自己肯定感を「資産額」で補強する:計算が苦手な発達障害者が3,400万円を築いた理由

「できないこと」だらけの自分を、どうやって肯定するのか
「お前は本当に使えないな」
20代の頃、職場で何度も言われた言葉です。
計算ができない。暗算なんて論外。急な予定変更でパニックになる。空気を読めと言われても、その「空気」がどこにあるのかわからない。
「努力が足りないんだよ」
そう言われるたびに、自分を責めました。もっと頑張らなきゃ。もっとちゃんとしなきゃ。でも、どれだけ頑張っても「普通」になれない自分がいる。
27歳で発達障害の診断を受けたとき、私は泣きました。でもそれは悲しみの涙ではなく、「やっと理由がわかった」という安堵の涙でした。
でも、診断を受けたからといって、自己肯定感が勝手に上がるわけではありません。
「障害があるから仕方ない」と開き直れるほど、私は器用じゃなかった。周りと比べて「できないこと」が目につくたびに、自分を責める癖は簡単には消えませんでした。
そんな私が見つけた、一つの「心の支え」があります。
それが「資産額」という数字でした。
結論を先に言います。
私は現在、約3,400万円の資産を保有しています。そのうち90%が株式です。
計算が極端に苦手で、暗算すらまともにできない私が、です。
これは自慢したいわけではありません。むしろ、「できないことが多い自分でも、何かを積み上げることはできる」という、自分への証明なんです。
この記事では、障害があるからこそお金が必要だった理由、そして「資産」という客観的な数字が、どうやって私の心を支えてくれたのかをお話しします。
障害があるからこそ、お金が「心の安定剤」になった
■ お金がないと、逃げ場がなくなる
発達障害を持っていると、「合わない環境」に出会う確率が高いです。
私の場合、こんな経験がありました。
- 上司の暗黙のルールが理解できず、毎日怒られる
- 急な業務変更にパニックになり、周りから白い目で見られる
- 計算が必要な業務でミス連発、「こんな簡単なこともできないのか」と言われる
「この職場、無理だ」と思っても、お金がなければ辞められません。
貯金がゼロだった20代の頃、私は体調を崩しても仕事を辞められませんでした。「辞めたら生活できない」という恐怖が、ブラックな環境に私を縛り付けていたんです。
■ 「辞めても大丈夫」という選択肢が心を守る
30代になって、少しずつ資産を築き始めてから、心の余裕が生まれました。
「この職場が無理なら、辞めてもいい」 「最悪、1年くらいは働かなくても生きていける」
この「選択肢がある」という感覚が、どれほど心を楽にしてくれたか。
ここで大事なポイントがあります。
お金は「贅沢をするため」ではなく、**「自分を守るための盾」**として機能するんです。
特に発達障害を持つ私たちにとって、「合わない環境から逃げる自由」は死活問題です。お金があれば、その自由を手に入れられる。
障害があるからこそ、お金が必要だった。
これが、私がお金を貯め始めた一番の理由です。
■ 資産額が「自己肯定感」を支えてくれる理由
発達障害を持っていると、「できないこと」ばかりに目が行きがちです。
- 暗算ができない → 「自分はバカだ」
- 空気が読めない → 「自分は人として欠陥がある」
- 急な変更に弱い → 「自分は社会不適合者だ」
こうしたネガティブな自己評価のループに陥りやすいんですよね。
でも、資産額という「数字」は、主観を挟まない客観的な事実です。
「計算ができなくても、3,400万円貯められた」
これは誰にも否定できません。上司に怒られても、同僚にバカにされても、この事実は揺るがない。
「できないこと」があっても、「できたこと」も確かにある。
資産額は、その「できたこと」を数字で証明してくれる存在なんです。
計算が苦手でも資産を築けた「仕組み」の話
■ 私の「できないこと」リスト
正直に言います。私は本当に計算が苦手です。
具体的にできないこと:
- 暗算(2桁の足し算すら怪しい)
- 割り勘の計算(飲み会で毎回パニック)
- 確定申告の数字チェック(3回見直しても間違える)
- グラフや数表の読み取り(何が書いてあるかわからない)
これは限局性学習症(SLD)の症状の一つで、努力でどうにかなるものではありません。
■ じゃあ、どうやって3,400万円を貯めたのか?
答えは簡単です。「自分で計算しない仕組み」を作りました。
① 給与天引きで強制的に貯金
毎月の給与から、自動的に一定額が投資用口座に移動する設定をしています。これなら「いくら貯金しよう」と考える必要がない。計算不要です。
② インデックス投資一本に絞る
個別株は、決算書を読んだり、業績を分析したりする必要があります。これは私には無理でした。
だから、インデックス投資(市場全体に投資する方法)に絞りました。
- 全世界株式(オルカン)
- S&P500
この2つだけ。銘柄選びに頭を使う必要がない。
③ 証券会社のアプリで「見るだけ」
資産の推移は、証券会社のアプリが自動で計算してくれます。私は毎月1回、アプリを開いて「増えてるな」「減ってるな」と確認するだけ。
細かい計算は一切しません。
インデックス投資が発達障害者に向いている3つの理由
少しマニアックな話をします。
① 意思決定の回数が少ない
ASD(自閉スペクトラム症)の特性として、「選択肢が多いと疲れる」というものがあります。個別株投資は、銘柄選び・売買タイミング・配当再投資など、意思決定の連続です。
インデックス投資なら、「毎月同じ金額を同じ商品に入れる」だけ。意思決定は最初の1回だけで済みます。
② ルーティン化しやすい
ASDの人は、ルーティン(決まった行動パターン)が得意な傾向があります。
「毎月15日に3万円を自動積立」
これを一度設定すれば、あとは何も考えなくていい。特性を活かした投資法です。
③ 情報のノイズに惑わされにくい
インデックス投資の基本は「買ったら持ち続ける」こと。日々のニュースや株価の上下に一喜一憂する必要がありません。
発達障害を持つ人の中には、情報過多でパニックになりやすい方もいます。インデックス投資は、「情報を遮断しても成立する」数少ない投資法です。
自己肯定感を「資産額」で補強する習慣
■ 月に1回、資産額を確認する儀式
私は毎月1日に、資産額を確認する習慣を持っています。
これは「お金を増やすため」ではなく、「自分を肯定するため」の儀式です。
確認するときの心の中の声:
- 「今月も減ってないな。よしよし」
- 「ちょっと増えた。自分、頑張ってるじゃん」
- 「減ったけど、長期で見れば大丈夫。これまでも乗り越えてきた」
こうやって、自分の「積み上げ」を数字で確認することで、自己肯定感を維持しています。
■ 「できないこと」と「できたこと」を分けて考える
発達障害を持っていると、どうしても「できないこと」に目が行きます。
でも、資産額を見るとき、私は意識的に「できたこと」に目を向けるようにしています。
自分への言い聞かせ例:
| できないこと | できたこと |
|---|---|
| 暗算ができない | 仕組みを作って資産を築けた |
| 空気が読めない | 自分のペースで投資を続けられた |
| 急な変更に弱い | 長期投資という「変わらない方針」を貫けた |
この「分けて考える」習慣が、すごく大事です。
「できないこと」は確かにある。でも、「できたこと」も確かにある。両方を認めることで、バランスの取れた自己認識ができるようになりました。
■ お金は「自分への信頼」を可視化したもの
資産額が増えていくということは、「過去の自分が、未来の自分のために行動した証拠」です。
- 1年前の自分が、毎月コツコツ積立をしていた
- 3年前の自分が、投資を始める決断をした
- 5年前の自分が、浪費を減らす努力をした
今の資産は、過去の自分からのプレゼントなんです。
「できないことが多い自分」でも、「未来の自分を大切にできる自分」でもある。この認識が、自己肯定感を支えてくれています。
資産形成のデメリットと注意点
■ お金で解決できないこともある
正直に書きます。資産があっても、解決できない問題はあります。
- 人間関係の悩みは、お金では解消されない
- 障害の特性そのものは、資産額で変わらない
- 過去の傷ついた記憶は、数字で癒されない
お金は万能じゃない。でも、「心の余裕」を作る土台にはなります。
■ 資産額に執着しすぎると本末転倒
「お金を増やすこと」が目的化すると、逆に苦しくなります。
- 株価が下がるたびに不安になる
- 「もっと節約しなきゃ」と自分を追い詰める
- お金のことばかり考えて、日常を楽しめなくなる
資産は「心の安定剤」であって、「人生の目的」ではありません。
私も一時期、資産額に執着しすぎて苦しくなった時期がありました。今は「月1回確認するだけ」と決めて、距離感を保っています。
まとめ:あなたは「できないこと」だけで構成されていない
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
最後に、私が伝えたいことをまとめます。
この記事のポイント:
- 障害があるからこそ、お金は「逃げる自由」を守る盾になる
- 資産額は「できたこと」を証明する客観的な数字
- 計算が苦手でも、仕組み化すれば資産は築ける
- 月1回の資産確認は、自己肯定感を補強する習慣になる
- ただし、お金は万能じゃない。適度な距離感が大事
「できないこと」が多い自分を、責め続けていませんか?
私もそうでした。何年も、何十年も。
でも、資産という「数字」が、少しずつ私を支えてくれました。
「計算ができなくても、これだけ貯められた」 「不器用でも、コツコツ続けることはできた」
この事実が、自分を肯定する根拠になったんです。
あなたも、きっと何かを積み上げることができます。
それは資産かもしれないし、別の何かかもしれない。でも、「できないこと」だけで自分を判断しないでほしい。
あなたは、「できないこと」だけで構成されていない。
必ず、「できること」も持っている。それを見つけて、育てて、数字や形にしていく。その積み重ねが、いつか自分を支える力になります。
最後に:同じように苦しんでいるあなたへ
私がこのブログを書いているのは、「あなたは一人じゃない」と伝えたいからです。
かつての私のように、診断がつかずに苦しんでいる方。診断されて間もなく、どうしていいかわからない方。そしてそのご家族。
「できないこと」を責める声は、もう十分聞いてきたはずです。
だから、私は「できたこと」を一緒に見つけていきたい。
資産形成は、その一つの方法でした。計算が苦手な私でも、仕組みを使えば積み上げられた。それが自信になり、「自分もやれるじゃないか」と思えるようになった。
あなたにも、きっとそういう「何か」があります。
まだ見つかっていなくても、大丈夫。私も27歳まで、自分の障害すら知らなかった。そこから10年かけて、少しずつ自分を理解して、自分なりの生き方を見つけてきました。
焦らなくていい。
今日できることを、一つだけやればいい。
そして、できたことは、ちゃんと数えていい。
不器用な私ですが、これからも「暮らしの攻略本」として、障害と向き合いながら生きるヒントを発信していきます。
どうぞ、ゆっくりしていってください。
りゅうぞう







