人がいる」

これが、どんな制度よりも強力なセーフティネットだと気づいたんです。


おすすめのテクノロジーとアイテム

計算が苦手でも資産管理ができるツール

私が実際に使っているツールを紹介します。

マネーフォワードME

特徴:

  • 銀行・証券・クレカを自動連携
  • 資産総額がひと目でわかる
  • 無料版でも十分使える

私の使い方: 月に1回だけアプリを開いて、資産総額の推移をチェック。細かい数字は見ません。「先月より増えてるか減ってるか」だけわかればOK。

デメリット:

  • 無料版だと連携できる口座数に制限がある(4件まで)
  • たまに連携エラーが起きる

料金: 無料版あり/プレミアム版 月額500円


楽天証券のつみたて設定

特徴:

  • 一度設定すれば毎月自動で積立
  • 100円から投資可能
  • 楽天ポイントも使える

私の使い方: 毎月決まった日に、決まった金額が自動で投資される設定にしています。設定後は完全放置。これぞ「計算しない投資」の極み。

デメリット:

  • 設定画面が少しわかりにくい
  • 最初の口座開設に手間がかかる

Notion(ノーション)

特徴:

  • 無料で使えるメモ・データベースアプリ
  • 財産目録やエンディングノートの作成に最適
  • 家族と共有できる

私の使い方: 財産目録、パスワード管理のヒント、エンディングノートをすべてNotionで管理。妻にも閲覧権限を付与して、いつでも確認できるようにしています。

デメリット:

  • 機能が多すぎて最初は戸惑う
  • インターネット環境がないと使いにくい

料金: 無料版で十分


【海外事例】アメリカの「ABLE口座」という選択肢

少しマニアックな情報をお伝えします。

アメリカにはABLE口座(Achieving a Better Life Experience Account)という、障がい者専用の税制優遇口座があります。

特徴:

  • 障がい者本人名義で資産を貯められる
  • 一定額まで政府の福祉給付に影響しない
  • 投資もできる

日本にはまだこのような制度がありません。でも、アメリカではすでに多くの障がい者がこの口座を活用して、「福祉に頼りつつ、自分の資産も築く」というライフプランを実現しています。

「いつか日本にもこんな制度ができてほしい」

そう願いながら、私は今できる対策を積み重ねています。


親亡き後問題と3400万円の意味

なぜ私が資産形成にこだわるのか

ここまで読んでくださった方は、疑問に思っているかもしれません。

「なぜそこまで資産にこだわるの?」

答えは単純です。

子どもに迷惑をかけたくないから。

私には障がいがあります。将来、判断能力が衰える可能性もゼロではありません。そのとき、子どもに経済的な負担をかけたくない。

「お父さんのせいで人生の選択肢が狭まった」

そんなふうに思わせたくないんです。

「親亡き後問題」は他人事じゃない

親亡き後問題とは、障がいのある子どもを持つ親が亡くなった後、その子どもの生活をどう支えるかという課題です。

でも、私は気づいたんです。

これは親の問題だけじゃない。私自身の問題でもある。

私が親になった今、「自分が動けなくなったら、妻と子どもはどうなる?」という不安が常にあります。だからこそ、今のうちに仕組みを作っておく必要があるんです。

3400万円という数字の裏側

正直に言うと、3400万円が十分かどうかはわかりません。

老後2000万円問題と言われていますが、障がい者の場合はもっとかかる可能性もあります。追加の医療費、サポートが必要になったときの費用…。

でも、ゼロと3400万円では、選択肢の数が全く違う。

お金があれば、成年後見制度に頼らずに済む可能性も高まります。家族信託を使う余裕も生まれます。

「できない」ことが多い私だからこそ、「選択肢を増やす」ことに全力を注いでいます。


まとめ:自分で決められるうちに、決めておこう

長い記事を読んでくださり、ありがとうございます。

最後に、私が伝えたいことをまとめます。

今日からできること

  • 家族と資産について話す → タブー視せず、オープンに
  • 財産目録を作る → 完璧じゃなくていい、まず一覧にする
  • 家族信託について調べる → 専門家への無料相談を活用する
  • テクノロジーを味方につける → 計算は機械に任せる
  • 「助けて」と言える関係を築く → これが最強のセーフティネット

成年後見制度は「悪」ではない、でも…

誤解しないでいただきたいのですが、成年後見制度自体が悪いわけではありません。必要な人には、間違いなく必要な制度です。

ただ、「知らないうちに巻き込まれる」のは避けたい。

だからこそ、判断能力があるうちに自分の意思を示し、仕組みを作っておくことが大切なんです。

あなたは一人じゃない

この記事を読んでいるあなたも、もしかしたら似たような不安を抱えているかもしれません。

「自分の将来が不安」「お金の管理が苦手」「誰にも相談できない」

わかります。私も長い間、そうでした。

でも、一歩ずつ進めば、道は開けます。計算が苦手でも、3400万円は築けました。暗算ができなくても、資産管理はできます。

大切なのは、「できない自分」を責めるのではなく、「できる方法」を探すこと。

あなたのペースで、大丈夫です。

不器用な私ですが、これからも「暮らしの攻略本」を書き続けます。

どうぞ、またゆっくり遊びに来てください。


【この記事の関連情報】

  • 法務省「成年後見制度」公式ページ
  • 一般社団法人 家族信託普及協会
  • マネーフォワードME 公式サイト
  • 金融庁「新しいNISA」公式ページ

※本記事は2025年時点の情報をもとに作成しています。制度や税制は変更される可能性がありますので、最新情報は各公式サイトをご確認ください。


最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。

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