毎日の「何食べよう」に疲れ果てていた頃

「今日のご飯、何にする?」

この一言が、かつての私にとって最大のストレスでした。

ASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持つ私にとって、「食事を決める」という行為は、想像以上にエネルギーを消耗するものだったんです。

メニューを見ても選べない。栄養バランスを考えようとすると頭がパンクする。計量カップの数字を見ただけで料理する気が失せる。

でも今、私は**「固定メニュー」というシステム**を手に入れたことで、食事のストレスから解放されました。

結論から言います。

ASDの「こだわり・同一性保持」という特性は、弱点ではなく最強の武器です。この特性を活かして「決まったメニューをローテーションする」だけで、栄養バランスは取れるし、お金の管理もラクになるし、何より毎日の判断疲れから解放されるのです。

「え、毎日同じもの食べて飽きない?」と思いましたよね。

大丈夫です。この記事を読み終わる頃には、「同じもの食べるって、実は最高じゃない?」と思えるはずです。


1:なぜ「食事」がこんなにも辛かったのか

小見出し:ASDが抱える「選択」という名の地獄

私の場合、ASDの特性として**「決断することへの強い不安」**がありました。

コンビニに入ると、棚に並ぶ何百もの商品が目に飛び込んできます。どれを選べばいいのか。この選択は正しいのか。もっと良いものがあるんじゃないか。

この無限ループ、経験ありませんか?

定型発達(いわゆる「普通」と呼ばれる人たち)の方々は、こうした選択を無意識にサクサクこなせるそうです。正直、羨ましい。

でも私たちにとって、「選ぶ」という行為は**認知的負荷(脳にかかる負担)**がものすごく高いのです。

私が食事で困っていたこと一覧:

  • メニューが多すぎて選べない
  • 「今日は何を食べたい?」と聞かれても答えられない
  • 栄養バランスを考えようとすると混乱する
  • 料理の計量で数字を見ると頭が真っ白になる(SLDの影響)
  • 急な予定変更で食事の予定が崩れるとパニックになる

SLDが追い打ちをかける「計算できない」問題

ここで私のSLD(限局性学習症)が追い打ちをかけてきます。

暗算が、無理なんです。

計量カップに「200ml」と書いてあっても、それが多いのか少ないのかピンとこない。レシピに「大さじ2」と書いてあっても、「大さじ1を2回」という計算すら怪しい。

27歳で診断を受けるまで、私はこれを「努力不足」だと思い込んでいました。

料理本を買っては挫折し、「ちゃんとした食事を作れない自分はダメだ」と自分を責め続ける日々。

でも違ったんです。

脳の特性として、数字の処理が苦手なだけだった。努力の問題じゃなかった。

この事実を知った時、私は泣きました。悔しさと、安堵と、いろんな感情がごちゃ混ぜになって。


2:「固定メニュー化」という革命的発見

ASDの「同一性保持」を逆手に取る

ASDには「同一性保持(サメネス)」という特性があります。

簡単に言うと、「いつも同じであることに安心感を覚える」という傾向です。

これ、世間では「こだわりが強い」「融通が利かない」とネガティブに捉えられがちですよね。

でも、ちょっと待ってください。

この特性、「食事」においては最強の武器になるんです。

私が辿り着いた結論はこうでした。

「毎日何を食べるか悩むから疲れる。なら、最初から決めておけばいい。」

つまり、「固定メニューのローテーション化」です。

「コンビニ固定メニュー」実例公開

実際に私が実践している、セブンイレブンでの固定メニューを公開します。(昔やっていましたが、今は停止中)

【朝食パターン(3種類をローテーション)】

  1. パターンA: たまごサンド+野菜ジュース(約450円)
  2. パターンB: おにぎり2個(鮭・昆布)+味噌汁(約400円)
  3. パターンC: バナナ+ヨーグルト+カフェラテ(約500円)

【昼食パターン(5種類をローテーション)】

  1. 月曜: 幕の内弁当+サラダ(約750円)
  2. 火曜: 冷やし中華(夏)or 味噌ラーメン(冬)+ゆで卵(約600円)
  3. 水曜: サラダチキン+雑穀米おにぎり+野菜スティック(約650円)
  4. 木曜: カレー+サラダ(約700円)
  5. 金曜: 好きなもの自由枠(週に1回だけ「選ぶ」を許可)

【夕食パターン(外食チェーン4店舗をローテーション)】

  1. 吉野家: 牛丼並+サラダセット(約650円)
  2. 松屋: 定食(焼肉定食が多い)(約800円)
  3. サイゼリヤ: ミラノ風ドリア+小エビのサラダ(約800円)
  4. すき家: 牛丼ライト(ご飯の代わりに豆腐)(約500円)

ポイントは、「選ばない」ということです。

曜日とパターンを紐づけておけば、お店に入った瞬間に注文が決まっています。メニューを見る必要すらない。

これだけで、どれだけ脳のエネルギーが節約できるか。


栄養バランスは「ざっくり」でOK

「でも栄養バランスは大丈夫?」という声が聞こえてきそうです。

正直に言います。完璧は目指していません。

私が意識しているのは、たった3つだけ。

【りゅうぞう式・ざっくり栄養ルール】

  1. タンパク質(肉・魚・卵・大豆)を毎食1品は入れる
  2. 野菜は「色がついているもの」を1日1回は食べる
  3. 炭水化物は「白より茶色」を意識する(雑穀米、全粒粉パンなど)

これだけです。

カロリー計算?しません。できません。

でも、この3つを守るだけで、健康診断の数値は全て正常範囲内です。

完璧を目指すから続かない。

「60点でいいや」と思えた時、食事は一気にラクになりました。


支援職の方へ:ASD当事者が本当に求めている支援とは

ここで少しだけ、専門家の方に向けたお話をさせてください。

私は過去に、栄養指導を受けたことがあります。

管理栄養士の方が丁寧に「1日に必要なカロリーは○○kcalで、タンパク質は体重×1gが目安で…」と説明してくださいました。

正直、全く頭に入りませんでした。

数字が出てくると、私の脳は自動的にシャットダウンするんです。これはSLDの特性で、本人の努力ではどうにもならない部分です。

ASD×SLDの当事者に栄養指導をする際のポイント:

  • 数字を極力使わない(「手のひらサイズのタンパク質」など視覚的表現を使う)
  • 選択肢は3つ以下に絞る(多すぎると選べない)
  • 「完璧」ではなく「60点」を目標に設定する
  • 本人の「こだわり」を否定せず、活かす方向でプランを立てる
  • 変化は小さく、ゆっくりと(急な変更はパニックの元)

私たちは「できない」のではなく、「やり方が合っていなかった」だけというケースが多いです。

固定メニュー化の「デメリット」と対処法

正直に言います。困ることもある

ここまで「固定メニュー最高!」と語ってきましたが、正直にデメリットもお伝えします。

実際に困った場面を包み隠さずリストアップ:

  • 人との食事で困る: 「何食べたい?」と聞かれても答えられない
  • いつもの店が休みだとパニック: 予定が崩れると頭が真っ白になる
  • 季節メニューの終了が辛い: 気に入っていた商品が突然消える絶望
  • 「飽きないの?」と心配される: 周囲からの善意の指摘がストレスに
  • 旅行先で食事が苦痛: 知らない店、知らないメニューの連続

私なりの対処法

これらの困りごとに対して、私が編み出した対処法を共有します。

【人との食事対策】

「何でもいい」ではなく、「AかBならどっちがいい?」と選択肢を絞ってもらうようにお願いしています。

最近は妻に「今日は中華と和食、どっちの気分?」と聞いてもらうようにしました。二択なら選べる。

【いつもの店が休み対策】

バックアップ店舗を決めておくことで解決しました。

例えば、吉野家が休みなら松屋。松屋も休みならすき家。この「第2候補・第3候補」を事前に決めておくだけで、パニックが激減します。

【季節メニュー終了対策】

これは正直、今でも辛いです。

対処法としては、「定番メニューだけで固定ルーティンを組む」ようにしています。期間限定商品には手を出さない。これが一番安全。

【「飽きないの?」への対応】

「ASDの特性で、同じものを食べる方が安心するんです」と正直に伝えるようにしました。

最初は恥ずかしかったけど、説明すると意外と理解してもらえることがわかりました。

【旅行先対策】

旅行は今でも苦手です。でも、「チェーン店を探す」という方法で乗り切っています。

知らない土地でも、見慣れた看板があるだけで安心感が違う。「せっかくの旅行なのにチェーン店?」と思われるかもしれませんが、私にとっては「食事でエネルギーを消耗しない」ことが旅行を楽しむコツなのです。


お金の管理も「固定化」でラクになった

食費が「予測可能」になる安心感

固定メニュー化の思わぬ副産物がありました。

食費の管理が劇的にラクになったのです。

私の月の食費はこんな感じです。

【りゅうぞうの月間食費(一人分・概算)】

  • 朝食(コンビニ):約450円 × 30日 = 約13,500円
  • 昼食(コンビニ):約650円 × 22日(平日)= 約14,300円
  • 夕食(外食):約700円 × 30日 = 約21,000円
  • 合計:約48,800円/月

これ、計算が苦手な私でも把握できています。

なぜなら、毎月ほぼ同じ金額だからです。

変動がないから、「今月使いすぎたかな」という不安がない。通帳を見て「あれ、お金が減ってる…なんで?」というパニックがなくなりました。

3,400万円を築けた理由の一つ

ここで少しだけ、資産形成の話をさせてください。

私は現在、約3,400万円の資産があり、その90%が株式です。

「え、計算できないのに投資?」と思いますよね。

できます。というより、計算しなくていい投資方法を選んでいるだけです。

インデックス投資の積立設定をして、あとは放置。毎月同じ金額が自動で引き落とされるだけ。

食費が固定化されているから、「毎月いくら投資に回せるか」が明確にわかる。

変動費を減らし、固定費化することで、お金の流れが「予測可能」になる。これがSLD持ちの私にとって、資産形成の第一歩でした。


【海外事例コラム】アメリカの自閉症コミュニティで広がる「セーフフード」という概念

ここで、海外の事例を一つ紹介します。

アメリカの自閉症コミュニティでは、「セーフフード(Safe Food)」という概念が広く認知されています。

セーフフードとは、「感覚過敏やこだわりがあっても安心して食べられる食品」のこと。

texture(食感)、temperature(温度)、color(色)、smell(匂い)など、様々な要素が「安全」と感じられる食べ物を指します。

日本では「偏食」とネガティブに捉えられがちですが、アメリカでは「それはあなたの脳が安全だと判断している食べ物」という肯定的な見方が広がっています。

私の「固定メニュー」も、言い換えれば「私にとってのセーフフード」なのかもしれません。

無理に食の幅を広げる必要はない。まずは「安心して食べられるもの」を確保することが大事。

この考え方を知った時、私は少し救われた気持ちになりました。


まとめ:「同じでいい」という許可を、自分に出してあげて

長い記事を読んでくださり、ありがとうございます。

最後に、この記事で伝えたかったことをまとめます。

【この記事のポイント】

  • ASDの「同一性保持」は、食事管理において最強の武器になる
  • 固定メニューのローテーションで、判断疲れから解放される
  • 栄養バランスは「60点」で十分。完璧を目指さない
  • 計量が苦手なSLDでも、「感覚調理」や「キット活用」で自炊は可能
  • 食費が固定化されると、お金の管理もラクになる

かつての私は、「毎日同じものを食べる自分」を恥ずかしいと思っていました。

「大人なんだから、いろんなものを食べなきゃ」

「食にこだわりがないのは人生損してる」

そんな世間の声に、ずっと苦しめられてきました。

でも、もういいんです。

同じものを食べて、安心するなら、それでいい。

選べなくて困るなら、最初から決めておけばいい。

「変わらないこと」は、弱さじゃない。

私たちにとっては、「変わらないこと」こそが、生き延びるための知恵なのです。

もし今、食事のことで悩んでいるあなたがいたら、伝えたい。

「同じでいい」という許可を、自分に出してあげてください。

あなたは、あなたのままで大丈夫です。