計算ドリルを泣きながらさせるより、電卓の使い方と「お金の価値」を教えてほしかった

あなたの「できない」は、本当に致命的ですか?

「7×8は?」

この質問をされると、38歳になった今でも一瞬、心臓がキュッと締まる感覚があります。

はじめまして、りゅうぞうです。ASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持つ、現在3,400万円の資産を運用している個人投資家です。

先に結論を言います。

九九が完璧に言えなくても、暗算ができなくても、お金を増やすことはできます。むしろ、「計算ができない」という自覚があるからこそ、システムに頼り、感情に左右されない投資ができている——そう確信しています。

この記事は、計算が苦手なお子さんを持つ親御さん、そして過去の僕と同じように「数字が苦手」という理由で将来を諦めかけている当事者の方に向けて書きます。

計算ドリルで泣いていた少年が、なぜ資産家になれたのか。その道のりと、教育への提言をお話しさせてください。


計算ドリルの地獄——「できるまでやれ」が奪ったもの

小学生時代の記憶:机の前で流した涙

僕のSLD(限局性学習症)は、特に計算と書字に強く現れます。

小学2年生のとき、九九の暗唱テストがありました。クラスメイトが次々と「にいちがに、ににんがし…」とスラスラ唱える中、僕は7の段で必ずつまずきました。

「7×6は…えっと…」

頭の中が真っ白になる。42なのか、48なのか、全くわからない。

母親は教育熱心な人でした。

毎晩、計算ドリルを100問解くまで寝かせてもらえない日が続きました。間違えると「もう一回」。正解しても「次」。終わる頃には日付が変わっていることもありました。

当時の僕が失ったもの:

  • 自己肯定感(どんなに頑張っても「できない自分」を突きつけられる)
  • 勉強への興味(学ぶこと=苦痛、という刷り込み)
  • 「助けを求める」という選択肢(努力で解決すべき、という思い込み)

今振り返れば、母親も必死だったのだと思います。「普通」になってほしかった。苦労させたくなかった。その愛情は、ちゃんとわかっています。

でも、方法が違ったのです。


SLD(限局性学習症)とは?——初心者向け解説

ここで、専門用語の解説を挟みます。

SLD(Specific Learning Disorder/限局性学習症)とは、全般的な知的能力には問題がないのに、「読む」「書く」「計算する」といった特定の学習領域に著しい困難がある状態を指します。

かつては「学習障害(LD)」と呼ばれていましたが、DSM-5(精神疾患の診断基準)で名称が変わりました。

主な3タイプ:

  • 読字障害(ディスレクシア):文字を読むのが極端に苦手
  • 書字障害(ディスグラフィア):文字を書くのが極端に苦手
  • 算数障害(ディスカルキュリア):計算や数の概念理解が極端に苦手

僕は「書字」と「算数」の両方に困難があります。だから、九九も覚えられなかったし、今でも暗算は壊滅的です。

大事なのは、これが「努力不足」ではないということ。

脳の情報処理の仕方が、多数派と違うだけなのです。


「計算できない」僕が3,400万円を築けた理由

電卓とスマホが、僕の「第二の脳」になった

27歳で診断を受けてから、僕の人生は変わりました。

一番大きかったのは、「できないことを補う道具」を堂々と使えるようになったことです。

僕が日常的に使っているツール:

用途使用ツール補足
計算全般iPhone標準電卓買い物中も常に起動
家計管理マネーフォワードME自動連携で計算不要
投資判断証券会社のアプリ利回り計算も自動
メモ・文章作成音声入力+ChatGPT書字の負担を軽減

特にマネーフォワードMEは、銀行口座やクレジットカード、証券口座を連携させると、自動で収支を計算してくれます。僕は一度も手計算で家計簿をつけたことがありません。

計算ができなくても、計算は「させられる」のです。


投資で成功できた「意外な理由」

ここで、一つの矛盾に気づいた方もいるかもしれません。

「計算が苦手なのに、なぜ株式投資で資産を増やせたのか?」

答えは「計算で勝とうとしなかったから」です。

僕の投資スタイルは極めてシンプル:

  1. 全世界株式インデックスファンドを毎月定額で積み立てる
  2. 相場が下がっても売らない
  3. 15年以上、何もしない

これだけです。

複雑な株価分析や、PER(株価収益率)の計算なんてしません。そもそもできないから。

でも、長期投資において最も大切なのは「計算力」ではなく「忍耐力」と「ルールを守る力」なのです。

むしろ、ASDの特性である「一度決めたルールを変えたがらない」という性質が、投資では武器になりました。

相場が暴落しても、ルールだから売らない。みんなが「今が買い時!」と騒いでも、ルールだから余計に買わない。

「できない」が「できる」に変わった瞬間でした。


なぜインデックス投資は「計算弱者」に向いているのか

ここからは、少し踏み込んだ話をします。

インデックス投資とは、日経平均やS&P500といった株価指数に連動する投資信託を買う方法です。

この投資法が「計算が苦手な人」に向いている理由:

  1. 銘柄選びの計算が不要
    • 個別株投資では、決算書を読んで企業価値を計算する必要がある
    • インデックス投資は「市場全体を買う」ので、その必要がない
  2. ドルコスト平均法との相性が良い
    • 毎月同じ金額を買う=価格が高い時は少なく、安い時は多く買える
    • 複雑な買い時判断(=計算)が不要
  3. 感情の介入余地が少ない
    • 自動積立設定をすれば、人間の判断=ミスが入らない
    • ASDの「ルーティンを好む」特性と相性抜群

世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェットも、一般投資家には「S&P500インデックスファンドを買い続けろ」と推奨しています。

計算の天才でも、シンプルな方法を勧めている。これが、何よりの証拠です。


親御さんへ伝えたいこと——僕が本当に教えてほしかったもの

計算ドリルより、電卓の使い方を

ここからは、障害のある子を持つ親御さん、そして教育に関わる方へのメッセージです。

僕は、計算ドリルを100万回解いても、暗算はできるようになりませんでした。

でも、電卓の使い方を教えてもらえたら、もっと早く楽になれたと思うのです。

親御さんへのお願い:

  • 「できるまでやらせる」より「できる方法を探す」
    • 補助ツールは「ズル」ではなく「眼鏡」と同じ
    • 視力が悪い人に「裸眼で見えるまで訓練しろ」とは言わないはず
  • 「努力の方向」を一緒に考える
    • 苦手を克服する努力と、得意を伸ばす努力がある
    • 限られたエネルギーをどこに使うか、戦略的に
  • 「お金の価値」を教える
    • 計算はできなくても、「1万円で何が買えるか」は理解できる
    • 数字より「概念」を教えることで、お金との健全な関係が築ける

僕が本当に知りたかった「お金の真実」

小学生の頃の僕は、計算ドリルに追われながら、こう思っていました。

「大人になったら、算数ができないと生きていけないんだ」

これは、完全に間違いでした。

社会に出て気づいたこと:

  • 会社では電卓もExcelも使い放題
  • 経理の仕事をしなければ、複雑な計算は不要
  • お金を増やすのに必要なのは「計算力」より「判断力」と「行動力」

九九を完璧に暗唱できる人が、全員お金持ちになるわけではありません。むしろ、お金の「仕組み」を理解している人が、資産を築いているのです。

例えば:

  • 複利の効果(時間がお金を増やす仕組み)
  • インフレのリスク(現金で持っていると価値が下がる)
  • 税金の基礎知識(iDeCoやNISAの活用)

これらは、暗算ができなくても理解できます。むしろ、「計算はツールに任せる」と割り切れるからこそ、本質に集中できるのです。


海外の事例:ディスカルキュリアへの配慮

実は、計算障害(ディスカルキュリア)への教育的配慮は、海外の方が進んでいます。

イギリスの事例:

  • 試験時に電卓の使用が認められる「合理的配慮」制度
  • 計算過程ではなく「概念理解」を評価する試験形式の導入

アメリカの事例:

  • IEP(個別教育計画)で、数学の授業にテクノロジー支援を明記
  • 「計算アプリの使用=ズル」ではなく「公平な土俵」という認識

日本でも、2016年から施行された障害者差別解消法により、学校での合理的配慮は義務化されました。でも、現場レベルでの浸透は、まだまだこれから。

声を上げることが、社会を変える第一歩です。


まとめ:「できない」を認めたら、人生が動き出した

最後に、僕自身の話に戻ります。

27歳で診断を受けるまで、僕は「できない自分」を隠し続けていました。バレないように、必死で。

でも、「できないことはできない」と認めた瞬間、不思議と楽になったのです。

そして気づきました。

僕が本当に苦手なのは「計算」であって、「お金を増やすこと」ではなかった。

今の僕の生活:

  • 計算は100%ツールに任せる
  • 投資はシンプルなルールを愚直に守る
  • 書字は音声入力とAIで補う
  • 苦手なことに使っていたエネルギーを、得意なことに全振り

これで、3,400万円の資産を築き、家族を養い、こうしてブログを書いています。


あなたへのメッセージ

もし今、計算ドリルの前で泣いているお子さんがいたら——

「大丈夫だよ」と伝えてあげてください。

九九が言えなくても、社長にも投資家にもなれる。電卓を使えばいい。アプリに任せればいい。

そして、もし今、過去の僕と同じように「数字が苦手」という理由で将来を諦めかけている方がいたら——

「あなたは一人じゃない」と伝えたいです。

できないことがあるのは、あなたの責任じゃない。脳の仕組みが、ちょっと違うだけ。

大切なのは、できないこと」を嘆くより、「できる方法」を探すことです。