毎日同じ服でいいじゃない。決断疲れを減らす『私服の制服化』のススメ

朝のクローゼット前、立ち尽くしていませんか?
「今日は何を着よう」
毎朝、クローゼットの前で固まってしまう。あれこれ引っ張り出しては「なんか違う」と戻す。気づけば10分、20分が過ぎている。ようやく決めた服も、出かけた先で「やっぱりこれじゃなかった」とモヤモヤする。
そんな経験、ありませんか?
結論から言います。毎日同じ服を着ていい。むしろ、その方が人生がラクになります。
私は27歳で自閉スペクトラム症(ASD)と限局性学習症(SLD)の診断を受けました。診断を受けるまで、「なんでこんな簡単なことができないんだろう」と自分を責め続けてきました。服選びもそのひとつ。朝の服選びだけで疲れ果て、出かける前からエネルギーが底をつく。そんな日々を送っていました。
でも「私服の制服化」を始めてから、朝の景色がまるで変わったんです。
この記事では、服選びに時間がかかる人、感覚過敏で着られる服が限られる人に向けて、「同じ服を着る」という選択がなぜ最高なのかをお伝えします。
【体験談】27年間、服選びで消耗し続けた私の話
「普通」に憧れて、でもできなかった日々
診断を受ける前の私は、とにかく「普通」になりたかった。
おしゃれな人に憧れて、流行りの服を買ってみる。でも、タグがチクチクして着られない。縫い目が肌に当たって気になる。素材がザラザラしていて1時間で限界。結局、クローゼットには「1回着ただけの服」が山積みになっていきました。
朝は地獄でした。
「今日の気温は?」「この組み合わせ変じゃない?」「前にも同じ服着てなかった?」
頭の中で無限の選択肢がグルグル回る。ASDの特性なのか、一度考え始めると止められない。答えが出ないまま時間だけが過ぎていく。
結局、遅刻ギリギリで家を飛び出す。その時点でもう疲れている。仕事に集中できるわけがない。
「決断疲れ」という言葉を知った日
ある日、ネットで「決断疲れ」という言葉を知りました。
決断疲れとは: 人間の脳は1日に使える「決断力」の量が限られている。小さな決断でも積み重なると疲労し、重要な判断ができなくなる現象のこと。
「これだ」と思いました。
朝の服選びで決断力を使い果たしていたんだ。だから午後になると頭が回らない。大事な判断を先延ばしにしてしまう。全部つながっていたんです。
スティーブ・ジョブズが毎日同じ黒のタートルネックを着ていた理由。マーク・ザッカーバーグがグレーのTシャツばかり着ている理由。彼らは「服を選ばないこと」で、本当に大切なことに脳のリソースを使っていたんです。
「私服の制服化」とは?同じ服を着るメリット

私服の制服化の定義
私服の制服化とは: 毎日着る服のパターンを決めておき、朝の選択肢をなくすこと。同じ服を複数枚持つ方法と、組み合わせのパターンを固定する方法があります。
「おしゃれを諦める」ことではありません。「自分に似合う最適解を見つけて、それを繰り返す」ということです。
同じ服を着る5つのメリット
1. 朝の時間が生まれる 服を選ぶ時間がゼロになります。私の場合、朝15分の余裕ができました。その時間で朝食をゆっくり食べられるようになりました。
2. 決断疲れが減る 脳のエネルギーを温存できます。午後の集中力が明らかに違います。
3. 感覚過敏のストレスがなくなる 「このタグは痛い」「この素材は無理」という服を排除済み。毎日快適な服だけを着られます。
4. 「いつもの自分」という安心感 ASDの特性として、「いつもと同じ」に安心感を覚える人は多いです。服が同じだと、自分が自分らしくいられる感覚があります。
5. お金と収納スペースの節約 本当に着る服だけを持つから、無駄な出費が減ります。クローゼットもスッキリ。
感覚過敏でも着られる!おすすめブランド5選
タグなし・肌触り最強のブランドを厳選
感覚過敏がある人にとって、服選びの最大のハードルは「素材」と「タグ」です。ここでは、実際に試して「これなら着られる!」と思ったブランドを紹介します。
1. 無印良品「オーガニックコットンシリーズ」
価格帯: 990円〜2,990円
おすすめポイント:
- タグが外側に印刷されている商品が多い
- オーガニックコットン100%で肌触りが柔らかい
- シンプルなデザインで組み合わせやすい
私の使用感: 無印良品のオーガニックコットンTシャツは、私の「制服」の定番です。洗濯を重ねるほど柔らかくなる。同じ色を3枚持っています。
デメリット:
- 色落ちしやすいものがある
- サイズ感がゆったりめなので、ぴったりが好みの人は試着推奨
2. ユニクロ「エアリズムシリーズ」
価格帯: 790円〜1,990円
おすすめポイント:
- 縫い目がフラットで肌に当たりにくい
- 速乾性があり、汗でベタつかない
- タグがプリントタイプ
私の使用感: 夏場はエアリズムのインナーが手放せません。下着がゴワゴワすると1日中気になってしまうので、この滑らかさは革命的でした。
デメリット:
- 化学繊維なので、天然素材派には向かない
- 静電気が起きやすい季節もある
3. グンゼ「KIREILABO(キレイラボ)」
価格帯: 1,500円〜3,000円
おすすめポイント:
- 完全無縫製タイプがある
- 締めつけが少なく、1日中ストレスフリー
- 下着なのに「着ている感覚」が薄い
妻の使用感: 普通のブラジャーのワイヤーが苦手で、キレイラボのノンワイヤーブラに出会ってから世界が変わりました。感覚過敏の女性には本当におすすめ。
デメリット:
- ホールド感を求める人には物足りないかも
- 種類が多くて選びにくい
4. TAKEFU(竹布)
価格帯: 3,000円〜8,000円
おすすめポイント:
- 竹から作られた天然繊維
- 抗菌・消臭効果がある
- 敏感肌やアトピーの人にも使われている
私の使用感: 少し高いですが、肌触りは最高峰。「服を着ているのを忘れる」レベルです。冬のインナーとして愛用中。
デメリット:
- 価格が高め
- 取り扱い店舗が少ない(公式オンラインがおすすめ)
5. BLANC basque(ブランバスク)
価格帯: 4,000円〜10,000円
おすすめポイント:
- すべて国内生産
- タグが外側についている
- シンプルで上品なデザイン
私の使用感: ちょっとフォーマルな場にも着ていける「きれいめカジュアル」が見つかります。同じデザインを色違いで持っておくと便利。
デメリット:
- サイズ展開が限られている
- 在庫切れになりやすい
【中級者向けコラム】海外ブランドという選択肢
日本ではまだ知名度が低いですが、海外には感覚過敏に特化したブランドが増えています。
Kozie Clothes(アメリカ) 自閉症の子どもを持つ親が立ち上げたブランド。すべての縫い目が外側に配置され、タグは完全に排除。サイズ展開が豊富で、大人向けもあります。 価格帯:約3,000円〜7,500円(送料別)
参考情報: アメリカでは「Sensory-Friendly Clothing(感覚に優しい服)」というカテゴリが確立されています。Targetなどの大手小売店でも専用ラインが販売されており、日本でも今後広がることが期待されます。
具体的な「制服化」の始め方
ステップ1:今持っている服で「ストレスゼロ」の服を見つける
まず、クローゼットの服を全部出してください。そして、以下の基準で分類します。
残す服:
- 着ていて不快感がない
- 洗濯してもヨレにくい
- 何にでも合わせやすい
手放す服:
- タグが痛い
- 素材が合わない
- 「いつか着るかも」で1年以上着ていない
ステップ2:自分の「制服」を決める
残った服の中から、「トップス」「ボトムス」「アウター」それぞれの定番を1〜2種類決めます。
私の制服の例:
- トップス:無印良品の黒Tシャツ×3枚
- ボトムス:ユニクロの黒スキニー×2枚
- アウター:無印良品のカーディガン×2枚
これで春〜秋は完璧。冬はヒートテックを追加するだけ。
ステップ3:同じ服を複数枚買う
「気に入った服は色違いで買う」のではなく、「同じ色を複数枚買う」のがポイントです。
理由はシンプル。毎日まったく同じに見えることで、「今日何着よう」という思考を完全にゼロにできるからです。
「いつも同じ服だね」と言われた時の返し方
一番多い悩み:周りの目が気になる
「私服の制服化」を始めた人が必ずぶつかる壁。それは周囲からの反応です。
「いつも同じ服着てるね」 「服、それしかないの?」 「たまにはおしゃれしなよ」
悪気がないとわかっていても、言われるとグサッときますよね。
私が使っている返し方5選
1. 堂々と肯定する 「そう、これが私の制服!」 シンプルかつ最強。自信を持って言うと、相手もそれ以上突っ込んできません。
2. 理由を軽く説明する 「朝の時間を節約したくて、同じ服にしてるんだ」 「決断疲れ対策」と言っても通じないことが多いので、「時間の節約」が伝わりやすいです。
3. 有名人の名前を出す 「スティーブ・ジョブズと同じスタイル!」 これを言うと「なるほど」と納得してくれる人が多いです。
4. 笑いに変える 「同じに見える?実は毎日違う服だよ(同じ服を複数持ってるから)」 これ、事実なので嘘ではありません。
5. 話題を変える 「それより聞いて!昨日さ〜」 深掘りされたくない時は、サラッと流すのもアリ。
【小見出し】そもそも「毎日違う服を着るべき」は誰が決めた?
少し考えてみてください。
「毎日違う服を着なければいけない」というルール、どこにも書かれていませんよね?
ファッション業界が「流行」を作り、消費を促してきた結果、私たちは「たくさんの服を持つことが豊か」「毎日違う服を着ることがおしゃれ」と刷り込まれてきました。
でも、自分が心地よく過ごせることの方が、よほど大切ではないでしょうか?
誰かの「普通」に合わせて消耗するより、自分にとっての「最適解」を選ぶ。それは逃げではなく、賢い選択です。
感覚過敏があって着られる服が限られる人にとって、「毎日違う服を着る」ことは本当に難しい。そもそも選択肢が少ないんです。
だったら、その少ない選択肢の中で「最高の1着」を見つけて、それを着続ければいい。
私はそう思っています。
スマートホーム×服選び:もっとラクになる方法
テクノロジーで「考えない」を加速させる
「私服の制服化」で朝の服選びはラクになります。でも、もう一歩進んで、テクノロジーの力を借りてみませんか?
ここでは、服選びや身支度をさらに効率化するスマートホームの活用法を紹介します。
Amazon Echo(アレクサ)で天気を確認
やり方: 「アレクサ、今日の天気は?」と聞くだけ。
なぜ便利か: スマホを開いて、アプリを立ち上げて、天気を確認して……この「小さな手間」が積み重なると、ASDの特性がある人には大きな負担になります。声だけで完結するのは本当にラク。
私の活用法: 朝起きて、ベッドの中から「アレクサ、今日の天気」と聞きます。気温によって「今日は半袖の制服」「今日は長袖の制服」と瞬時に決まります。考える必要がありません。
SwitchBot(スイッチボット)でカーテンを自動化
価格帯: 約8,000円〜15,000円
やり方: SwitchBotカーテンを取り付けると、設定した時間に自動でカーテンが開きます。
なぜ便利か: 朝、自然光で目覚めると体内時計が整います。「起きなきゃ」という意志の力に頼らなくていい。これも決断疲れを減らす一歩です。
私の活用法: 朝6時半にカーテンが自動で開くように設定。光で自然と目が覚めるので、アラームの不快な音で起きるストレスがなくなりました。起きた時点で少し余裕があると、服を「制服」の中から選ぶ(というか選ばない)作業もスムーズです。
Nature Remo(ネイチャーリモ)でエアコンを自動化
価格帯: 約6,000円〜12,000円
やり方: スマートリモコンを設置し、温度や時間に応じてエアコンが自動で動くように設定。
なぜ便利か: 「今日は暑いからエアコンつけようかな、どうしようかな」という小さな判断も、ASDの人には負担になることがあります。自動化すれば考えなくていい。
私の活用法: 室温が28度を超えたら自動でエアコンがつくように設定。帰宅前にスマホから「つけておいて」と指示することもできます。快適な部屋に帰れると、次の日の準備(服を畳むなど)をする気力が残ります。
なぜスマートホームが「服選び」と関係あるの?
一見関係なさそうですが、実は深くつながっています。
ポイントは「脳のリソース管理」です。
朝起きてから家を出るまで、私たちはたくさんの小さな決断をしています。
- カーテンを開けるか
- エアコンをつけるか
- 今日の天気は何か
- 何を着るか
- 朝ごはんは何を食べるか
ASDの特性がある人は、これらの「小さな決断」に定型発達の人以上のエネルギーを使います。だからこそ、自動化できることは徹底的に自動化する。
服選びを「制服化」で自動化。 天気確認を「音声操作」で自動化。 部屋の環境を「スマート家電」で自動化。
こうやって「考えること」を減らしていくと、本当に大切なことに集中できるようになります。
失敗談:私がやらかした「制服化」の落とし穴
失敗①:最初から完璧を求めすぎた
「よし、制服化するぞ!」と意気込んで、いきなりクローゼットの服を全部捨てました。
結果、「やっぱりあの服必要だった……」と後悔することに。
学んだこと: まずは1週間、「この服だけで過ごしてみる」と試験期間を設ける。問題なければ本格移行。いきなり捨てない。
失敗②:セールで「お得だから」と違う服を買った
「制服」を決めた後も、セールで安くなった服を見ると「お得だから買っておこう」と手が伸びました。
結果、クローゼットにまた「着ない服」が増えていく。
学んだこと: 「制服」以外の服は買わない。どんなに安くても、自分の「制服」じゃなければ必要ない。セールは罠。
失敗③:冠婚葬祭を想定していなかった
普段着は完璧に制服化できました。でも、急に結婚式に呼ばれて「着ていく服がない!」とパニックに。
学んだこと: 「制服」とは別に、冠婚葬祭用の服は1セット持っておく。黒いワンピースとジャケットがあれば、結婚式も葬式も対応できます。
まとめ:「自分仕様」の暮らしを作ろう
同じ服を着ることは、自分を大切にすること
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
最後にお伝えしたいのは、「私服の制服化」は単なるライフハックではないということです。
私にとって、同じ服を着ることは「自分の特性を受け入れる」ことでした。
27歳で診断を受けるまで、私は「普通になりたい」ともがき続けていました。おしゃれな人と同じようにたくさんの服を持ち、毎日違うコーディネートを楽しむ。そうすれば「普通」に近づけると思っていました。
でも、それは私には合わなかった。無理をして、疲れて、自己嫌悪に陥るだけでした。
「諦める」ではなく「選ぶ」
「毎日同じ服を着る」と決めた時、最初は「おしゃれを諦めた」ような気持ちもありました。
でも今は違います。








