あなたは「怠けている」のではない

「なんでこんな簡単なことができないんだろう」

洗濯物が山積みになったリビングを見て、何度この言葉を自分に投げつけてきたかわかりません。

はじめまして、りゅうぞうです。38歳、ASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持つ当事者で、妻と子供の3人家族です。

先に結論をお伝えします。

お金を使って家事を減らすことは「贅沢」ではありません。自分の心身を守るための「必要コスト」です。

私は27歳で診断を受けるまで、「普通の人ができることができない自分」をずっと責め続けてきました。でも今は違います。3400万円の資産(そのうち90%が株式)を築きながら、家事代行やテクノロジーを積極的に活用して暮らしています。

「計算が苦手なのに資産形成ができるの?」と思われるかもしれません。正直、暗算は今でも壊滅的です。でも、「できないこと」にお金を使い、「できること」にエネルギーを集中させるという戦略を取ることで、人生は驚くほど楽になりました。

この記事では、障がいを持つ私がたどり着いた「お金で苦手を解決する勇気」についてお話しします。同じように自分を責め続けている方の、小さな光になれたら嬉しいです。


1:なぜ私たちは「お金を使うこと」に罪悪感を持つのか

「みんなやってるのに」という呪い

ASDとSLDを持つ私には、日常生活の中で特に苦手なことがあります。

苦手なこと(できないこと):

  • 暗黙の了解を読み取ること
  • 急な予定変更への対応
  • 暗算・計算全般(買い物でお釣りの計算ができない)
  • 複数のタスクを同時進行すること
  • 家事の「段取り」を組むこと

得意なこと(できること):

  • 興味のある分野への深い集中力
  • 独自の視点で物事を捉えること
  • 長期的な視野で計画を立てること
  • 同じような悩みを持つ人の痛みに寄り添うこと

問題は、苦手なことの多くが「日常生活の基本動作」だということです。

料理、洗濯、掃除、買い物。これらは「誰でもできて当たり前」とされています。だからこそ、できない自分を責めてしまう。「みんなやってるのに、なぜ自分だけ?」という思考のループに陥るんです。

「贅沢」という言葉の暴力性

家事代行サービスを使い始めた頃、親戚にこう言われました。

「共働きでもないのに家事代行?贅沢だねぇ」

この一言が、どれだけ私の心を抉ったかわかりません。

でも今なら反論できます。

糖尿病の人がインスリン注射を打つことを「贅沢」とは言わないでしょう?

私たちが家事を外注するのも同じです。脳の特性上、定型発達の人と同じようにはできない。だからこそ、別の方法で生活を成り立たせる。それは「贅沢」ではなく「適切な対処」です。


2:私が実際に使っている「苦手を解決するサービス」とその費用

ここからは、私が実際に利用しているサービスやアイテムを、リアルな費用感とともにご紹介します。

【家事代行サービス】CaSy(カジー)

基本情報:

  • 料金:1時間あたり約2,790円〜(2024年現在)
  • 利用頻度:月2回(各2時間)
  • 月額コスト:約11,160円

私の使い方: 主に水回りの掃除をお願いしています。キッチン、浴室、トイレ。これらは「やらなきゃ」と思いつつ、ASD特有の「始めるまでのハードル」が高すぎて後回しにしがちでした。

正直なデメリット:

  • 予約が埋まりやすい時間帯がある
  • スタッフによって仕上がりにばらつきがある
  • 最初は「他人を家に入れる」ストレスがあった

最後の点は、ASD当事者には特に大きな壁かもしれません。私も最初の3回くらいは、来てもらっている間ずっとソワソワしていました。でも、同じスタッフさんにお願いし続けることで、今では「この人が来てくれる日」と安心できるようになりました。

【ロボット掃除機】Anker Eufy RoboVac G30

基本情報:

  • 価格:約25,000円
  • 購入場所:Amazon

使用感: 正直に言います。最初は「ロボット掃除機なんて贅沢品だ」と思っていました。でも、導入して1週間で考えが変わりました。

床に物を置かなくなるんです。

これ、地味に革命的でした。ASD当事者あるあるかもしれませんが、私は「出したものを元の場所に戻す」のが極端に苦手です。でも、ロボット掃除機を動かすためには床をある程度片付けなければいけない。この「強制的な片付けトリガー」が、思わぬ副産物でした。

デメリット:

  • 段差に弱い(和室がある家は注意)
  • 定期的なゴミ捨てとブラシ清掃が必要
  • 完璧な掃除は期待できない(角や細かい部分は残る)

【食材宅配サービス】オイシックス

基本情報:

  • 料金:週5,000〜7,000円程度(3人家族)
  • 月額コスト:約20,000〜28,000円

私の使い方: 「Kit Oisix」というミールキットを週2〜3回利用しています。これは食材が必要な分だけカット済みで届き、レシピ通りに作れば20分程度で主菜と副菜が完成するというもの。

革命的だった点:

  • 「今日何作ろう」と考えなくていい
  • 買い物に行く回数が激減
  • 食材を余らせて罪悪感を感じることがなくなった

ASDの私にとって、「献立を考える」という作業は想像以上に脳のリソースを消費していました。選択肢が多すぎると決められない。かといって同じものばかりだと飽きる。この無限ループから解放されたことで、夕方の時間帯がぐっと楽になりました。

デメリット:

  • スーパーで買うより割高
  • 配達日時の調整が必要
  • 「手抜き」と言われると傷つく(言う人は言う)


3:「助けて」と言えるようになるまで——罪悪感を手放すプロセス

ステップ1:「できない」を認める

これが一番難しかった。

27歳で診断を受けるまで、私は「努力すればできるはず」と信じていました。でも違ったんです。どれだけ努力しても、脳の構造上できないことがある。それを認めることは、自分の限界を認めることでもありました。

ステップ2:「できない」と「やらない」は違うと理解する

ここで重要な区別があります。

「できない」は能力の問題。「やらない」は意志の問題。

私は掃除が「できない」のではなく、掃除に必要なエネルギーが定型発達の人の何倍もかかる、という話なんです。同じ結果を出すのに、倍以上の労力が必要。それなら、お金を払って別の人にお願いする方が合理的じゃないですか?

ステップ3:周囲に説明する言葉を持つ

家族や職場に理解してもらうには、言葉が必要でした。

私がよく使うフレーズはこれです。

「私の脳は、〇〇の処理にすごくエネルギーを使うタイプなんです。だから、そこを外部に任せることで、他のことにエネルギーを使えるようになるんです」

「障がいがあるから」と言うと、相手が構えてしまうことがあります。でも「脳のタイプ」と言い換えると、「そういう人もいるよね」と受け入れてもらいやすくなりました。

ステップ4:「必要経費」として家計に組み込む

最後のステップは、罪悪感を「仕組み」で消すこと。

私は家事代行や食材宅配の費用を、「通信費」「光熱費」と同じカテゴリーで管理しています。「生活インフラ費」として、毎月の固定費に組み込んでいるんです。

こうすると、「今月使いすぎたかな」という後ろめたさがなくなります。だって、電気代を払って「贅沢した」とは思わないでしょう?


まとめ:お金は「自分を責めない」ための道具になる

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

最後に、お伝えしたいことがあります。

あなたが「できない」と感じていることの多くは、あなたのせいではありません。

脳の特性、環境、これまでの経験。いろいろな要因が重なって、今の「苦手」が生まれています。それを「努力不足」と片付けるのは、あまりにも乱暴です。

お金を使うことに罪悪感を覚える気持ちは、痛いほどわかります。私も最初はそうでした。でも今は、こう考えています。

お金は、自分を責めないための道具になる。

家事代行に月1万円使うことで、自己嫌悪の時間を減らせるなら、それは最高の投資じゃないですか?ロボット掃除機に2万5千円払うことで、「また掃除できなかった」という罪悪感から解放されるなら、安いものです。

もちろん、経済的に厳しい方もいらっしゃるでしょう。すべての人に同じ方法を勧めるつもりはありません。でも、もし「使えるお金があるのに、罪悪感で使えない」という状態なら、この記事が背中を押すきっかけになれば嬉しいです。

あなたは、怠けているわけじゃない。 あなたは、贅沢をしたいわけじゃない。 ただ、自分らしく生きるための「コスト」を払おうとしているだけです。

それは、とても勇気のいることで、とても誇らしいことです。

不器用な私ですが、これからもこのブログで「暮らしの工夫」を発信していきます。どうぞ、ゆっくりしていってください。