計算が苦手でも3400万円を築けた理由──ASD・SLD当事者が語る、テクノロジー投資という生存戦略

「計算ができない投資家」という矛盾を抱えて
「投資をするなら、まず財務諸表が読めないと」 「PERやPBRの計算は基本中の基本」 「エクセルで複雑なポートフォリオ管理ができないと話にならない」
投資の世界では、こんな「常識」が当たり前のように語られます。でも、私はそのどれもできません。
ASD(自閉スペクトラム症)とSLD(限局性学習症)を持つ私にとって、計算は永遠の苦手分野です。暗算はほぼ不可能。筆算も何度も間違える。電卓を使っても、入力ミスで数字が合わない。手書きのメモは後で読めないし、エクセルの数式は呪文にしか見えません。
それでも今、私は3400万円の資産を築いています。その90%が株式です。
矛盾していますか?いいえ、これは矛盾ではありません。むしろ、「計算が苦手だからこそ」辿り着いた投資スタイルなのです。
この記事では、私がどうやって「数字の壁」を乗り越え、テクノロジーという武器を手に資産を築いてきたのか、その全てをお話しします。発達障がいを持つ方、数字が苦手な方、そして「自分には投資なんて無理」と諦めかけている全ての方へ──あなたの「苦手」は、独自の強みに変えられます。
失敗だらけの投資デビュー──「普通のやり方」が通用しなかった日々
最初の挫折:財務諸表が読めない
投資を始めようと決意したとき、まず手に取ったのは「株式投資の教科書」でした。そこには「まず企業の財務諸表を読み解こう」と書いてありました。
損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書。開いた瞬間、数字の洪水に飲み込まれました。売上高、営業利益、自己資本比率…どこをどう見ればいいのか、何が良くて何が悪いのか、全く理解できませんでした。
SLDの特性上、数字を「並べて比較する」作業が極端に苦手なのです。今年と去年の売上を比較しようとしても、数字が頭の中で踊り出して、どちらが大きいのか判断できなくなります。
証券口座を開設し、いざ銘柄を選ぼうとしたときも同じでした。スクリーニング機能で「PER15倍以下」「ROE10%以上」といった条件を設定することはできても、その結果出てきた数百社のリストを見比べる作業で、完全にフリーズしました。
紙とペンの地獄──ポートフォリオ管理の悪夢
さらに追い打ちをかけたのが、ポートフォリオ管理でした。
当時、投資ブロガーたちの多くは「エクセルでポートフォリオを管理しよう」と推奨していました。保有銘柄、株数、平均取得単価、現在価格、損益率…これらを表にまとめ、定期的に更新する。
私もやってみました。でも、書字障がいがある私にとって、手書きのメモは判読不能になり、エクセルの数式は何度入力してもエラーが出ました。=SUM()すら正確に入力できない自分に、何度も絶望しました。
「やっぱり、計算ができない人間に投資は無理なんだ」
そう思いかけたとき、私は一つの気づきを得ました。
転機:テクノロジーが私の「計算機」になった
音声アシスタントとの出会い
転機は、スマートスピーカーを導入したことでした。最初は「音楽を聴くため」程度の気持ちでしたが、これが私の投資スタイルを一変させました。
「OK Google、Appleの株価は?」 「Hey Siri、NVIDIAの時価総額は?」
音声で質問すれば、計算も入力も不要で、情報が手に入る。これは革命でした。
財務諸表を読めない代わりに、音声で企業情報を収集し始めました。ニュース記事の読み上げ機能を使い、決算短信の要点をAIに要約させました。数字を「見る」のではなく、「聞く」ことで、情報が頭に入るようになったのです。
自動化ツールの発見──計算から解放された瞬間
次に出会ったのが、投資管理アプリでした。具体的には以下のようなツールです。
- 自動ポートフォリオ管理アプリ:証券口座と連携し、リアルタイムで資産状況を可視化
- AI投資分析ツール:企業の財務情報を自動でグラフ化・要約
- 音声読み上げブラウザ拡張機能:長文レポートを音声で聴く
- スマートフォンの音声入力:取引メモを声で記録
これらを組み合わせることで、私は「計算しない投資家」になることができました。
重要なのは「何を計算するか」ではなく、「何に投資するか」です。計算はテクノロジーに任せ、私は「未来を考えること」に集中する。これが私の投資哲学になりました。
私のポートフォリオ戦略──「コアとサテライト」で守りと攻めを両立
投資信託で土台を固める(守りのコア)
資産の大部分は、投資信託で構成しています。
- 全世界株式インデックス:市場全体に分散投資
- 高配当株ファンド:財務優良企業で安定収益
- 債券ファンド:リスク分散
- REIT:不動産への間接投資
これらは「計算不要」で運用できます。毎月定額を自動積立し、リバランスもファンドマネージャーに任せる。財務諸表を読む必要もなければ、個別企業を分析する必要もありません。
これが私の「守り」です。ASDの特性上、ルーティン化された行動は得意なので、「毎月15日に自動積立」というシンプルなルールを作りました。
個別株で「信じるテーマ」に集中投資(攻めのサテライト)
一方、個別株のポートフォリオは完全に「攻め」です。私が保有する銘柄は、ほぼすべてテクノロジー関連企業です。
- NVIDIA:AI半導体のリーダー
- Astera Labs:データセンター接続技術
- Rubrik:クラウドデータ管理
- Reddit:ソーシャルプラットフォーム
- Applovin:モバイル広告技術
- On Holding:高機能スニーカー(非テック)
- Tempus AI:AIヘルスケア
- Lyft:ライドシェアプラットフォーム(非テック)
- UiPath:RPAソフトウェア
「ハイテク偏重だ」と指摘されることもあります。その通りです。でも、これは意図的な選択なのです。
なぜテクノロジー企業なのか──「体験」が最強の分析ツール
財務諸表が読めなくても、未来は見える
私が投資判断で重視しているのは、「この技術が5年後、10年後の世界をどう変えるか」です。
計算ができない私が投資できているのは、まさにテクノロジーのおかげです。
- 自動計算がなければ、損益計算すらできませんでした
- 音声読み上げがなければ、決算資料を読めませんでした
- AI要約がなければ、長文レポートを理解できませんでした
- スマートフォンがなければ、取引すらできませんでした
私自身が、テクノロジーによって「できないこと」を克服してきた当事者です。だから、「計算機(コンピューター)が人間の知的作業を代替・拡張していく未来」を、誰よりも深く信じています。
具体的な投資判断の例:なぜNVIDIAなのか
例えば、NVIDIAへの投資。財務諸表は読めませんが、以下のような「体験ベースの分析」をしています。
観察したこと:
- ChatGPTなどのAIサービスが爆発的に普及
- 画像生成AI、動画生成AIが次々と登場
- これらすべてが「GPU」という計算資源を大量に消費している
結論:
- AIが普及すればするほど、GPUの需要は増える
- NVIDIAはGPU市場で圧倒的シェアを持つ
- つまり、AI時代の「石油」を握っている企業だ
財務指標ではなく、技術トレンド」と「社会の変化」から投資判断をしています。これは計算が苦手な人間だからこそできる、独自の視点です。
中級者向けコラム:ASD特性を活かした「パターン認識投資」
ここからは、少しマニアックな話をします。
ASDの特性の一つに、「パターン認識能力の高さ」があります。私はこれを投資に活かしています。
市場のパターンを「体感」で捉える
数字は読めなくても、チャートの「形」は読めます。いや、読めるというより、「感じる」に近いかもしれません。
- ある銘柄の株価チャートを毎日見ていると、そのリズムが体に染み込んできます
- 「この形になったら、次はこう動く」という感覚が、理屈抜きで分かるようになります
- これは計算ではなく、パターンマッチングです
もちろん、これだけで投資判断するのは危険です。でも、テクニカル分析の教科書に書いてある「ヘッドアンドショルダー」「ダブルボトム」といった形を、私は数字ではなく「視覚パターン」として認識しています。
情報収集のルーティン化
ASDの特性上、ルーティン化された行動は得意です。私は以下のような情報収集ルーティンを確立しています。
毎朝のルーティン:
- 4:00 – 音声ニュースで市場概況を聞く
- 4:30 – 保有銘柄の価格をアプリで確認(音声読み上げ)
- 5:00 – AIツールで前日の決算サマリーをチェック
週末のルーティン:
- 土曜午前 – 1週間の値動きをチャートで視覚的に確認
- 土曜午後 – テクノロジーニュースのポッドキャストを聞く
- 日曜 – 気になった企業について音声で深掘り調査
計算は苦手でも、「毎日同じ時間に同じことをする」のは得意です。この強みを活かしています。
投資を支えるテクノロジーツール完全ガイド
ここからは、私が実際に使っているツールを具体的に紹介します。
1. ポートフォリオ管理アプリ
おすすめツール:
- マネーフォワードME(国内証券対応)
- Personal Capital(米国株対応、英語)
使い方のコツ:
- 証券口座と自動連携させ、手入力を完全にゼロにする
- 音声読み上げ機能をオンにし、資産状況を「聞く」
- 毎日同じ時間にアプリを開くことをルーティン化
デメリット:
- 連携エラーが時々発生する(再ログインが必要)
- リアルタイム反映ではないため、数時間のタイムラグがある
2. AI投資分析ツール
おすすめツール:
- ChatGPT(決算資料の要約)
- Claude(長文レポートの分析)
- Perplexity(最新ニュースの検索と要約)
使い方のコツ:
- 「この決算資料を中学生でも分かるように要約して」とプロンプトを工夫
- 財務数字は表形式ではなく、文章で説明してもらう
- 複数のAIに同じ質問をして、回答を比較する
デメリット:
- AIの回答が必ずしも正確ではない(ファクトチェック必須)
- 最新情報に対応していない場合がある
3. 音声読み上げツール
おすすめツール:
- iPhoneの「読み上げコンテンツ」機能
- Chrome拡張機能「Read Aloud」
- Speechify(有料だが高品質)
使い方のコツ:
- 読み上げ速度を1.5倍〜2倍に設定(慣れると時短になる)
- 重要な部分は録音して、後で繰り返し聞く
- 散歩やジムで聞きながら情報収集
デメリット:
- 数字の読み上げが不自然な場合がある
- グラフや表は音声化できない
4. 音声入力ツール
おすすめツール:
- Googleドキュメントの音声入力
- Otter.ai(会議の文字起こしにも使える)
- iPhoneの音声メモ
使い方のコツ:
- 投資アイデアを思いついたら即座に音声メモ
- 後でAIに文章化してもらう
- 感情的な判断をした時の記録として振り返り用
デメリット:
- 周囲の雑音があると認識精度が落ちる
- 専門用語が正確に認識されないことがある
失敗談:テクノロジーに頼りすぎた代償
ここまで成功例を語ってきましたが、失敗もたくさんあります。
自動売買ツールの罠
ある時期、「計算が苦手なら、売買も自動化すればいい」と考え、自動売買ツールを試しました。
結果:大失敗。
テクニカル指標に基づく自動売買は、短期的な値動きに振り回され、手数料ばかりがかさみました。そして何より、「なぜこの銘柄を買ったのか」という理由が見えなくなりました。
投資は「未来を信じる行為」です。自動化できるのは「計算」や「記録」であって、「判断」ではありません。この失敗から、私は「テクノロジーは道具であって、思考の代替ではない」ことを学びました。
AI分析の盲信
AIに決算資料を分析してもらうのは便利ですが、AIが間違った情報を「自信満々」に答えることもあります。
ある企業の売上成長率について、ChatGPTに質問したところ、実際とは全く異なる数字を回答されたことがありました。それを鵜呑みにして投資判断していたら、大きな損失を出していたでしょう。
教訓:AIの回答は必ず、公式サイトや信頼できるニュースソースで確認する。
まとめ:「苦手」は「独自の強み」に変えられる
計算ができなくても、投資家になれる
この記事で伝えたかったのは、「計算ができないから投資を諦める必要はない」ということです。
むしろ、計算が苦手だからこそ、私は以下のような独自のスタイルを確立できました。
- テクノロジーを徹底活用する投資スタイル
- 体験ベースの未来予測という分析手法
- パターン認識を活かしたチャート読解
- ルーティン化による継続的な情報収集
これらは、「普通の投資家」にはない、私だけの武器です。
あなたの「苦手」も、武器になる
発達障がいを持つ方、数字が苦手な方、そして「自分には無理」と思っている方へ。
あなたの「苦手」は、独自の視点を生み出します。人と違う困難を抱えているからこそ、人と違う解決策を見つけられます。
私にとって、テクノロジー投資は「投資先」であると同時に、「人生を変えてくれた恩人」です。だから私は、この分野に投資し続けます。
あなたにとっての「恩人」は何ですか?それが見つかったとき、それがあなたの投資テーマになるかもしれません。







