たかがペットボトル、されどペットボトル

「また開かない……」 指先に残るプラスチックのキャップのギザギザとした痛み。それが、僕の敗北の証でした。

かつての僕は、ペットボトルの蓋を開けるのに毎回5分以上格闘していました。人に頼めばいいと思われるかもしれませんが、20代後半の男が「これ開けてください」と言うのは、想像以上に勇気がいることなのです。

管理人のりゅうぞうです。 私にはASD(自閉スペクトラム症)の特性があり、手先の細かい力加減が極端に苦手です(協調運動障害といいます)。さらにSLD(限局性学習症)もあり、文字を書くのも、計算するのも苦痛です。

普通に開けれるときも多いが、なぜか?開けれない・・。

世の中の「普通」は、僕にとっては「エベレスト」のように高く険しい壁でした。

しかし、ある日気づいたのです。 「エベレストに登るのに、素手で登る人はいない。みんな装備を使っているじゃないか」と。

僕たちにとっての装備、それはスマホであり、AIであり、便利なガジェットたちです。 この記事では、僕がこの身体と脳の特性を持ったまま、どうやって「普通の生活」を手に入れたのか。その秘密兵器たちを紹介します。

障害者の生活を変える!最新の支援トレンドと「AT」の進化

今、世界ではT(Assistive Technology:支援技術)」う分野が急速に進化しています。これは、障害や高齢による「できない」を、技術で「できる」に変えるムーブメントです。

かつては数百万円もする専用機器が必要でしたが、今は皆さんのポケットに入っているスマホが、その役割を果たしてくれます。

【2024年〜の注目トレンド】

  • 生成AIの「秘書化」: ChatGPTやClaudeなどのAIは、単なるチャットボットではありません。SLDを持つ僕らにとって、彼らは「外部委託された脳」です。誤字脱字の修正、失礼のないメール作成、要約など、言語化のコストを劇的に下げてくれます。
  • ウェアラブルデバイスの進化(スマートグラス): 例えば『Ray-Ban Meta』のようなスマートグラス。これを使えば、見たものをAIが解析し、音声で教えてくれます。文字を読むのが辛い時、メガネが代わりに読んでくれる時代が来ています。
  • ニューロダイバーシティ向けアプリ: 『Goblin Tools』のような、ASD/ADHDの特性に特化したアプリが登場しています。「部屋を片付ける」という漠然としたタスクを、「ゴミ袋を持つ」「ペットボトルを拾う」といった実行可能なレベルまでAIが自動で細分化してくれるのです。

27年間の孤独と、診断後の「解放」

少し、僕の過去の話をさせてください。

学生時代、僕は授業中、黒板の文字をノートに写すだけで精一杯でした。先生の話を聞く余裕なんてありません。形を真似て書くことに必死で、内容は頭に入ってこないのです。 社会人になってからは、飲み会の割り勘が恐怖でした。「24,000円を5人で割って」と言われると、頭の中が真っ白になり、冷や汗が止まらなくなります。

「なんでみんなと同じようにできないんだろう」

診断を受けた27歳のあの日、医師の言葉を聞いて涙が出ました。僕が怠けていたわけじゃなかった。脳の配線が、少し人と違っていただけだったのです。

そこで僕は考え方を変えました。 「足が不自由な人が電動車椅子を使うように、情報の処理が苦手な僕は、スマホやAIという『車椅子』に乗ればいいんだ」と。

【実践編】僕を救った「魔法の杖」たちと使い方のコツ

では、具体的に僕が何を使って生活を変えたのか。書くこと、計算、そして日常動作を助ける「三種の神器」を紹介します。

① 【書くのが苦手なあなたへ】音声入力 × 生成AI キーボードを打つのも、ペンを持つのも疲れる僕にとって、音声入力は救世主です。

  • 使い方: スマホに向かって、思いついたことをダラダラと喋ります。「えーっと」とか入っても構いません。
  • 魔法の仕上げ: そのグチャグチャな文章をChatGPTに投げます。「この文章を、ビジネスメールとして整えて」と指示するだけ。数秒で完璧なメールが完成します。
    • コスト: 基本無料(高性能版は約3,000円/月)

② 【計算・読むのが苦手なあなたへ】Googleレンズ / Microsoft Lens レシート計算や、書類の読み取りに使います。

  • 使い方: アプリのカメラを書類やメニューにかざすだけ。
  • 魔法の効果: 「読み上げ」ボタンを押せば、耳で情報を理解できます。割り勘なら「このレシートの合計を5人で割って」とAIに聞けば一発です。数字の羅列を見る苦痛から解放されます。

③ 【不器用なあなたへ】電動オープナー & 便利グッズ 冒頭のペットボトルの話に戻りましょう。僕はもう、自分の手首を痛めつけるのをやめました。

  • おすすめ商品:マーナ (marna) らくらくオープナー
    • 価格:約1,000円前後
    • これは電動ではありませんが、テコの原理を使って、驚くほど軽い力で蓋が開きます。プルタブやパウチ容器にも対応していて、キッチンに一つあるだけで安心感が違います。
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  • さらに進化版:電動ペットボトルオープナー
  • Amazonなどで約2,000円〜3,000円で購入可能。セットするだけで「ウィーン」と自動で開けてくれます。握力が極端に弱い日でも、これさえあれば水分補給が怖くありません。

まとめ:テクノロジーは「ズル」じゃない

以前の僕は、道具に頼ることを「甘え」だと思っていました。自分の力で克服しなければ意味がない、と。

でも、近眼の人がメガネをかけるのを「ズル」と言う人はいませんよね? それと同じです。僕たちにとってのAIやガジェットは、社会参加するための「メガネ」であり、「車椅子」なのです。

もし、今これを読んでいるあなたが、自分の「できない」に苦しんでいるなら。どうか自分を責めないでください。あなたの能力が低いのではなく、適切な「道具」に出会っていないだけかもしれません。

僕はこのブログを通じて、これからも様々な「魔法の杖」を紹介していきます。 テクノロジーという相棒と共に、もっと自由に、もっと楽に生きていきましょう。