「計算ができない」のに、なぜ投資で成功できたのか

「計算が苦手なら、投資なんて無理でしょ」

そう言われたことが、何度あったでしょうか。ASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持つ私は、計算と書字に大きな困難を抱えています。電卓を使っても数字を打ち間違え、手書きのメモは自分でも読めないほど乱れます。

でも、気づけば資産は3400万円。その90%が株式です。

答えはシンプルです。計算ができなくても、「未来を読む力」は磨けるから。

この記事では、ASDの特性である「こだわり」や「集中力」を、投資のリサーチにどう活かしているのか。そして、数字が苦手でもテクノロジーを味方につけて資産を築く方法を、実体験とともにお伝えします。

あなたの「できないこと」は、実は「やらなくていいこと」かもしれません。そして「得意なこと」を極限まで磨けば、誰も真似できない強みになります。


私の投資スタイル:「ハイテク集中投資」という選択

保有している個別株ポートフォリオ

個別株のポートフォリオを見て、「ハイテク偏重だ」と指摘する人もいるでしょう。その通りです。私の保有する銘柄は、ほぼすべてテクノロジー関連企業です。

  • NVIDIA:AI半導体のリーダー
  • Astera Labs:データセンター接続技術
  • Rubrik:クラウドデータ管理
  • Reddit:ソーシャルプラットフォーム
  • Applovin:モバイル広告技術
  • On Holding:高機能スニーカー(非テック)
  • Tempus AI:AIヘルスケア
  • Lyft:ライドシェアプラットフォーム(非テック)
  • UiPath:RPAソフトウェア

なぜテクノロジー企業に集中するのか

これは気まぐれではなく、意図的な選択です。

投資信託では「市場全体」「財務優良企業」「債券」「REIT」といった伝統的資産を押さえています。だからこそ、個別株では「信じるテーマ」に集中投資できるのです。

私が信じているテーマは、「計算機(コンピューター)が人間の知的作業を代替・拡張していく未来」

これは私自身の体験に基づいています。計算ができない私が投資できているのは、まさにテクノロジーのおかげです。自動計算、自動記録、音声読み上げ、AI要約…これらがなければ、私は投資の世界に足を踏み入れることすらできませんでした。

だから私は、この未来に賭けています。財務諸表は読めなくても、「この技術が5年後、10年後の世界をどう変えるか」については、誰よりも深く考えています。


ASDの「こだわり」が最強のリサーチツールになる理由

定型発達者には真似できない「深掘り力」

ASDの特性として、興味のあることには驚異的な集中力を発揮します。これは投資リサーチにおいて、計り知れない武器になります。

私の実際のリサーチプロセス:

  1. 企業のプレスリリースを創業時まで遡って全部読む
    一般的な投資家は直近の決算資料しか見ません。でも私は、その企業が「何を目指して生まれたのか」を知りたくなります。創業者のビジョン、初期の製品、ピボット(方向転換)の歴史…これらを理解することで、企業の「本質」が見えてきます。
  1. 競合他社の技術を徹底比較する
    例えばNVIDIAに投資するなら、AMD、Intel、さらには新興のAIチップメーカーまで調べます。「なぜNVIDIAが選ばれるのか」を、技術的な優位性から理解するまで止まりません。
  1. ユーザーレビューやエンジニアの口コミを読み漁る
    RedditやHacker News、GitHubのissue、tech系Podcastまでチェックします。実際に使っている人の生の声には、決算資料には載らない「本当の強み・弱み」が隠れています。
  1. 規制や業界動向を追い続ける
    AIヘルスケアに投資するなら、FDA(米国食品医薬品局)の承認プロセスや、医療データのプライバシー規制を理解する必要があります。これも「こだわり」が発動すると、何時間でも調べ続けられます。

失敗談:興味が持てない銘柄には手を出せない

一方で、ASDならではの「失敗」もあります。

どんなに優良企業でも、興味が持てなければリサーチできません。

例えば、生活必需品セクター(P&Gやコカ・コーラなど)は、安定した配当を出す優良企業ばかりです。でも私には「歯磨き粉の市場シェア」や「炭酸飲料の新フレーバー」に、まったく興味が湧きません。

だから、私は最初から「興味を持てる分野」に絞ることにしました。無理に「バランスの良いポートフォリオ」を作ろうとして、興味のない銘柄を買っても、リサーチを続けられず、結局売ってしまいます。

これは弱みではなく、「自分を知った上での戦略」です。


テクノロジーを味方につける:計算が苦手でもできる投資管理

私が使っているツールとその理由

計算が苦手な私にとって、テクノロジーは「補助具」ではなく「相棒」です。

1. 自動計算ツール:Google スプレッドシート

保有株の損益計算は、すべてスプレッドシートで自動化しています。

  • 株価はGOOGLEFINANCE関数で自動取得
  • 損益率の計算式を一度設定すれば、あとは自動更新
  • 条件付き書式で、プラスは緑、マイナスは赤に色分け

メリット: 手計算が一切不要。視覚的にパッと判断できます。

デメリット: 初期設定に時間がかかる。でも一度作れば、ずっと使えます。

2. 音声読み上げ:Speechify(スピーチファイ)

決算資料やニュース記事を、音声で聞きます。

  • 読字に困難がある私でも、耳から情報を入れられる
  • 1.5〜2倍速で聞くことで、効率的に情報収集
  • 通勤中や家事をしながらリサーチできる

コツ: 重要な部分だけ、後でテキストを見直します。全部を完璧に理解しようとしなくてOK。

3. AI要約ツール:ChatGPT、Claude

長文の決算資料やプレスリリースを、AIに要約させます。

  • 「この決算で最も重要なポイントを3つ挙げて」と指示
  • 専門用語の解説も頼める
  • 「この技術が5年後どうなるか予測して」といった思考実験もできる

注意点: AIの回答をそのまま信じるのではなく、「リサーチの入り口」として使います。最終判断は自分で行います。

4. 音声メモ:iPhoneのボイスメモ+文字起こし

ひらめいたアイデアや気づきは、すぐに音声で記録します。書字が苦手なので、手書きメモは諦めました。

  • 後でWhisper(OpenAIの音声認識)で文字起こし
  • 定期的に見返して、投資判断に活かす

財務諸表が読めなくても投資できる理由

「数字」ではなく「物語」で企業を理解する

多くの投資本は「PER(株価収益率)を見ろ」「ROE(自己資本利益率)が高い企業を選べ」と言います。でも私には、これらの指標を「感覚的に」理解することが難しいです。

そこで私は、「数字の裏にある物語」を読むことに集中します。

例えば、NVIDIAの2024年度決算。

  • 数字だけ見る人: 「売上高が前年比265%増。すごい!」
  • 物語を読む私: 「データセンター向けGPU需要が爆発している。なぜか?生成AI(ChatGPTなど)のトレーニングにNVIDIAのチップが必須だから。ということは、AI需要が続く限り、この成長は続く可能性が高い」

数字は「結果」です。でも「なぜその結果になったのか」を理解すれば、未来も予測できます。

ナラティブ・インベスティング(物語投資)の実践

私の投資スタイルは、「ナラティブ・インベスティング」に近いかもしれません。これは、企業の財務数値よりも、「その企業が語る未来のストーリー」に投資する手法です。

具体例:Tempus AIへの投資判断

  • 企業の物語: 「がん患者一人ひとりのゲノムデータをAIで解析し、最適な治療法を提案する」
  • 私の思考: 「医療は『経験と勘』から『データとAI』へ移行している。この流れは止まらない。医師の負担も減る。患者も救われる。これは応援したい未来だ」
  • 財務数値: 正直、まだ赤字企業です。でも私は「この技術が10年後、当たり前になっている世界」に賭けています。

リスク: もちろん、物語だけでは不十分です。技術の実現可能性、競合優位性、規制リスクなども調べます。でも「数字が苦手」な私にとって、物語は投資への入り口であり、モチベーションの源です。


「集中投資」のリスクとどう向き合うか

デメリットを正直に語る

ハイテク集中投資には、明確なリスクがあります。

  1. ボラティリティ(価格変動)が激しい
    テック株は、良い時は一気に上がりますが、悪い時は一気に下がります。2022年の米国株暴落では、私のポートフォリオも大きく目減りしました。
  1. セクター全体の暴落リスク
    金利上昇や規制強化で、テック株全体が売られることがあります。分散が効いていないので、ダメージは大きいです。
  1. 「信じていた物語」が崩れるリスク
    企業の技術が陳腐化したり、競合に負けたりすることもあります。物語投資は、冷静な撤退判断も必要です。

リスク管理のために実践していること

  1. 投資信託でベース資産を確保
    全米株式インデックス、先進国債券、REITなど、安定資産を投資信託で保有しています。これが資産の「土台」。個別株はあくまで「攻め」の部分です。
  1. 生活資金とは完全に分ける
    投資資金は「10年間触らなくても生活できる資金」だけ。これが精神的な安定をもたらします。
  1. 定期的にリサーチを更新
    「信じていた物語」が崩れていないか、四半期ごとにチェックします。もし「この企業の未来が見えなくなった」と感じたら、躊躇なく売ります。

まとめ:あなたの「こだわり」を、あなたの武器にする

「できないこと」を受け入れ、「できること」を極める

私は計算ができません。財務諸表も、完全には理解できません。

でも、「この技術が世界をどう変えるか」を考え続ける集中力なら、誰にも負けません。

ASDの「こだわり」は、時に生きづらさをもたらします。でも、それを「好きなこと」に向ければ、誰も真似できない強みになります。

投資は「完璧な人」のためのものじゃない

投資の世界には、「数字が得意な人」「冷静に判断できる人」「バランス感覚がある人」が向いている、という思い込みがあります。

でも実際は、「自分の強みを活かし、弱みをテクノロジーで補える人」が成功します。

あなたが「できないこと」は、ツールに任せればいい。あなたが「夢中になれること」に、時間とエネルギーを注げばいい。

背中を押すメッセージ

もしあなたが、「自分には投資なんて無理」と思っているなら。

私は声を大にして言いたい。「無理じゃない」と。

計算が苦手でも、文字が読みにくくても、集中力にムラがあっても。あなたの「こだわり」を活かせる場所が、投資の世界にはあります。

まずは少額から。興味のある企業を、とことん調べてみてください。その「こだわり」が、いつかあなたの資産を、そして人生を、変える力になります。

私がそうだったように。